第13話 お呼ばれしました その2
「それで、呼ばれた件だけど」
少し横道に話がそれてしまったが、本題に戻すことにした。
「そうですね、まずセレド様のお屋敷に行くのは5日後がいいと思います」
サラが答える。
「5日後?ちょっと遅くないかな?」
領主様だし、そんなに待たせずに行ったほうがいいと思うんだけどな。
「確かにセレド様を長くお待たせするのは良くないです。でも、こちらも失礼のないように準備したり、あちら側も迎え入れる準備があるのでそれぐらいがちょうどいいところです」
「なるほど」
確かに準備は必要だな。
「一応そういうマナーも家で学んできてます。私に任せてもらえればオールオッケーです!」
サラが胸を張る。貴族の家だからそういうことも学んでいるんだろうな。
「そしたら準備についてはサラに任せるよ」
「はい!早速ですが、明日はモードンさんがいらっしゃるので店は開けるとして、明後日から行く日までは店を午前中だけにします。あとはマナー講座とかその他準備に充てたいと思います」
「了解!」
大まかなスケジュールを確認したところで今日のところはお開きになった。
ーーーーー
次の日来たモードンさんに話をして、4日後の昼に俺の家の前まで迎えに来てくれることになった。
それから俺たちは新しい服を買いに行くことにした。
まあ料理を作りに行くわけだから質のいい調理服を買いに行くイメージだけど。
「お店はあらかじめ調べておいたのでついてきてください!」
サラに連れられて街の中心部へと繰り出した。
中心部には商人ギルドに行く以外に特に用事がなかったから店によるという意味ではワクワクするな。
「着きました!ここです!」
サラが立ち止まった店は石造りの2階建ての建物だった。
軒先には「オルヴェン職業服店」と書いてある。
店の中に入ってみると中には様々な服が置いてあった。ただ、街の外側にあった服屋とは違い、一つひとつの服の質がかなり良い。
そしてこの前の執事が着ていたような執事服から、ガテン系の人が着そうな分厚い服、そしてフードがついた魔法使いのローブなど異世界ならではなものも置いてある。
「すごいな」
ここにいるだけで半日は時間がつぶせそうだ。
「見とれてないでこっちです!」
サラに引っ張られて店の奥に入っていくと調理服のコーナーがあった。
そして一際目についたのは、真っ白な調理服。フランス料理人が着てそうなものだった。
「これを買おうかなと思ってます!」
「いいんじゃないか?」
いかにも高級な料理作ってますというような服装だし、セレド様のところにはこういう恰好の方がいいかもしれない。
まあ、俺自身はそんなに料理をしているわけではないんだけどな。
魔法で作ったハンバーグとその他野菜ケチャップをパンにはさんでいるだけだし。
ほんとスキルさまさまだな。
「どれどれ、ゲッ!!!7万クローネ!?」
1着そんなにするのか!
「当たり前です!セレド様の前でみすぼらしい恰好なんてできませんから」
サラが当然とばかりに胸を張る。
「うーん、確かに……よし買おう!」
痛い出費だがしょうがない。
「すいませーん」
近くにいた店員さんを呼ぶ。
「いかがなさいましたか?」
「この服を2つください」
「2つですか!?」
サラが驚いたような顔をする。
「違うの?」
サラは別の服でも着るのか?
「私なんかのためにこんな高い服を買う必要なんてないですよ!もっと安い服を自分で準備しますから」
「いやいや、そんなわけにもいかないでしょ。それにサラにはこの2週間頑張ってもらったし」
おかげでこの2週間はかなりの売り上げだ。
「でもこれ給料の半月分以上……」
「そんなこと気にしなくていいから。その代わりセレド様の屋敷に行くときは頼んだよ」
俺にとってはサラだけが頼りだからな。
「リュウさん……ありがとうございます!!大切にします!」
サラが笑顔で返事をする。喜んでもらえたようでなによりだ。
「そういうわけで2つください」
「かしこまりました、それではお二方の採寸をさせていただきます。それに合わせて服のサイズを調節いたしますので」
もう一人店員さんを呼んでもらって俺とサラの採寸作業をしてもらった。
そして店員さんに14万クローネを手渡す。
「確かに代金をいただきました。急いで仕立てますので明日の夕方以降に店にいらっしゃってください」
これで行く日までに服は間に合いそうだ。
「はい、ありがとうございます」
そう言い残して俺たちは店を出た。
ーーーーー
服を買った日の夜俺はサラからマナーや、この国について教えてもらった。
まず、エルランド国はこの大陸の5大国の一つでエルランド王家が治める国だということ。
そしてエルランド国の西側には海があり北南東は他の国と接している。
ここフストリア領はフストリア伯爵が治めるエルランド国最南端の領地で、王都からはかなり離れているそうだ。
ただ、南でアンカラン国と接していることから交通の要衝として栄えているとのことだ。
「ちなみにサラのお父さんの領地はどこら辺に?」
「フストリア領の中では最東端の場所で、内陸の方です」
「なるほど、行ってみたいな」
「何もないところですよ?」
「いやでも、サラの故郷だし、いつか挨拶にも行かなきゃな」
「あ、挨拶ですか!?」
サラの顔が赤くなった。
「ん?サラさんのおかげで店が繁盛していますって感謝を言いにいかないと」
自分1人だけじゃ出来なかったはずだしな。
「え、それだけですか?」
「それだけってどういうこと?」
他に言うようなことってあったっけ?
「いや、それだけなら大丈夫です」
急にサラが不貞腐れた顔になる。
「どうしたんだ急に」
俺何か悪いこと言ったかな?
「……別に」
めちゃくちゃぶっきらぼうにサラが言う。
「??????」
その日は何を言ってもサラの機嫌は直らなかった。
おかげさまで昨日、日間ファンタジー異世界転生/異世界転移ランキングにて、一時的に95位にランクインすることが出来ました!
この作品を頑張って作ってよかったなと思っています!
読んでくださっている皆様本当にありがとうございます!
これからも応援よろしくお願いします!




