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第34話 メンバー集め その2

「失礼します」


 サラと一緒に1人の女の人が入ってきた。


 身長はサラと同じで150センチぐらい。年齢は俺より年上だな。30代後半と言ったところだろうか。


 あと、こんな言い方が正しいのかはわからないが、ママ感がすごい。


 あふれ出る母性が初対面の人にまで伝わってくるって相当すごいと思う。


「それではこれから面接を始めたいと思います。よろしくお願いします」


 サラが席に戻ると、そう宣言した。サラにメインで質問をしてもらうつもりだ。


 俺とカインは聞きながら判断する感じ。


「よろしくお願いします」


 女の人が丁寧にお辞儀する。


「まずはお名前をお聞きしてもいいですか?」


「マリーです」


「今日は料理人の方の応募ということでよろしいですか?」


「はい。あ、そうだ!今日家でクッキーを作ってきたんですけどもし良かったらお食べにならない?たくさん作りすぎちゃって」


 そう言ってもってた鞄からクッキーを取り出した。


 そして俺たち3人に配る。


「折角ですし、いただきます」


 一口食べてみると、美味いな。優しい甘さがする。


 あれだ、小学校の頃友達の家に遊びに行ったとき、友達のお母さんが出してくれる手作りクッキーの味だ。


 牛乳につけて食べると美味しいやつ。


 うん、やっぱりママ感がすごい。


「ありがとうございます。クッキー美味しいです。このまま質問を続けさせてもらいますが大丈夫ですか?」


「はい、食べながらで大丈夫ですよ」


 そのまま質問が続いていく。


 マリーさんは思った通り、元々主婦をやっていたそうだ。で、子供がもう自立して時間が出来たから新しく働き直したいのだそうだ。


「私、スキル『主婦』というものをもっているの」


 マリーさんが言うには、スキル「主婦」は料理はもちろん、掃除や洗濯が早くなるというスキルらしい。


 この人ならカインと一緒に調理場を任せられそうだな。


 話している感じ良い人そうだし、クッキー持ってきてくれたりとかいろいろ周りのサポートをしてくれそうだ。


「分かりました。今日の面接はこれで終わりにさせてもらいます。結果はまた後日お知らせしますのでよろしくお願いします」


「分かりました。よろしくお願いします」


 マリーさんは丁寧にお辞儀をした後部屋を出ていった。


「マリーさんいい人っすね。あの人となら料理もうまく出来そうっす」


 カインもマリーさんを気に入ったみたいだ。


「私もいいと思います。今は細かい話は後にしてどんどん面接を続けていきましょう」



 ーーーーー



 こうして何人か面接をした後、次の人が入ってきた。


「次の人どうぞ」


 合図を送ると女の子が1人入ってきた。黒っぽい服装で左目には眼帯がしてある。


 高校生ぐらいかな。


 そして丁寧にお辞儀をすると椅子に座った。


「お名前をお願いします」


 サラが面接を始める。


「我が名はクトル……闇よりこの現世へ這い出てきた悪魔である。フハハハハ!!!」


「「「……」」」


 空気ってこんなに静まり返ることあるんだな。椅子の僅かな軋みまで聞こえるなんてそうそうないぞ。


「……あ、クトルと言います。人間です。よろしくお願いします」


 察したのか普通に挨拶してきた。


「えーっと……今日は料理人の応募ということでよろしいですか」


 サラが絶妙なスルースキルを発揮する。


「左様、我の魂を注ぎ込んだ究極で完全なる創造物を人々に分け与えるためにやってきた!!……はい、料理を作りたくて応募しました」


 今度は静まり返る前にちゃんとした返事を返してきた。


 これは……世にいう中二病というやつなのだろうか。


 発言が何とも痛々しい。というか聞いてるこっちが笑いを堪えられなくなりそうだ。


 その眼帯も絶対そっち系統なんだろうな。


「っふ……こ、今回はどうして応募しようと……お、思ったんですか?……アハハ!」


 サラも笑いを堪えるのが限界だったみたいだ。前半は我慢してたけど後半声出して笑っちゃってるし。


「それには闇の住人の掟で話してはならぬのだが」


「あ、話せないならいいですよ」


「いえ、しゃべります!しゃべります!!小さいころから母親の料理の手伝いとかしてて、そこから料理を独学で勉強するようになったんです!」


 速攻で喋ったな、闇の住人の掟。


「も、もう限界っす」


 カインが腹を抱えて机に突っ伏す。


 やめろ、全力で笑っているところ見たらこっちに移るだろ!


「ちなみにスキルについて教えてもらうことは出来ますか?」


「よかろう、わが左目には古の魔物より授けられた『絶対温感』なるスキルが宿っているのだ!あ、解説をしますと左目で見るとその対象の温度が分かるんですね。だから料理とかする時便利なんですよ」


 中二語から流れるように普通の言葉で解説する。


 要はサーモグラフィーみたいなスキルで、通常の目との切り替えは可能だそうだ。


 だとしたらやっぱり眼帯は飾りだな。


 その後も質問を続けていく。


 最後には


「この現世にて出会えた同志と共に働ける日を心待ちにしている!一生懸命頑張りますのでよろしくお願いします」


 と言い残して面接室を去っていった。


 こいつめちゃくちゃ面白いな。おそらく自分が中二病であることを最近自覚し始めたんだろうな。


 だから発言がブレブレなんだと思う。それが一周回ってかわいく思えるな。


 まあ、働いているうちに治るだろうし、性格は真面目そうだから問題ないと思う。


「俺、あいつと一緒に働いてみたいっす」


 カインも俺とおんなじこと考えているんだろうな。



 よし、次の人を見ていこう。

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