第113話 近づいてきました
遅くなりました!!
オブリナ・サート杯が終わって、いよいよソフィア様の誕生会が近づいてきた。
そろそろ準備をしていこう。
俺はケーキ工房へと向かった。
「クトル、ケーキの方は順調か?」
「はい、順調ですよ!我の技術も上がってきました」
そういって完成品を見せてくれた。
「綺麗だな……」
小さいケーキの上でクリームが綺麗に盛り付けられている。
試食をさせてもらうと、味も格段に良くなっていた。
スポンジもいい感じにしっとり、それでいてふわふわ感も十分出ている。
クリームも程よい甘さで舌触りも滑らかだ。
日本のデパートで売られているものと本当に遜色がないと思う。
「さすがクトル」
努力の賜物だ。
「いやいやいや」
クトルが照れる。
「この感じでそろそろソフィア様のケーキ作りを始めて欲しい」
収納魔法のおかげで前日に作る必要もないし、余裕を持って始めようと思う。
「分かりました!もう設計図も作成しているので戦いの準備は出来ています!」
そういって紙に書いたデザインを見せてくれた。
このまえマノンに提案してもらったように、長方形タイプのケーキを2段に重ねるタイプらしい。
クリームも絞り方を工夫して凝った感じにするみたいだ。
「よし、これでお願いをしたい」
「了解です」
うん、楽しみにしておこう。
ーーーーー
ケーキ工房からソルーン・バーガーに戻ると
「リュウさんソフィア様の誕生会の準備をしましょう」
サラにも声をかけられた。
「俺も準備を始めたところだ。何からすればいい?」
貴族の、というか社交的なパーティに行くことが人生でほとんどない。
1回上司の結婚式には行ったことがあるけど、それぐらいだな。
「まずは服を買いに行きましょうか」
確かに礼服がない。
「了解」
シフトが無いタイミングで、サラと街の中心部へと向かった。
「今回はこの店です」
サラに連れてきてもらったのは「ボナール服店」という高級な感じの店だった。
ここは王都に本店があるようなかなり大きな服屋らしい。
「いらっしゃいませ、本日はどのような服をお探しでしょうか?」
店に入ると早速上品そうな服を着た男性の店員さんが挨拶してくれた。
「今度行われるソフィア様の誕生会に出席するための服を買いに来ました」
サラが事情を説明する。
「左様でございますか。そのような立派な式のために当店を選んでくださりありがとうございます」
店員さんが恭しく頭を下げる。
ソフィア様の誕生会については街で話題になってくる。
当日のお昼に城の前の広場を開放してスピーチもするみたいだ。
「では、男性の方から始めていきましょうか」
そういうと、店員さんがメジャーを取り出した。
それもただのメジャーじゃなくて、紐が空中に浮かんでいる。
魔導具みたいだな。
「ではこちらに背を向けた状態で立っていただけますか。採寸を始めさせていただきます」
そういうと、メジャーが自動的にウエストや肩回りの採寸を始めていく。
すべて一発で測定をしていくからテキパキと作業が進むな。
「計測が終わりました。計測させていただいた数値から考えますに、こちらのコーナーの服が一番お似合いになると思います」
そういって店内の一角へと案内された。
どちらかというと細身の人向けに作られているコーナーらしい。
サラに意見をもらいつつ、ベストなものを選んでいった。
「よし、これにしよう」
選んだのは黒い礼服のようなものだ。袖や首回りに金色の細い刺繍がされていていいデザインだと思う。
あまり派手すぎるものも好きじゃないので、これぐらいがちょうどいいな。
俺の服選びが終わると、今度はサラの服選びになった。
「これはどうでしょうか?」
色々考え結果、濃い青色のドレスになった。
レースの部分の花柄がかなりオシャレだ。
「うん、似合ってるよ」
こういう服を着ている姿を見ると、サラがお嬢様ってところを思い出すよな。
「ありがとうございます」
サラも嬉しそうにくるくるしながら自分の服を見ている。
「そしたら、これにしようか」
「はい!」
というわけで、着ていくものは決定した。
会計は2人合わせて25万クローネとなった。
流石高級服って感じだな。
これでパーティでも恥ずかしくはない恰好で行けるよ。
「では、服のお渡しは2週間後となります」
「はい、よろしくお願いします」
届くことを楽しみにしながら俺たちは服屋を出た。
「後は何の準備をすればいいんだ?」
店を出た後、サラに質問をする。
「そうですね……パーティでの作法は覚えてもらう必要がありますね」
セレド様に会いに行くときに最低限のマナーは教えてもらったが、パーティにはパーティのマナーがあるらしい。
確かに覚えなきゃな。
「それともう1つ、リュウさんは踊ったことがありますか?」
「踊り?いや、ほとんどないと思うな……」
なんか体育でやったことがあるような、ないような。そんなレベルだ。
「そうですか……では特訓をしましょう!」
サラが笑顔で宣言した。




