第131話 ゼーベル領へ行こう
新年あけましておめでとうございます!
今年もどうぞよろしくお願い致します!
カインに伝えた後は、ハンナのところへと向かった。
「そうですか。またしばらくソルーンを離れるんですね」
「それでなんだけど、ハンナにソルーン・バーガーの店長を正式に任せようと思う」
「え!?この前みたいに臨時じゃないんですか?」
ハンナが驚く。
「ああ、このまま店長をやってもらうつもりだ」
俺がマイマイ村から戻って以降もソルーン・バーガーはハンナが中心になってまとめてもらっていた。
これからこうやってソルーンの外に出る機会も増えるだろうし、このまま正式になってもらうのが一番いい気がする。
そもそも俺はあまりみんなを引っ張っていくタイプではないからね。ハンナの方が適任だ。
「分かりました!店長としてリュウさんがいない間もこのソルーン・バーガーを守ってみせます!出張頑張ってください!」
マイマイ村に行く時と違って、ハンナは力強く答えてくれた。
「ありがとう」
期待に答えられるように頑張ろう。
ハンナにそのことを伝えた後、俺はケーキ工房へと向かった。
クトルに事情を説明すると
「そうですか……寂しいです……レイちゃんがソルーンから離れるなんて……」
クトルは膝から崩れ落ちていた。
……え?そっち??
「……俺とサラは?」
「あ!も、もちろん寂しいですよ!とってもとっても寂しいです!!」
慌ててクトルが訂正する。
いや、まあいいんだけどね。
通常運転なのもクトルらしいと言えばクトルらしいかも。
留守の間は任せることを伝えて、今度はナターシャさんのところへ向かった。
「ゼーベル領へ視察ですか!いよいよサート商会もフストリア領の外へ進出ですね」
ナターシャさんが嬉しそうに言った。
「はい、なのでその間ハンナやクトルがこちらに来ることになると思いますが、よろしくお願いいします」
「分かりました。任せてください。それと、もし良かったらゼーベル領の商人ギルドに連絡を入れておきましょうか?」
何か困ったことがあったら向こうの商人ギルドにも聞きに行くことが出来るみたいだ。
「本当ですか?お願いします」
「そうなると……行くのはゼーベル領最大都市のケンドットですか?」
「はい、そこに行きます」
「では、そちらに連絡を入れておきますね」
「ありがとうございます」
「頑張ってくださいね!ソルーンから応援しています」
ーーーーー
その後数日かけて俺とサラは出発の準備をした。
まあ、俺の場合は必要なものは収納魔法に入れているからそんなにやることはなかったけど。
出発の前日、夜に最後のシフトに入っていると。
「リュウ。ポテトを買いに来たよ」
セレド様が店にやってきた。
「モードンから聞いたよ。ケンドットに視察に行くんだってね」
この前来たモードンさんからセレド様に伝えてもらっていた。
「はい、色々見てこようかなと思っています」
フストリア領の外がどうなっているのか見るのはとても楽しみだし、旅行に行く前日みたいなわくわく感がある。
「そうかい。そうだ、今日はリュウにこれを渡そうと思ってきたんだ」
セレド様は俺に一通の手紙を渡してきた。
「これは?」
「ゼーベル家に宛てて書いた手紙だ」
「え!?」
「街についたらこれを商人ギルドの人にでも渡すといい。助けてくれるはずだよ」
「そんなものをいただけるなんて感謝しかないです」
普通の商人がもらえるようなものではないのは俺でも分かる。
「いやいや、今まで世話になったお礼さ」
「ありがとうございます。いただきますね」
心強い物をもらったな。
「また戻ってきた時にでも土産話を聞かせてくれ。それじゃあ健闘を祈る」
「はい!」
セレド様はポテトを受け取ると颯爽と帰っていった。
みんな応援してくれているのが伝わってきて嬉しいな。
まだ、ケンドットで店を出すか決定したわけではないけど、実りある視察になるようにしよう。
ーーーーー
次の日、出発の準備を整えた俺、サラ、レイはソルーン・バーガーの前に集合する。
カイン、ハンナ、クトルが見送りに来てくれた。
「レイちゃん……バイバイ……」
レイと離れ離れになるのが寂しくてクトルが半泣きしている。
レイの事好きすぎじゃないか?
「それじゃあ、みんな留守を頼む」
「よろしく頼みますね。また収納魔法の手紙で連絡します」
「「「はい!!」」」
こうして俺たちはケンドットへと向けて出発した。
「これから馬車で片道2週間……分かってはいますが大変ですね」
ソルーン・バーガーから城壁の方に向かって歩きながらサラがそう言った。
この内陸都市からケンドットへは相当な道のりがかかる。
マイマイ村は3日ほどだったけど、その時でもそこそこ疲れたからなぁ。
それでも魚を食べるためだ、踏ん張っていこう。
そんなことを考えていると
「サラ、お主ずっと馬車に乗るつもりなのか?」
レイが不思議そうな顔をする。
「ええ。歩いて行ける距離じゃないですし」
確かに歩いていたらいつまで経っても着かないからな。
「妾がおるのじゃぞ?」
俺はレイのその言葉を聞いて何が言いたいのかピンときた。
もし俺の予想が正しければ、とんでもないことになりそうな気がする。
「……もしかして?」
サラも何が言いたいか分かったみたいだ。
「その通りじゃ。飛んでいくぞ」
レイはニヤッと笑った。




