第122話 ソフィア様の誕生日会 その3
ソフィア様の婚約報告の後は、ソフィア様がソルーン城の広場に集まった街の人達に向かってスピーチをする時間になった。
この時間は招待された人たちは自由時間ということだったので、俺はスピーチを聞くために城の広場へとやってきた。
「すごい人だな」
ソルーン中の人が来たっていったら大げさかもしれないけど、広場を埋め尽くすぐらいたくさんだ。
それだけソフィア様が街の人から愛されているってことだよな。
少しすると、広場の近くにある展望席のようなところからセレド様とソフィア様が出てきた。
「ソルーンに住む諸君、きょうは妹のために来てくれてどうもありがとう」
セレド様が声を拡大する魔道具を使って集まった人たちに話しかける。
「「セレド様ーーー!」」
「カッコいいーーー!!」
大歓声が聞こえる。
その後は、さっきの儀式の時と同じように、ソフィア様が挨拶とスピーチをした。
そして、ソフィア様が婚約を発表する。
「おめでとうございます!!」
「お幸せにーーーー!」
「そんな!!……ソフィア様が!!」
「俺はこれからどうすれば!!」
祝福の声に混じって嘆きの声も聞こえてくる。
ソフィア様美人だし、アイドル的なところもあったんだろうな。
俺も好きだった芸能人の結婚報告とか聞くと、自分には全然関係ないのに寂しい気分になったもんだよ。
スピーチを終えると、ソフィア様が城の中へと戻っていった。
その光景を見届けると、広場に集まっていた人たちは門の方へと帰り始めた。
ソフィア様のスピーチが終わったということは、次はいよいよ食事会だ。
ケーキの出番がやってくる。
俺は急いで城へと戻った。
ーーーーー
「広いところだな」
再び城の人に案内されてサラやアモードさん達と一緒に向かったのは城の大広間だった。
沢山の丸テーブルが並んでいて、150人ぐらい入るんじゃないかな。
俺はサラ、アモードさん、メリッサさん、ジャスティン様、ルナさんと同じテーブルに座ることになった。
セレド様の配慮で知り合いでテーブルを固めてもらったみたいだ。
この世界なら当然なんだけど、エルフだったり、ドワーフだったり獣人だったりと多様な人たちが集まっている。
「なんか緊張してきたな」
みんな綺麗に着飾っていて品がある気がする。この人達に自分たちのケーキを見せると思うと不安になってきた。
「大丈夫ですよ。リュウさんの味は絶対ですから」
サラがフォローしてくれる。
「ありがとう。少し気が楽になったよ」
会場に全員がそろった後、セレド様が壇上に立った。
「皆さんのためにささやかながら食事を用意させていただきました。楽しんでください」
そのセレド様の言葉を合図に会場のドアが開き、たくさんの人が台車に料理を乗せてやってきた。
「こちら前菜になります」
俺たちのテーブルにもやってきて、城の人が流れるように配っていく。
出てきたのは野菜のマリネのようなものだった。
「いただきます」
俺は早速一口頂く。程よい酸味で食べやすいな。それに野菜も新鮮だから素材の甘みも感じられる。
その後、スープなどが続いていった。
どれもかなり上品で洗練された味だ。
「次は魚料理になります」
次に出されたのは白身魚のムニエルだった。
「うっっま!!!」
ソルーンは内陸部にある影響で新鮮な魚が手に入りにくい。
それに俺のスキルだとあれだけたくさんの食材が作れるのに、なぜか魚は作れない。
だからこの世界に来てから魚を食べる機会があまりなかった。
そのこともあってかより美味しく感じられる。魚のさっぱりした油がいいな。
味わっているうちにあっという間に食べきってしまった。
次に運ばれてきたのは肉料理だった。
「こちらダンジョン産コカトリスの塩焼きになります」
コカトリスって確か鳥みたいなやつじゃなかったっけ?
一口食べてみると、今までの人生で食べた鳥の中で一番鳥のうま味を感じられた。
弾力も程よくて食べ応えがある。
俺のスキルで作る鶏肉よりも美味しい。
今まで食材って言うと、自分のスキルに頼ることが多かったけど、こんなに美味しい食材もあるんだな。
魔物の肉は高いって聞いてたけど、その価値がよく分かったよ。
「どれも美味しいですね」
隣にいたサラも美味しそうに食べている。
「流石セレド様だな」
これほど美味しい料理を準備できるセレド様はすごいと思う。
逆に言うと、そのセレド様のお気に入りがフライドポテトとケチャップなのは面白いな。
……そう考えると、俺のやっていくべきことはやっぱりこの世界にない料理を作っていくことな気がする。
俺のスキルで出来る食材は品質はいいって言っても、この世界にないわけじゃないし、さっきのコカトリスみたいに上回るものも存在するからね。
でも、料理の種類はこの世界の方が少ない。今日の出てきた料理もシンプルな味付けのものが多い。そこに商機があるな。
もちろん、料理の他にもマイマイ村でやった縁日みたいなイベントをやるのも効果的な気がする。
……結局現状通り頑張ろうってことか。
でも方向性の再確認も出来たし、自信も出てきた。
この誕生日会に招待してもらえてよかったな。




