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第139話 具材が揃いません

「キュウリの一本漬けには何が必要なんですか?」


 サラが俺に質問してくる。


「まずキュウリは必要だとして、他に塩、砂糖、お酢、後大事なのは昆布だな」


 だしが味の決め手になってくるからね。


 一人暮らしをしていたころは、簡単に漬物の素があったから大丈夫だったけど、ここで作るとなると欠かせない。


「大体の物はリュウさんのスキルで揃いそうですね。こんぶっていうのは何ですか?」


「なんて言えばいいかな……海に生えている植物といったらいいか」


 これが1番シンプルな説明だろう。


「植物ですか。でも海に生えているものならケンドットで手に入れられそうですね!」


「だといいんだけど」


 問題はこの世界に昆布があるのかが問題だ。


 それでも、手に入れられるとしたら、ここが1番可能性が高いだろう。


「よし、これから市場を見に行こう」



 ーーーーー


 昼過ぎ、俺たちは市場へとやってきた。


 しかし、


「うーん、どこにも売ってないな」


 市場中を探し回ったが、昆布はどこにも売っていなかった。


 それに、昆布どころかわかめやひじきといった海藻の類すべてがない。


 これは困ったな。


「すみません」


 この前アッサリを買った人魚族のおじさんのところへやってきた。


「お、この前の兄ちゃん。どうしたんだい?」


 俺の事を覚えていてくれたみたいだ。


「あの、この市場で海藻を売っているところはありませんか?」


「海藻?なんでそんなものが必要なんだ?」


 おじさんが不思議そうな顔をする。


「料理に使おうかなと思ってまして」


「いやいや、あれを食べるなんて聞いたことがないよ」


 おじさんは首を横に振った。


 話を聞いたところによると、この世界には海藻を食べる文化がないらしい。


 ごく稀に薬用のはあるらしいが、基本的に雑草と同じ扱いだそうだ。


「うーん、そうですか」


 それは困ったな。


 となると、昆布の代替物を探さないといけないか。


 そんなことを考えていると、


「あら?昨日の」


 聞き覚えのある声がしてきた。


 振り返ると、昨日会ったジーナさんがいた。


「ジーナさん!」

「また会ったわね」


 ジーナさんは、手に大きな袋を持っていた。


「パパ。今日のアッサリよ」

「おう、ありがとな」


 そう言ってジーナさんは大きな袋を人魚族のおじさんに手渡した。


 中に入っていたのは大量のアッサリだった。


「パパ?」

「そうよ、あたしのパパはここで働いているの」


 まさか、人魚族のおじさんがジーナさんのお父さんだったなんて。


 ジーナさんもここで手伝いをしているらしい。



「あの……」


 サラが遠慮がちにジーナさんに声をかける。


「あの時、リュウさんの背中で寝ていた人ね」


 ジーナさんも覚えていたみたいだ。


「サラと言います。サンダルを取っていただいてありがとうございます。ご迷惑をおかけしました」


 サラが恥ずかしそうに謝る。


 そういえば、サラは自己紹介もしていなかったか。


 途中で寝たもんな。


「ジーナよ。よろしくね。そんな謝らなくてもいいのに」


 ジーナさんは笑って許してくれた。


「それで、パパのところに何を買いにきたの?」


「実はこういう事情がありまして」


 俺は今回の件を説明した。


「海藻……変わったものを欲しがるのね」


 ジーナさんが不思議そうな顔をする。表情がおじさんとそっくりだ。


 やっぱり親子なんだな。


「そうだ。使えるかはわからないけど、あたしが海藻を取ってきてあげてもいいわよ」


 ジーナさんが嬉しい提案をしてくれた。


「え、本当ですか!?」


 昆布が手に入るチャンスが訪れたよ。


「別に難しい頼みでもないし、大丈夫よ。ただ、一つわからないのが、あなたたちが欲しいと言っている海藻がどんなものか分からないのよね」


 昆布が欲しいと言っても、その昆布がどんなものかわからなければ取ってくるのは不可能だ。


「実際に見に行ければいいんですけどね」


 人間は人魚族の人みたいに海中で息ができないからね。


 子供のころ、水の中で息が出来るようになったらいいなと思ってプールで水を思いっきり吸い込んだことがあるけど、その時は死ぬほどむせて終わったんだよな。


 今思い返すと、なんであんな馬鹿なことをしたんだろう。


「じゃあ、一緒に行ってみる?」


 ジーナさんが軽い感じで提案してきた。


「え?行けるんですか?」


 俺の肺活量なら持って20秒だと思うんだけど。


「ええ、方法はあるわよ」


「そういうことなら、是非お願いします!」


「分かったわ。用意しておいてあげる」


 そう言ってジーナさんが笑顔で頷いた。


「私も行っていいですか?」


 サラが立候補してきた。


「もちろんいいわ」


「ありがとうございます!」


 サラが小躍りする。


 海の中を見る機会なんてなかなかないからな。


 おまけにこんなに綺麗な海だ。


 海中が絶景なのは想像に難くない。


「それじゃあ、二日後の朝、あの砂浜に集合しましょう。あと、濡れても問題ない格好で来てね」


「はい、よろしくお願いします」


 こうして、ジーナさんと海に行く約束をすることが出来た。


 楽しみに待とう。


 俺たちはお礼としてアッサリを沢山買わせてもらうことにした。

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