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第16話 お呼ばれしました その5

「大声を出してしまい申し訳ございません」

 サラがセレド様に謝罪した。


「ははは。からかって悪かったね」

 セレド様がずるがしこい笑みを浮かべた。


「さて、話を戻そうか」

 セレド様が姿勢を正す。


「これだけ素晴らしいものを食べさせてくれたのだから、何かお礼をしたいと思うんだけど、何がいいかな?」


「そういっていただきありがとうございます。そうですね……実は今屋台をやめて店舗を持ちたいと考えておりまして」


 屋台でハンバーガーが売れるということは分かったし、規模を大きくして売ってみたいなと思っている。


「ですので、そこで必要なものが決まった時に改めて答えさせていただけると幸いです」


「そうか……それならこれをお礼として渡そう、店舗を持つときに役立つはずだよ」


 そういうとセレド様は胸ポケットの中から小さな棒状のものを取り出すと俺に渡してくれた。


 手に持ってみると……ハンコみたいだな。


「あの、これは?」


「そうかフストリア領出身じゃないなら知らないか。あとで横のお嬢さんにでも聞いてみるといい」


 ちなみに隣のサラは口をアワアワとさせて言葉が出ないようだ。


「分かりました。大切にいたします」


「うん、よければまたハンバーガーを持ってきてね」


「はい、是非またお願いいたします」


 こうして俺たちはセレド様に別れを告げた。


 ーーーーー


 再びモードンさんの馬車に乗せてもらい、俺たちは家に戻ってきた。


「あー疲れたぁ」

 やっぱり偉い人に会うと体力的にというより精神的に疲れが来るな。


 でもセレド様が優しい感じの人で良かったよ。ハンバーガーも気に入ってもらえたみたいだし。


「はい、私もクタクタです……」

 サラもテーブル横の椅子にへたり込んだ。


「そういえば、もらったこれってなんだ?」

 改めてじっくり見てみると直径2センチ、長さ8センチの円柱型だ。


 材質は象牙のようなもので(この世界に象がいるのかは知らないけど)、表面には彫り物が施されている。


「やっぱりハンコだな」

 片側に掘り込みもあるし。


「ただのハンコじゃないですよこれ。フストリア家の印章です。言葉で説明するのが難しいんですが、この街の商人なら誰もが欲しがるものです」


「でもそんな大事なもの俺が持っててもいいの?」


「渡してくれているわけだからいいんじゃないんですか?」


「それもそうだな。まあ、詳しいことは今度商人ギルドに行ったときにでも聞いてみるか」


 1番ハンコとか使ってそうなのは商人ギルドだろう。


 近いうちに営業報告だったり、店を出す相談でもしようと思ってたからちょうどいいな。


「はい、そうしましょう」


「よし、今日のお仕事は終わり!せっかくだから明日は休みってことにしよう。ここ数日は忙しかったし」


 今日なんか緊張であまり眠れなかったからな。


 こういう風に思い立った時に休めるのも屋台営業の良いところだ。


 とはいえ店舗を持つようになって、従業員を増やしたりすればそんな風には行かなくなるけどな。


 だから今のうちだけだ。


「はい!それじゃあ今日はお疲れさまでした!2日後よろしくお願いします!」


「うん!お疲れ!」


 こうしてサラは自分の家に帰っていった。



 ーーーーー


 ~リュウとサラが城から帰った後~セレド視点


 フストリア家当主セレド・フストリアはリュウとサラを屋敷から見送った後、1人書斎にもどっていた。


 1時間後


「ご主人様、無事送り届けて参りました」

 2人を送り届けたモードンが戻ってくる。


「差し出がましいことを申し上げますが、あのようなものに印章を渡してもよろしかったのでしょうか」

 モードンの言うことももっともだ。


 呼ぶ前、調査したところによれば、まだサート商会は今月出来たばかりの新しい商会であり、自分の店舗すら持っていないような小さなところである。


 そんな彼らに、この街の商人なら誰でも喉から手が出るほど欲しがる印章を渡したのだから無理はない。


「でも、モードンも見たでしょう。彼らの出した料理は見たこともないようなものばかりだ。

 つまり、この街に情報すら入ってこないような土地とつながりを持っている商人ということだ」


 そんな貴重な商人に恩を売っておくのは悪くないはずだ。さらに成長を遂げてくれればこの街に利益をもたらすことは明らかなのだから。


「それに私のスキルが彼を助けるように言っている」


 私はスキル「直感」

 というものを持っている。


 こうした方がいいと直感した時、その通りにすれば大抵のことは上手くいくというスキルだ。


 これまで何度も助けられてきた。


「それに」


「それに?」

 モードンが聞き返す。


「ポテトが美味しすぎた。店を早く作ってもらわないとポテトが大量に買えないではないか」


 屋台にはポテトというメニューはなかったはずだから、今回のために用意してくれた新メニューだろう。


 しかし、今の営業規模、従業員の数からポテトを大量に売ることは出来まい。


 つまり、ポテトを日常的に食べられるようになるには今よりも大きな店舗を作ってもらうしかないのだ!


 そのためだったら何でもしてやる!


 あれをおやつに食べられたら、もう仕事でもなんでも頑張れそうな気がする。


 いや、夜食にも良いかもしれない。


「思い出したから、また食べたくなってしまったじゃないか!」


「理不尽な八つ当たりはやめてください」

 モードンはやれやれという風に首を振った。




 モードンめ、ポテトを気に入って何が悪い。

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