第26話 場所探し その2
「ありがとうございました。今日見た物件の事を商会のメンバーの方で相談してみます」
今日の下見はこれで終了にした。
自分の目で見ることは出来たし、目標は達成したからな。
「了解しました。そしてお願いなんですが、2週間以内に借りるかどうか判断して下さると助かります」
建物を持ってる人もなるべく空き物件になるのを避けたいからだろう。
「分かりました。また何かあったら来ます」
「はい、失礼します」
ナターシャさんと別れたあと、7時前ぐらいだったので屋台に戻ることにする。
丁度店仕舞いの頃だろうから手伝いに行こう。
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「あれ、リュウさん戻ってきたんですか?」
サラが少し驚いたように言った。
「ああ、ちょうど物件を見終わったところだ。手伝いに来た」
「わざわざありがとうございます」
「そんなお礼言われるようなことじゃないよ」
自分の店だしな。
「物件はどうだったっすか?」
カインが屋台の上の物を片付けながら聞いてきた。
「いい感じのところを見つけたからみんなで相談したいかな」
これ以外で良い物件が見つかるかは分からないし、2つのどちらかでいいように思う。
「了解っす!」
「よし、そしたら今は片づけを頑張ろう」
それから3人で片付けをする。
ちなみに3人になっても7時過ぎまでしか営業していない。
夜の時間は区切りをつけないとダラダラやることになっちゃうし、そもそも噴水広場だから暗くなると人通りが減る。
これは、かれこれ2ヶ月以上ここで屋台をやって分かった経験だ。
ハンバーガーを売り始めたばかりの頃、1回だけサラと調子に乗って11時まで店を開いたけど最後の2時間全然人が来なかったもんなぁ。
今となってはいい思い出だ。
「よし、掃除も終わったし帰ろう」
いつも通り屋台を消すことをイメージして、魔法で屋台を消す。
そしていつものように残りの作業をするために俺の家へと移動した。
ーーーーー
「物件のこといつ相談する?」
サラの会計作業を手伝いながら提案する。夕飯担当はカインが買って出てくれた。
2週間以内って言ってたし、なるべく早いほうがいいだろう。
「3人で慎重に相談したいですね」
サラが帳簿から目を離して言う。
「そしたら3日後に屋台を休んでここで相談しよう」
大事な話だからな、中途半端に営業しながら相談はやめておいたほうがいい。
「賛成っす!」
カインも納得してくれたみたいだ。
「じゃあ決定で」
今日のところはそんなところかな。
「お待たせしたっす。名付けて野菜たっぷりペペロンチーノうどんっす!」
作業も片付いた後、カインが料理を出してくれた。
「おおーー!美味しそうだ!!」
出てきたものを見て俺は興奮する。
「あの、これなんですか?」
サラは怪訝な顔をしてのぞき込んだ。
「これはうどんっていって小麦を使った俺の故郷の麺料理だ」
「小麦を使ってるんですか!?パスタとは全然違いますね」
俺も小さいころどっちも小麦と知った時には驚いた記憶がある。
そもそも色が違うからな。
うどんは小麦粉と塩をこねて作るのに対して、パスタは小麦粉に卵と塩、オリーブオイルを使って作る。
文化の違いってやつだな。
「うどんが気になったから使ってみたっす。今回はパスタと同じ要領で作ってみたっす!」
レベルアップのおかげで創造魔法にオリーブオイルが増えていたのも決め手だったようだ。
そういえば最近ステータスを詳しく見てないな。今度またチェックしておこう。
「それじゃあ作ってくれたカインに感謝して、いただきます」
「「いただきます!!」」
俺は箸、2人はフォークを使って食べる。
「うん!うまい!!」
うどんのもちもち感が生かされているし、オリーブオイルをうどんが吸っていて味に一体感があるな。
あと、鷹の爪の代わりに入っている胡椒もピリッとしていてアクセントになっている。
一緒に入ってたキャベツ、玉ねぎのシャキシャキ感もばっちりだ。
「師匠にそういってもらって嬉しいっす!」
カインが嬉しそうに言う。
「うどんってもの初めて食べましたけど美味しいですね!この食感がたまりません!カイン君の調理がいいのかも!」
「先輩にも喜んでもらえてよかったっす!」
「やっぱりカインに一通り材料を渡しておいて正解だったな」
今まで使ったことのない食べ物をこれだけ美味しくできるんだから流石料理人だな。
「そういえばハンバーグづくりの方はどう?」
「一応先輩の方から聞いた情報をもとに試作品を作ってみたっす」
まだ2週間も経ってないのにすごいな。
「そしたら今度の話し合いの時にみんなで試食してみよう」
「分かったっす。それまでにもっと改良しておくっす!」
やる気のある返事が返ってきた。頼もしいな。
「あの、話の途中で悪いんですけど……」
サラが申し訳なさそうに俺とカインを見る。
「どうしたっすか?」
「おかわりってありますかね?」
「は!?!?!」
慌ててサラの皿を見てみるともう皿の上にうどんがなかった。
まだ食べ始めたばかりだぞ。
「いくら何でも早すぎるだろ!?」
もう少し味わって食べないと。
「ご、ごめんなさい」
「まあまあ、そんな師匠も怒らなくて大丈夫っす。おかわりあるっすから!」
「本当!?ありがとう!」
サラが満面の笑みでカインにお皿を渡した。
「今よそってくるっす」
まったく、食べすぎには注意だぞ。




