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第112話 オブリナ・サート杯 その4

「それでは決勝戦を始めたいと思います」


 ついに決勝戦のコールが入った。


 決勝戦は1人の持ち時間を45分と長めに設定した。


 最後の試合だからね、出来るだけ時間を多くとる。


 サラとハンナが中央に並んで立った。


「サラさんとは戦う気がしてました」


「私もハンナとはどこかでぶつかると思ってた」


 うん、2人ともバチバチだね。


「決勝戦用ってことでセレド様からセットを借りたんだけど、これを使ってもらってもいいかな?」


 俺はサラにオブリナを手渡した。


「こんなものを使わせてもらえるなんて……光栄です」


 サラが嬉しそうにオブリナを受け取った。中身を知っているみたいだな。


 使い方は2人とも分かるみたいだったので、後はお任せすることにした。



 サラが机の上にオブリナのゲーム盤を開いて置く。


 それと同時に2人は距離を取った。


 すると、ゲーム盤が光だして、どんどん大きくなっていく。


 そのゲーム盤上にホログラムのようなものが浮かび上がってきた。


 みんなリアルで歩兵は甲冑を着ているし、近衛兵はより屈強そうな男だ。


 王様もマントを羽織って堂々とした風格が漂っている。


 めちゃくちゃリアルだな。


 ちなみにサラの陣営は色が赤、ハンナの陣営は色が青色になっていた。


 これなら見分けがつきやすいね。



「スゲー!!!魔法盤だ!」


 俺の横で見ていたナイジェルくんが興奮している。


 魔法としても高度な技術が使われているらしく、もっているのは貴族や金持ちぐらいらしい。


 2人と魔法のゲーム盤を囲うように見ていた観客たちも喜んでいた。


 普通、そんなもの見る機会なんてないからね。


「それでは試合を始めてください」


 サラの先手番で試合が始まった。


「7の6にいる歩兵よ、前に歩みをすすめなさい」


 サラが指示を出すと、ホログラムの歩兵が動いた。


 実際に槍と盾を持ちながら動くから臨場感があるな。



 その後も手番が進んで行き


「魔法使いよ、敵の魔法使いを討ち取りなさい!!」


 ハンナの魔法使いが相手の魔法使いに対して雷のような攻撃を放った。


 その衝撃でサラの魔法使いは消えてしまう。


 それと同時に、ハンナの盤の横に青色の魔法使いが一体膝を着いた状態で待機をしていた。


 取った駒を使えることから、こんな演出になっているんだろうな。


「騎士よ、魔法使いの敵を討ちなさい」


 サラのナイトで魔法使いを討ち取った。角換わりのような展開になったな。



 その後も取った取られたの展開が続いていく。


 2人ともめちゃくちゃレベルが高い。


「2人ともどこまで考えているんだろう……」


 横でナイジェル君が1手打つたびに唸っている。


 勉強になっているんだろうな。


 サラは冷静に打っていくのに対して、ハンナは自分の駒を鼓舞するように情熱的に指示を出す。まるで戦場の軍師そのものだ。


 ハンナが実際に戦場にいたらこんな感じだったんだろうな。


 まあ、行ってほしくないけどね。平和が一番だ。



 その後も試合は続いていき、ついにサラの歩兵がハンナの王様に向かって剣を突きつけたところで詰みとなった。


 サラの優勝だ。


「「ありがとうございました」」


 2人が挨拶をすると、会場から拍手が沸き起こった。


 見ごたえのある試合だったよ。



「続いて表彰式に移りたいと思います」


 エマのアナウンスで表彰式が執り行われた。


「優勝はサラさんです。おめでとうございます」


 拍手の中、サラに優勝のミニトロフィーと無料券が渡される。


 サラも満面の笑みだ。


「続いて準優勝はハンナさんです」


 ハンナにもトロフィーと無料券が手渡された。


 悔しそうだったけど、拍手が起こると笑顔になる。


「続いて同率3位の表彰です。ナイジェルくんとセロルドさん……」


 そう言ったエマの表情が固まった。


 2人が前に出てきたのだが、その時セレド様が眼鏡を外していた。


「あれセレド様じゃないか?」

「本当だ!カッコいい!」


 セレド様が黄色い声援に笑顔で手を振る。


 ……いや、今まで隠してきた意味よ。


 というか、もしかしたらこれを狙っていたのかもしれないな。


 横にいるナイジェル君がガチガチに緊張していて少しかわいそうだったよ。



 ーーーーー



 こうして、最後にひと騒ぎがあったものの無事にオブリナの大会を終えることが出来た。


 後片付けも済ませた後


「サラの優勝、そしてハンナの準優勝おめでとう!」


 2人に俺たちから改めて拍手を送る。


 2人とも照れ臭そうに笑っているよ。


「これでサート商会はオブリナに強いことが分かったっすね」


 カインが冗談でそんなことを言う。


 こんな風に、ソルーン・バーガーでイベントをやるのは初めてだったから、とても楽しく感じられた。


 また大会を開くのも面白いし、参加できなかったメンバーもいるわけだから、他のゲームの大会をやるのもありだな。


 なんなら元の世界の方のゲームを輸入してもいいわけだからね。


 それとは別に、今度はメンバーだけのイベントを企画するのもやってみたいと思えた。


 仲間内だけで騒ぐのもきっと面白いはずだ。



 今回のオブリナ大会は色々と収穫のあるものとなった。

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