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第12話 お呼ばれしました

 ハンバーガーを売り始めてからあっという間に3週間が経った。


「ハンバーガー4つちょうだい!」

「こっちもハンバーガー2個!!!」


「かしこまりました、少々お待ちください!」

 サラがテキパキと対応していく。


 売れ行きは順調だ。順調すぎるといってもいいかもしれない。


 佐藤家特製のハンバーグを乗せたハンバーガーの噂は瞬く間に街中に広がり、常に客足が途切れないくらい売れるようになった。


 パンとハンバーガー合わせて1日20万クローネ以上の売上だから驚きだ。


 ただ、これ以上売ろうとすると屋台だと厳しいかもしれない。店の広さに限界があるからだ。


 どこかに店舗を借りて営業をした方がいいのだろうけど、そうなると人手も足りないわけだし、、、、


 まあ、ゆっくり考えていこう。



「ありがとうございましたー!」



 今日の営業を終えて店じまいをしていると


「すいません、ここがハンバーガーを売っている店でしょうか?」


 ひとりの50代ぐらいの人が店の前にやってきた。白髪でずいぶんダンディなおじさんだ。


 街の人に比べたら上質そうな黒い服を着ているから、どこかのお偉いさんだろうか。胸の位置に金の刺繍で花みたいなのがついてるし。


「はい、ですが本日は……」


「申し訳ございません!ただいま店主が席を外しておりまして。どのようなご用件でしょうか?」


 と言ってサラが一歩前に出る。え、サラが出ちゃうの?


(後で説明するので話合わせてください!!!)

 とサラが無言の圧で訴えてくるのでとりあえず従っておく。


「左様でございますか。申し遅れました、私セレド様の執事をしているモードンと言います。ご主人様が是非こちらのハンバーガーなるものをお食べになりたいと仰せですので、屋敷の方にご招待させていただきたいのです」


「!!!セレド様がですか!?!?」

 サラが驚嘆の表情で聞き返す。


「あの、セレド様ってだ……グハッッ」

 俺が質問しようとしたら横にいたサラから肘鉄をくらわされた。


 見事にみぞおちにクリーンヒットして縮まりこむ。


(だから黙っててって言ってるでしょうが!!!!)

 ものすごい剣幕でサラが睨んでくるので大人しくすることにします……


「そちらの方は大丈夫でしょうか?」


「ええ、大丈夫です。お気になさらず」


 顔を一変させ笑顔で返事をするサラ。ギャップがすごいな。


「左様ですか。それで、店主の方にいつならこちらにいらっしゃることが出来るか聞いていただけるとありがたいのですが」


「かしこまりました。店主に話を聞いておきます」


「それはそれはありがとうございます。では明日また同じ時間に返事を聞きに来ます」


「はい、宜しくお願いします」


「ではこれにて」

 モードンさんは恭しく一礼するとその場を去っていった。



「はぁぁぁぁぁ緊張したぁぁぁ」

 サラが大きなため息をついた。


「肘で殴ってしまったのはすいません。でも店長が悪いんですからね!!!」


 サラが頬を膨らませながら怒ってくる。


「何が悪かったんだ?それにセレド様って?」


 確かになんか偉い人の執事ってことは分かったけど、そんなに変なことはしてない気がする。


「セレド様はあそこにある城の城主です」

 サラが指差した先にあったのは、街の中央にそびえたつ大きな城だった。



 ーーーーー


 店の片づけを終えたあと、俺とサラは居酒屋へ向かい、サラの話を聞くことにした。


 話をまとめると、あの執事の主人であるセレド・フストリア伯爵はこのソルーンを含むフストリア領の領主ということだ。


 フストリア家の紋章はスズランの花らしく、サラは執事の胸元にその刺繍を見つけた時点で伯爵関係の人だと見抜いたらしい。


「すごい洞察力だな」

「フストリア領に住んでいるなら当然です!」

 サラがあきれ気味に返事をする。


 で、そんなことも知らず、挙句の果てには「セレド様って誰?」とか失礼なことを言い始めた時点で、サラの肘鉄が飛んでくるのは当然だったということだ。


「私が怒った理由分かりましたか?」

「うん、よくわかった。悪かった」


「分かってくれればいいんですよ」

 サラの機嫌が戻ってくれた。よかった。


「それにセレド様は私の父の上司に当たるんです」

「上司?」

 何かの会社があるのか?


「あれ?言ってませんでしたっけ?私の父はアモード・エストロンドといって男爵位を持ってます」

 サラがとんでもないことを言い始めた。


「サラ、何さらっと爆弾発言してるの?いやこれ親父ギャグじゃないからね。ってことはサラって貴族なの?いや?サラ様?」


 なんか頭が混乱し始めたぞ。


「落ち着いてください、確かに家は貴族ですけど、領土も村一つですし名ばかりです。それに男爵だと当主以外は貴族の扱いは受けません。普通の人と大差はないです」


「つまり……村のお嬢様みたいな?」

 まとめるとそんな感じかな?


「そんな感じです」

 サラが頷く。


「分かった。それで、こんなところで働いてていいの?」


 いくら貴族ではないといってもこんな出来て一カ月も経ってないような商会、それも実質パン屋とハンバーガー屋に入ってていいんだろうか?


「何言ってるんですか!リュウさんは私の命の恩人ですし、この商会は将来もっと大きくなる未来が私には見えるんです!!!それに……」


 サラがじっと俺を見つめてくる。


「それに?」


「な、なんでもないです!!とにかく、ここでこれからも働かせてください!!!」


 何故かはわからないがサラが顔を真っ赤にさせながら俺に頭を下げてきた。


「分かった分かった。そんな頭は下げなくていいから!これからもよろしくね」


「はいっ!よろしくお願いします!」


 とびっきりの笑顔でサラが返事をする。


 うん、やる気十分で頼もしい限りだ。

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