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第153話 ゼーベル家のお屋敷へ行こう

 それから1週間が経ち、あっという間にゼーベル家のお屋敷に行く当日になった。


「リュウさん、おはようございます」

「おはよう」


 当日の朝、俺たちは真っ白な料理服に着替えた。


 セレド様に初めて招かれた時に着たものと同じ服装だ。


 これを着るのも久しぶりだな。


 昨日までに用意もすべて終えたし、後はうまく行くことを祈ろう。



 家の前の通りで待っていると、一台の馬車がやってきた。


「サート商会のリュウ会長とサラ副会長でよろしいでしょうか?」


 御者さんが馬車を止めて確認してくる。


「はい、その通りです」


 俺が返事をすると、


「お待ちしておりました、リュウ様、サラ様」


 馬車から一人の女性が降りてきた。


「レナーテさん!」


「お久しぶりです」


 レナーテさんが恭しく一礼をする。


「こちらこそ、わざわざ来ていただいてありがとうございます」


「いえいえ。父がお待ちです、行きましょう」


 俺たちはレナーテさんに招かれて馬車へと乗った。



「いかかですか?ケンドットの街は」


 海沿いの道を走っていると、レナーテさんが質問してきた。


「とてもいいところです。来てよかったなと思っています」


 港街の活気もあるし、温暖で過ごしやすい。


 ソルーンとは違った良さがあるところだ。


「気に入っていただけて嬉しいです」


 レナーテさんが笑顔で頷く。


「サラ様は初めて海を見たそうで」


「はい!見渡す限り水で圧倒されます」


 サラが馬車の外の景色を見ながらしみじみと言う。


「そうですね。わたくしも生まれた時からずっとケンドットで暮らしていますが、この景色はいつ見ても飽きることはないです」



 そんな話をしながら馬車に揺られていると、ゼーベル家のお屋敷の前に到着した。


 大きな門をくぐると、目の前には綺麗な庭が広がっていた。


「父の趣味でたくさんの植物が植えられているんです」


 確かに、色とりどりの花が咲いていて綺麗だ。


 ただ、奥の方の植物は枝が動いているように見えるのは気のせいだろうか……


 気のせいだよな、うん。



 庭を抜けると、目の前にお屋敷が見えてきた。


 ヨーロッパの宮殿を思わせるような建物だ。


 レナーテさんに連れられて中へと入る。


 大きな廊下で、セレド様のお屋敷に比べたら窓が大きくて数も多い。


 きっと風通しを良くするためなんだろうな。



「この部屋に父がいます」


 扉をナターシャさんが開け、一緒に中へと入る。


 部屋の中央には豪華なテーブルがあり、その奥に一人の男性が座っていた。


「お初にお目にかかります。サート商会会長のリュウでございます」

「同じく副会長のサラでございます」


 俺とサラがお辞儀をする。


「わしはテイス・ゼーベル。ここゼーベル領の当主だ。よく来てくれた!」


 そう言うと、テイス様は豪快に笑った。


 年は50歳ぐらいで、背は180センチほど。体格はかなりがっしりしている。


 冒険者ギルドで見た冒険者より強そうだ。


「ありがとうございます。ご挨拶が遅れてすみません」


 なんだかんだでこの街に来て1ヶ月以上経っているからな。


「気にすることはない。サート商会が新しい食べ物を売っておったことは耳に届いている。むしろ、忙しいところ来てくれて感謝している」


「いえいえ、とんでもございません」


「それにフストリア伯爵から手紙も貰った。お主、たいそう気に入られているみたいだな」


「はい。セレド様にはよくしていただいております」


「お主にどのような魅力があるのか、是非この目で見てみたい」


「かしこまりました。では、持ってきた料理をお出ししますね」


 俺は自分の横に屋台を召喚した。


 そして、キッチンにフォルムチェンジする。


「ほう。変わったスキルを持っているな」


 テイス様が興味深そうに見つめてくる。


 俺は収納魔法からキュウリの一本漬けを取り出すと、丁寧に斜め切りしていった。


 そして、テイス様とレナーテさんに一本分ずつ皿に並べ、お出しする。


「こちらが、今販売しているキュウリの一本漬けという料理です」


「いただこう」


 テイス様はそのうちの一枚をフォークでパクッと食べた。


「ほほう。これはさっぱりしているな。食べただけで涼しく感じる」

「暑いケンドットにはピッタリです」


 2人とも美味しそうに食べていく。


「それに、今まで食べたことのない美味しさを感じる……」


 テイス様がキュウリを見つめながら不思議そうな顔をした。


「はい、サート商会特製の液に漬け込んでいますから」


「是非とも教えてもらいたいところだが……」


 テイス様が俺の顔をちらっと見る。


「それは商会秘密ですのでご容赦を」


「ハッハッハ! それはそうだ。これを教えてしまっては商売にならないからな」


「ですが、この特製の液を作ることが出来たのはこの街、ケンドットのおかげです」


 ここの海で見つけた昆布の葉っぱのおかげでこの味が出せているからな。


 味のレパートリーも広がったし、感謝しかない。


「この街のおかげか、それは領主として誇らしい」


 テイス様は満足げに頷いた。

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