第2話 町へ行こう
おはようございます!
今日もありがとうございます!
「良かった町があった!!!」
歩き始めて半日、目の前に城壁らしきものが見えてきた。何日も野宿することを覚悟していたから助かったぜ。
さらに進んで行くと壁の前に2列の行列ができていた。街に入るために検査でもしているんだろう。
片方は列の進みが早かったから俺もそっちに並ぶ。
15分後
「次!」
男の大声が聞こえてきた。
俺の番が回ってきたので入り口をくぐると、空港のパスポート検査のような場所だった。
俺は椅子に座っている衛兵の前に行く。
衛兵は鉄でできた鎧を着ていた。体格も俺の一回り大きい。ケンカにでもなったら絶対に勝てないな。
「名前は?」
衛兵は鋭い目つきを向けながら聞いてくる。
聞こえてきた言語は日本語ではなかったが、俺はすぐに理解することが出来た。
「リュウです」
この世界に来て初めての会話だから少し声が震える。口から出た言葉も日本語ではなかったがこれも伝わっていることは直感的に分かった。
「ふん、珍しい名前だな。何か身分を証明できるものは?」
「身分証?」
俺はいつもみたいに財布から運転免許証を取り出して衛兵に手渡した。
すると、衛兵の顔が次第に呆れた顔になっていく。
「お前、これはなんだ?」
「免許証ですけど?」
「あのなぁ、こんな文字も読めない紙切れが証明になるわけないだろ。嘘をつくならもっとましな嘘をつけ」
「あ......」
条件反射で免許証を出しちゃったけど、異世界で免許証が通用するわけないよな。
「すいません、証明できるものは持ってないです」
「そしたらもう一度隣の列に並びなおせ。そっちは身分証を持っていない人の列だ」
「分かりました」
衛兵の指示に従って俺は隣の列に並びなおした。
2時間後
「次!!!」
「やっとか......」
隣の列は進みがめちゃくちゃ遅かった。身分証がない分検査に時間がかかっているんだろうな。
呼ばれて入り口をくぐると、先ほどと同じような部屋があった。ただし今回は机の前に座っている衛兵が一人、その後ろに衛兵が二人いた。厳重だな。
「名前は?」
「リュウです」
衛兵は睨むように聞いてくる。
「どこから来た?」
「だいぶ遠いところです。言ってもご存知ないかと」
嘘は言っていない。
「そこにあるものはなんだ?」
「これですか?これは屋台と言って台車を改造したようなものです」
こんな感じでいろいろな質問をされる。それに対して俺も淡々と答えていた。就職面接を思い出すな。
まあその時の面接官より目の前の剣持ってる男の人の方がよっぽど怖いけどな。
10分後
「よし、手配書にもお前のような顔はないし、特に問題はなさそうだ。それじゃあ通行料4000クローネをもらおうか」
そう言って衛兵は手を出してくる。
「クローネ?」
「おまえ知らないのか?」
衛兵は呆れつつも説明をしてくれた。
説明によると、
ここ周辺の国々で使われている通貨単位はクローネと呼ばれていて、お金は硬貨のみ。
硬貨の種類は、
石貨1枚 1クローネ
鉄貨1枚 10クローネ
銅貨1枚 100クローネ
銀貨1枚 1000クローネ
金貨1枚 10000クローネ
白金貨1枚 100000クローネ
ミスリル硬貨 1000000クローネ
となっている。基本的に出回る通貨は金貨まで、それより上は商人同士の取引で使われるそうだ。
一般農家だと4人家族で月10万クローネ、街に住んでいる4人家族だと月20万クローネあれば普通に生活できるらしい。
「金を持っていないなら、持っているもので4000クローネの価値があるものを回収させてもらうぞ。多少割高になると思うが我慢しろよ」
「分かりました」
入れないよりはマシだな。
「そうだなぁ、お前の来てる上着は生地の質が良さそうだ。それを回収させてもらおう」
そういうと衛兵は俺のスーツを指差してくる。
「これですか?わかりました」
どうせこの格好だと目立つからな。列に並んでいる間もかなりジロジロ見られたし。
売ろうとは思っていたから好都合だ。
俺はスーツの上着を脱いで男に手渡す。
「確かに受け取った。通過を許可する。ようこそエルランド国フストリア領ソルーンへ」
そういうと衛兵は入り口とは反対側にある出口を指差した。
「ありがとうございます」
ふぅ。何とか町に入れたな。
出口を通り、短い廊下を抜けると、目の前には中世ヨーロッパのような町並みが広がっていた。
ーーーーー
街へ入ると早速、俺は近くにあった雑貨屋へ行き、手持ちのものを売り払う。
「まいどーーーー!」
上機嫌に声を出すおばあさんの声を背に店を出る。
財布、服、カバン等、売れそうなものはほとんど売り、手にしたお金でこの世界にあった服を購入した。
麻で出来た単純な作りの服装だ。ちょっとゴワゴワするけど気になるほどじゃないな。
手元に残ったお金は171800クローネ。
日本製の物は異世界人にとってはかなり希少なものだったらしく、そこそこな金額になった。
これを元手に生きていかないとな。
店を出た頃には外も暗くなってきたので宿を探すことにする。
ボロ宿から高級旅館まで様々あったが、その中からレンガ造りの落ち着いた雰囲気のある宿を選んだ。
一泊朝夕食付きで5000クローネ。決して安くはないが手元にそれなりの金はあるので大丈夫だろう。
変に安いところだと安心して寝られないからな。とりあえず3泊お願いすることにした。
屋台は建物の脇に置かせてもらい、俺は部屋へと入る。ベッドと机のあるだけのシンプルな部屋だ。
飛び入りの宿泊だったからご飯は明日の朝からということになった。
しょうがないから俺はベッドに腰掛け、先程焼いた食パンを食べる。
相変わらず旨いのだが、明日には飽きそうだな。何か別の食べ物も食べたい。
「それにしても本当に異世界に来たんだなぁ......」
つい1日前までは東京でデスクワークをしてたのに、今は異世界の街の宿で食パンを食べている。正直理解も追いついていない。
両親や友達に会えないのは寂しい。
今だったらあの嫌いな会社の上司に会うだけでも感動の涙を流せると思う。
......いや、それはないな。
戻ることが出来るのか、そうでないのかも分からないが今はこの世界で生きていくしかないんだろうなぁ。
そんなことを考えながら、俺は疲れもあってかそのまま眠りについてしまった。
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