表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/165

第21話 弟子ができました

 ハンバーガーを売り始めてから2ヶ月が経った。


 朝、いつも通りサラと一緒に店を出そうと広場の定位置に向かっていると


「あれ?人がいますね」

 サラが目を細めながら言う。


「そうなの?……本当だ」

 確かにいつもの場所に男の人が一人立っていた。


 他の露店の人みたいに荷物を持っていたりシートを敷いているわけではないからお客さんだろうか?


「お客さんですか?今から開店準備をするので少々お待ちいただいてもよろしいですか?」

 男の人に向かって声を掛けながら近づく。


「あ、リュウさん!」

 振り返った男の人がそんなことを言った。


「あなたは……あっ!!!カイン君!?」

 身長は160センチと小柄で、坊主頭。顔だちはアジア系だ。


 カイン君は異世界に来て初めて泊まった宿の若い料理人だ。宿の料理人のローサさんのお使いとして時々パンを買いに来たりしている。


「朝早くに申し訳ないっす」


「それで、今日はどうしたんですか?」


 こんな朝一から待っているってことは何かあるはずだ。


「おっす!実はリュウさんに頼みがあるっす」

 そういうとカイン君は突然地面に正座をした。


「な、なんですか急に!?」


「リュウさん、いえ、師匠!!!俺を弟子にしてください!」


 え、えーーーーーーー!?!?!?!


「弟子だなんてそんな教えられることないですよ!」


 そもそもハンバーガーとか作っているのスキルだし、俺自身はそこまで労力をかけているわけじゃない。


「仕事はなんでもいいんで、ここで働かせてほしいっす!」


 カイン君も引き下がらない。


「働くのは構わないんですけど、ローサさんの宿での仕事はどうしたの?」


 人手は欲しいと思ってたからありがたいんだけど、そもそもここで働いて大丈夫なのかな?


「説得して仕事を辞めたっす!あ、あとローサおばちゃんから手紙を預かったっす」

 カイン君がポケットから手紙を取り出して渡される。


「手紙?」

 受け取って中を読んでみる。



 <サート商会会長 リュウ様へ>


 いつもパンをありがとうね。重宝させてもらってるよ。

 それで、今回頼みたいことがあるんだ。今目の前にいる甥っ子のカインのことなんだけど、リュウのところで働かせてやってくれないかい?

 ここ最近ずっとお前さんのところで働きたいって言ってるんだよ。

 うちのカインはちょっと抜けているところもあるけど、料理に関しては才能があるんだ。これは身内びいきじゃないよ。

 もちろん、お前さんの商会はあっという間にうちの宿と同じフォースマーチャントになったし、スタンプホルダーになった勢いのある商会なのは知ってる。

 だから使えないやつだと判断したらいつ辞めさせてもいいから、一度だけでもチャンスを与えてやってくれないかい?

 宜しくお願いします。


 アリアドネの宿 ローサ



 こんな風に書かれていた。これは雇わないわけにはいかないよな。お得意さんだし。


 それにどこの誰かも知らない人を雇うより、顔見知りの方が信用できる。


「うん、わかりました。採用しましょう。サラも大丈夫?」


「はい、賛成です」


「本当っすか!ありがとうございます!!」


 カイン君が立ち上がって握手をしてくる。腕をぶんぶん振ってくるからちょっと痛い。


「ちょうど従業員を増やしたいなと思ってたから助かりますよ」


「俺頑張るっす!あ、あと俺の事はカインって呼び捨てでいいっす」


「分かった。じゃあこれからよろしく頼むねカイン」


「うっす!師匠!!」

 だから弟子じゃないんだって!


「サラ先輩もよろしくお願いしますっす!」


「こちらこそ、よろしくね」



 ーーーーー


 とりあえず初日ということで作業は見学してもらうことにした。


 まあそこまで難しい作業があるわけじゃないけど。


 それじゃ片付けの説明を終えた後、俺の家へ移動する。


「なんとなくやることは分かった?」


「はい!分かったっす」


「そしたら一応練習ってことで一個作ってもらおうか」


 部屋が狭くなるけど一瞬だからいいやって思って召喚魔法で屋台を取り出す。


「うお!さっきも見たっすけどすごい魔法っすね」


「まあこれから嫌というほど見ることになるから慣れてね」


 そして収納魔法からハンバーグ、バンズ、ケチャップ、トマト、レタスを取り出す。


 あとはトマトやレタスを切るための包丁、ケチャップを塗るのに必要なスプーンも用意した。


 キッチンの上に具材を並べたところでカインにバトンタッチする。


「じゃあやるっす」

 そういって食材に手をかける。


 シュバッ!!!!


 スタートと同時にものすごい音がする。


「出来たっす!」


「出来たってまだ始めたばっか……って出来てるな」


 カインの手元を見てみると既に完成していた。


「確かに完成してますね」


 サラも完成したハンバーガーをチェックする。挟む順番はもちろんハンバーグの上に塗ってあるケチャップも均一に丁寧に塗られている。


「それにトマトもレタスも綺麗に切ってありますよ」


 サラがまな板を指差す。余ったトマトやレタスも次に使えるように丁寧に切ってあった。


「それにしても早すぎない?」

 慣れてきた俺でもハンバーガーを一つ作るのに30秒ぐらいかかる。それも全部具材を準備した状態でだ。


 それなのにカインはそれと同じ時間に、ハンバーガーを完璧に仕上げた上でトマトとレタスを全部カットするなんて普通の人間に出来る技じゃない。


「実は俺、スキル『調理』っていうのを持っているっす」


 カインはこう答えた。


 スキル「調理」?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ