第41話 オープンしました その2
12時が近くなるにつれて、店前の通りも賑わってきた。
新しい店に興味を持ってくれた人が入って来てくれる。
そしてハンバーガーや牛バーガーを頼み始める人もそれに伴って増え始めた。
こうなると注文と受け渡しが大変になるぞ。
「ハンバーガーおひとつですね」
「牛バーガーと牛乳ですね」
「や、野菜バーガーセットでよろしいでしょうか」
今はサラとエマとショーンの3人が注文を受けている。
それを俺とハンナで商品を収納魔法から取り出して受け渡しをしていく。
アレンは店の中を巡回してもらって、簡単な掃除や、席に置きっぱなしになってしまっているトレーを回収したりしている。
まだ初日ということもあって忘れていってしまう人とか、先に席に座ってしまう人とかもいるからね。
声かけが大事だ。
「会長、次はハンバーガーじゃなくて牛バーガーのセットです」
ハンナがミスを指摘してくれた。
「ごめん順番間違えた」
混んでくるとたまにミスしてしまう。気を付けないと。
「それにしても良く気づいたね」
「スキルのおかげですよ」
3人が受けた注文を頭の中で瞬時に処理しているみたいだ。
「あなた!牛バーガー予想よりも売れ行きがいいから、作る割合2割増やしてちょうだい!」
「了解!」
厨房で作っているカインにも指示を出す。そっちまで把握してるのか。
「ありがとう、助かるよ」
これなら混んでいる時間帯もうまく乗り切れそうだ。
こうして怒涛の昼は過ぎていった。
ーーーーー
夕方になってくると客足も穏やかになってくる。
この時間帯になってくると、フライドポテトがよく売れるようになってきた。
おやつとして買う人が多いんだろうな。
この時間帯にはみんな順番に長めの休憩をとることした。
今は俺とサラの番だ。今日は牛バーガーセットが賄いだ。
「今のところ順調だな」
「はい、どの商品も買ってもらえてます。屋台の時とは桁違いですね」
体感3~4倍は売れてるんじゃないかな?
「しっかり休憩をとっておこう」
屋台の時は7時前ぐらいで閉店してたけど、今日からは10時まで営業する予定だ。
「はい、しばらくは忙しい日が続きますからね」
今日はオープン日だから無理だけど、少ししたらシフトを組んでまわしていくことにする。じゃないと働きすぎになるからね。
あと水曜日は定休日にする予定だ。そう考えると24時間365日営業って大変なんだな。
コンビニとか何気なく使ってたけどそのありがたみが分かる気がする。
まあ、もう行く機会はないんだけどね。
「ところでそれ、何個目?」
牛バーガーにかぶりついているサラに質問する。
「……秘密です」
そういいながらサラは食べ続けた。
ーーーーー
噴水広場に出していたころに比べて、夜になっても多くの人が来てくれた。
ただ、店内で食べる人よりは持ち帰りの人の方が多いように感じる。
おそらく店で食べたいという人以外は居酒屋とかに行っているのだろう。
うちの店ではお酒は出してないしね。
おかげで8時を過ぎたあたりから2階のフロアは閉めることにした。今後もこれは続いていきそうだ。
閉店30分前からは店の片付けも開始し始める。
サラとハンナは今日の会計をまとめていて、調理組は明日のための準備。
残った人たちで店内の掃除をする。
今日の俺の担当は入り口周りの掃除だ。
道行く人を眺めながらのんびりとモップ掛けをしていると、街の中心の方から白い馬車がやってきた。
あれはフストリア家の馬車だな。乗ったことがあるからすぐわかる。
もうそろそろ10時になるのにどこか出かけるのかな。
そんなことを考えながら場所を眺めていると、なぜか馬車が近づくにつれて速度を落とし始める。
そして俺の店の前で止まった。
え、うちに用事があるの?
モップも持ったまま固まる俺の前で、馬車の扉が勢いよく開いた。
「やあ、リュウ!開店おめでとう!」
中からセレド様が現れた。
「せ、セレド様!?」
あまりの出来事に俺は大声を出してしまった。
「静かに!これでもお忍びだからね、あまり大声は出さないように」
セレド様が口に指をあてながらそういう。
いや、セレド様登場する時結構大声で言ってたけどな。それはいいのかな?
思ったけど口には言わないことにする。
「まさか来てくださるとは」
セレド様からもらった印章のおかげでこの店を立てることが出来たし、店が落ち着いたらお礼に行きたいってことは買いに来るモードンさんに言ってはいたんだけど、まさかセレド様のほうから来るとは思わなかった。
「どうだい?びっくりしただろう?」
モードンさんからその話を聞いて、今日来ることを思いついたらしい。
「はい、とてもびっくりしました」
まさかこの町で一番偉い人がやってくるとは思わなかったからね。
「それなら来たかいがあるよ」
セレド様がいたずらっ子みたいに笑う。
「さすがに昼間の混んでる時間に来たら迷惑をかけると思ったからね。夜遅くに来させてもらったよ」
そこはちゃんと考えてたらしい。
「ありがとうございます。中を案内させてもらってもよろしいですか?」
「うん、楽しみだ」
俺はワクワクしているセレド様を連れて店の中に戻った。




