第136話 シーフードカレーを作ってみました
俺たちは市場を後にして、人混みから離れたところに出た。
「よし、ここでシーフードカレーを作ってみよう」
「ついにじゃな!!」
レイが小躍りする。
シーフードカレー作りを始めよう。
「まずは……買った食材の下処理からだな」
俺は屋台を召喚してフォルムチェンジをする。
収納魔法から取り出した大きめのボウルに水を注ぐ。
そして、塩をその中へと入れた。
「どうして塩水を作っているんですか?」
「今から砂抜きをしようと思ってね」
「砂抜き?」
「こういった貝は土の中に潜っていたりするから、体の中に砂が入っていたりするんだ。それを抜くんだ」
これをしないと、貝がじゃりじゃりして食べられたもんじゃないからね。
味噌汁を作る時に一回忘れて地獄を見たよ。
作った塩水の中にアッサリを移した。
サラがじっとボウルを観察する。
「あ、何か出てきました!」
貝から管のようなものがでてうねうねと動く。これなら大丈夫だろう。
「あとは砂を吐き出してくれるまで放置するよ」
次にエルビを取り出す。
「おっきいよなあ」
俺は巨大なエルビの背ワタを取り除く。
そして、沸騰させた鍋にエルビを入れた。
「急に赤くなりましたね!」
サラが驚く。
「熱を加えると赤くなるんだよね」
おかげでエルビがさらに美味しそうに見える。
いい匂いもしてきたし。
「最後はイカーチだな」
元の世界で言うイカの下処理は動画サイトでしか見たことがないから手探りだ。
足を持って内臓を引き抜く。
本当はイカ墨とか内臓の中にも食べられるものがあるけど、今回は分からないからやめておこう。
エンペラを取って、その後皮を剥いていく。
そして、頭の部分はくちばしと吸盤を取って、げその部分もOKだ。
こちらも軽く下茹でをしていく。
これで具材の下処理は大丈夫かな。
俺は殻から取ったアッサリとエルビ、イカーチを、そして玉ねぎを鍋に投入して炒めた。
そして、ある程度火が通ったら水を加えてひと煮立ちさせる。
最後にカレールーを入れたら完成だ。
それと同時にアッサリの味噌汁も作ってみた。
ーーーーー
「「「いただきます」」」
「こ、これが待ちに待ったしーふーどカレーじゃな?」
レイがスプーンですくったカレーを眺めながらそう言った。
そして、覚悟を決めて一口頬張る。
「美味しすぎる……美味しすぎるのじゃ!!」
レイがスプーンを持った拳を突き上げる。
大げさだけど、気に入ってくれたみたいだ。
「同じカレーなのに味が全然違いますね!」
サラからの評価も上々だ。
「どれどれ」
俺も一口食べてみる。
おお!いい味が出てるな!
アッサリのダシがよく出ていて、海のうま味がこのルーの中に凝縮されているのがよく分かる。
最後に隠し味でエルビのみそも入れてみたのが正解だったかな。コクが増している。
エルビのプリプリ感も、イカーチの弾力も口の中が楽しくなる。
このルーなら無限にライスが食べられそうだ。
これも全部新鮮な食材が揃うからこそだな。
ケンドットの海の恵みに感謝しないと。
「おかわりじゃ!」
「私も!!」
2人が皿を差し出してくる。
このペースだと、鍋一杯に作ったカレーはすぐになくなりそうだな。
俺はカレーを1杯食べ終えた後、アッサリ味噌汁を手に取った。
「すっごい色だよな」
赤黄色青、味噌のスープの中に入れると違和感がかなりあるな。
でも、一口汁をすすると
「いやー、これはいいな」
アッサリの優しい味がする。
またアサリの味噌汁が飲める日が来ようとは。感動ものだよ。
こうして、俺たちはシーフードカレーを楽しんだ。
ーーーーー
「リュウありがとうな!うまかったぞ!」
「私も大満足です!」
2人がお腹をさすりながらお礼を言ってきた。
なんか仕草が似てきてる気がするな。食べるとき限定だけど。
「またこれからも作ってみるよ」
今回は初回だから手探りで作ってみたが、他の食材を入れたりしてこれからも工夫を加える余地はありそうだ。
「妾としては毎日でもいいぐらいじゃぞ!」
「いや、それは流石にない」
ほんとレイはカレーが好きだよな。
「むう。そうじゃ、一つリュウとサラに伝えようと思っておったのじゃが、そろそろ妾は帰ろうと思う」
ソフィア様の誕生日会の時からずっとマイマイ村の方を離れていたから、そろそろ戻るとのことだった。
「またソルーンに戻る時には念話をよこせ。そしたら迎えに来てやるぞ」
「いつもありがとうな」
レイのおかげで長旅をせずに済んだ。本当に助かったよ。
「ただし、しーふーどカレーをまた作るのじゃぞ!」
「分かったって」
そこだけは譲らないんだよな。まあ、レイっぽいけど。
「レイちゃん、本当にありがとう」
「なに、これぐらい妾にかかればなんてことはないぞ!」
今回の旅を経てサラとレイは更に仲良くなったみたいだ。
俺としても嬉しいよ。
「今度、どちらの方がリュウの作ったカレーを沢山食べるか勝負するぞ」
「望むところです!」
止めてくれ、それは俺が死ぬ。




