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第127話 ケーキ工房のその後

 誕生日会を終えた後、予想通りケーキ工房が忙しくなってきた。


 ちょっと想像以上だけど。


「クトル!ケーキ焼けたか?」


 俺は生地をかき混ぜながらクトルに確認を取る。


「まだです!」


 クトルが作業をしながらオーブンを覗き込んでチェックをする。


「そうか!可能な限り急いでくれ!マノン、クリームは!?」


「今やってます!!」


 マノンがものすごいスピードでクリームをかきまわしている。


 誕生日会に来た人からの注文や、その噂を聞いた人からの予約などで大幅に注文が増えている。


 前まではなかったけど、今はサート商会宛に注文の手紙が来るようになったからな。


 そのため、今は俺やサラがケーキ工房のシフトで入ることで回している。


 サラやハンナと相談して新たにケーキ工房のスタッフの募集もかけたから、もう少ししたらこの忙しさも良くなるはずだ。



 ーーーーー



「お疲れ様」


 その日の作業を終えた後、クトルに声をかける。


「お疲れ様です。忙しくなってきましたね」


 クトルが水を飲んで休憩する。


「体調とか大丈夫か?」


 ここ数日クトルにはかなり頑張ってもらっている。


「大丈夫ですよ!我には秘められし力が残っていますから」


「そうか、無理だけはしないようにな」



 うーん、どうにかして作業を楽に出来ないかな?


 クリームにしろ、スポンジケーキ作りにしろ、体力を使う部分が多いんだよな。


 特にかき混ぜる作業は大変だ。あっという間に右腕がパンパンになるからね。


 ここを楽にする方法となると……機械化かな。


 そうなるとあの人に相談してみるか。



 ーーーーー



「セシルちょっといいかな」


 次の日、ソルーン・バーガーの休憩室でセシルに声をかける。


「はい、なんですか?」


 セシルが片手でハンバーガーを食べながら紙に何かを書いていた。


「これは?」


 気になったので聞いてみる。


「これですか?会長から依頼されたものを考えてたんです」


「ビールのサーバーか」


 歓迎会の時に頼んだやつか。しっかり考えてくれているんだな。


 興味があって覗かせてもらったけど、複雑な数式が羅列されていて全然分からなかった。


 まあ、その件については引き続きお任せしよう。


「それで、どうしたんですか?」


「ああ、そうだった。作ってもらいたい道具があるんだ。出来ればビールのサーバーよりも優先で」


 俺はクリームの泡立て機についてセシルに説明する。


「うーん、多分作れると思います。ただ、そこそこお金がかかりますけど、大丈夫ですか?」


「いくらぐらい?」


「一つ作るのに20万クローネですかねー」


「20万!?」


 想像を上回る金額だった。


「やっぱり、動力に魔石を使うとなるとお金がかかりますからね」


 まあ、元の世界と同じようにはいかないよな。


「それでもお願いしてもいいかな。もちろん、成功報酬も出すし、製作期間の間は作業に専念してもらって構わない」


「本当ですか!?嬉しいですー!」


 モノづくりが好きなセシルにとっては嬉しい提案だったみたいだ。


 費用はかかるが、クトル達の仕事が楽になるなら安いもんだな。


「分かりました!やってみますね」


 セシルは快く引き受けてくれた。


「ありがとう。よろしく頼む」


 完成を楽しみに待とう。


 ーーーーー


 2週間後


「会長!」


 俺が会長室にいるとセシルがやって来た。


「試作品が出来ましたよ!」


「本当か!」


 思っていたより早く完成したみたいだな。


「はい、ただ機械が少し大きいので運ぶのを手伝ってもらえると助かるのですが」


「分かった。ちなみにどこにあるんだ?」


「家の作業場です」


「分かった。取りに行こう」



 俺は早速セシルの家に向かった。



 ーーーーー


「これが泡だて機か」


 セシルの家から運び出した泡だて器をケーキ工房へと運んだ。


 ちなみにセシルの作業場は色々な道具とかが置いてあっていかにもモノづくりの現場って感じがしたよ。



「設計の都合上、会長に教えてもらった手でもつ形での設計はやめることにしましたー」


セシルが泡立て器に手を置きながら説明する。


 最初はその方向で考えたらしいが、重くなりすぎたみたいで変更することになったらしい。


「それでこの形になったってわけか」


 箱状になっていて、下の部分にボウルを入れることが出来る形になっている。


 その上部分には手でかき混ぜる用の泡だて器の金属部分が取り付けてあった。


「我も初めて見ました」


 一緒に来てもらったクトルも興味深そうに眺めている。


「横にあるボタンを押します」


 すると、泡だて器の部分が回転し始めた。


「この部分にボウルを近づけてください」


 クトルが回転部分にクリームを近づける。


「おおーー!!」


 ちゃんと泡だて器として機能しているな。


「これなら作業が楽になります!」


 クトルが嬉しそうにそう言った。


 ボウルを持たなきゃいけないけど、ずっと手でかき混ぜ続けるより楽になることは間違いない。


「これからさらに改良していきますが、まずはこの形で使ってみてください」


 壊れたときも修理してくれるみたいだし、至れり尽くせりだ。


「本当に助かった。ありがとう」


 俺は改めてセシルにお礼を言う。


「いえいえー、わたしもサート商会の一員ですから!出来ることはまだまだやらせてもらいますよー!」


 うん、これからも困った時には助けてもらおう。

次回の投稿日ですが、もしかしたら3日後の25日より後になるかもしれません。


もし、投稿日が変更になる場合には改めて25日午後6時までにはご連絡させていただきます(この後書き欄を修正、また活動報告でも連絡させていただきます)。


ご理解ご協力のほどよろしくお願いいたします。


12月25日追記


本日中に第128話を投稿する予定です

よろしくお願い致します!

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