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第24話 カインとローサさん

 カインが屋台で働くようになってから1週間が経った。


 スキル「調理」のおかげもあってか、もうすっかり店の仕事には慣れている。


 今日は俺とカインの2人で開店準備をする日だ。


「やっぱり速いなぁ」


「褒めてもらえて嬉しいっす!」


 カインがものすごい勢いでハンバーガーを作っていく 俺の2~3倍のスピードだ。


 こっちを見ながら返事をする余裕もあるからたいしたもんだ。


 そのおかげで俺は会計側に専念できるから大分楽が出来る。


 おっと、さぼる気はないからな。


 そんな感じで2人で屋台を開けていると


「おはよう、どうだいカインは使えそうかい?」

 ローサさんが店にやってきた。


「げっ、おばちゃん。なんで来たんだよ」

 カインが気まずそうに言う。


「お前に聞いてるんじゃないよ、リュウに聞いてるんだ」


 ローサさんがカインを睨む。


 いや、そんなに怒らなくても。


「はい、カイン君のスキルを見させてもらいましたし、うちの商会の貴重な戦力になってくれそうです!」


「それはお世辞じゃないかい?」


「いえいえ、そんなことないですよ」

 あんな早業がお世辞なわけがない。


「そうかい、そうかい。それならよかった」

 ローサさんの口元が少しゆるむ。


 口じゃ厳しいこと言ってるけど甥っ子のことが心配なんだろうな。


「手紙に書いてあった通り、使えないと思ったらいつでもやめさせていいから。カイン、真面目に働くんだよ」


「はいはい、分かってるよおばちゃん」


 カインが不満そうに言う。さっき怒られてしょげているんだろう。


「返事は1回!!」


「うっす!」

 カインが姿勢を正しながら返事をした。完全にビビってるな。


「よし、それじゃあ今日はパンを4つもらおうかね」

 カインの返事に満足したのかローサさんは俺の方に向いてそう言った。


「あ、ありがとうございます」


 俺もちょっとローサさんに気圧されたけど、パンを渡してしっかりとお金はもらう。


「それじゃあこれで失礼するよ」


「またよろしくお願いします!」


 こうして嵐のようにやってきたローサさんは嵐のように帰っていった。


「ふぅ」


 俺は小さくため息をついた。ちょっと緊張したな。


 なんて言えばいいんだろう、先生が感じる三者面談の時の緊張感ってやつかな?


 先生したことないから分からないけど。


「うちのおばちゃんが申し訳ないっす」


「いやいや、いい人だよ」

 甥っ子想いの良いおばさんだと思う。


「ありがとうっす。おばちゃんは俺の育ての親みたいなもんっす」


 なんでもカインの両親は冒険者らしく、同じパーティーにいたことが経緯で結婚したみたいだ。


 カインが小さい頃は母親が家にいたらしいが、カインが7歳ぐらいの時に冒険者に復帰してまた父親と一緒にいろんなところを回っているらしい。


 ローサさんはカインの母親の姉らしく、2人が家にいない間、面倒を見てくれたそうだ。


「それで料理人になったと」


「そうっすね。自分のスキルが『調理』だったこともあるっすけど、やっぱり料理をすることが身近だったっすから」


 スキルは遺伝しやすいってサラは言ってたけど、そういう環境なのも大きいかもね。


「自分の話ばっかりで申し訳ないっす」


「いやいや、いい話を聞かせてもらったよ」


 仲のいい家族の話を聞くとほっこりするよね。


 その後は客足も増えてきたこともあって、2人でせっせと働いた。



 ーーーーー


「お疲れ様です!」


 サラが2時過ぎに屋台へとやってくる。


 3人になったこともあって、一日を半分に分けてシフト制にすることにした。


「そしたら今日は俺はここまでっすね。師匠、サラ先輩お疲れ様っす!」


 カインが巻いていたハチマキを取りながら挨拶する。


「「お疲れさま!!」」


 そしてカインは屋台から自分の家へと帰っていった。


 一応断っておくと今日のカインの仕事は屋台での仕事が終わっただけで、これで終わりではない。


 この前相談したようにカインにはハンバーグ作りについて研究をしてもらうつもりだ。


 だから、カインには屋台魔法の増殖で作った屋台を1つ渡して、好きな食材を好きなだけ使えるようにしておいた。


 そのためにあらかじめ食材のストックを大量に作ったからね。なくなることはないだろう。


「カインの働きはどうでしたか?」

 サラが聞いてきた。


「うん、やっぱり優秀だよ」


 カインがシフトの間ハンバーガー作りに専念してもらったおかげで、今日の残りの時間分のハンバーガーも作ってもらえた。


 研究の方の仕事も含めてボーナスを沢山出さなきゃな。


「そうですか、流石ですね」

 サラが頷く。


「ところでサラの方はどんな感じ?」

 サラには会計とか書類系を任せている。


 特に大事なのは商人ギルドに提出する事業計画書だ。


 ここをしっかり書かないとお金を貸してもらえないからね。


「まだ、準備の段階ですけど、ナターシャさんの方とも相談しながら上手くやっていきます」


 今日も商人ギルドの方に行っていろいろ話をしてくれていたようだ。


「了解。大変かもしれないけどよろしく頼む」


「いえいえ、任せてください!腕の見せ所ですから!」


 本当に頭が下がる思いだ。


 よし、俺も俺の仕事を頑張ろう。

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