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第104話 作ってみました

 2週間後、ドルホフさんからケーキ工房が完成したと連絡が入った。


 俺、サラ、クトルの3人でその場所に向かう。


 工房の前には待ち合わせをしていたドルホフさんが待っていてくれた。


「これが工房の鍵だ」


 ドルホフさんから鍵を受け取る。


「せっかくだし、クトルに開けてもらおうか」


「いいんですか?」


 クトルが遠慮する。


「クトルが一番使うことになるからね」


「そういうことなら」


 クトルは俺から鍵を受けとると、入り口のカギを開け中に入った。


 それに続いて俺も中へと入る。


 スライド式のドアを開けて中へと入ると、まず8帖ほどの空間があった。


 もし、将来店舗化する時にはここをお客さんの入るスペースに改装する予定だ。


 それまでは休憩スペースとして使おう。


 奥に扉があったので中に入ると


「おお!」


 20帖ほどの調理スペースがあった。石、と言っても大理石とかではないが敷き詰められていて清潔感がある。


 中央には作業台、壁の方にはオーブンと冷蔵庫が設置されていた。


「後はリュウが設置するんだろ?」


「はい」


 俺は3台屋台を出すと、流し台、コンロ、あと収納魔法用の屋台を設置する。


 これで完成だ。


「これが我の領域に……」


 クトルが感激する。


「何か気になるところがあったら遠慮なく言ってくれ。すぐに対処しよう」


「はい、ありがとうございました」


 そう言い残すとドルホフさんは去っていった。


 ドルホフさんはほんといい仕事をしてくれるよ。



「そうだ、クトルに伝えたいことが」


「何ですか?」


「クトルをこのケーキ工房の責任者に任命しようと思っている」


 ケーキ作りを担当するクトルに任せるのが一番いいだろう。


「!?我の命に代えてもこの工房を守り抜きます」


「うん、ありがたいけど。命はかけなくていいからね」


 まあ、やる気十分なのは伝わってきた。



 よし、ケーキプロジェクトを再開しよう。


 ーーーーー


 次の日、俺、クトル、それとサポートをしてくれるマノンと一緒にケーキ工房の厨房に立つ。


「最初に、小さいサイズのケーキを作ろうか」


 初めから大きなサイズの物を作っても難しいから、まずは調理魔法で作れるものと同じ3号サイズの物を作ろうと思う。


 実は子供の頃、クリスマスには家族で手作りでケーキを作っていた。


 だからやり方はなんとなくだが覚えている。


「まず、材料を準備しよう」


 収納魔法から小麦粉、卵、砂糖、水、油を取り出す。


「最後にこれだな」


 俺は少量の白い粉を取り出した。


「これは?」


 クトルが興味深そうに見てくる。


「これはベーキングパウダーって言う粉だ」


「べーきんぐぱうだー???」


「ケーキを作るのに大切な素材なんだ」


 このベーキングパウダーがあるとケーキが綺麗に膨らむ。


 前まではなかったけど、ソルーンから帰ってきた後、ステータス欄にあるのを発見した。


 だから今回セレド様の依頼を受けられるって考えたんだよね。


 まあ、ここからが大変なんだけどな。




 一つ目の工程として、卵白をメレンゲにするところから始めることにした。


「そんなにかき混ぜて意味があるんですか?」


 横から見ていたクトルが不思議そうな顔をする。


「リュウさん交代します」


「ありがとう」


 クトルに卵白のボウルを渡す。


 やっぱりメレンゲを作るのは重労働だな。


 その後、マノンも含めて交代で混ぜていく。


「本当に泡立ってきました」


 クトルが泡立ったメレンゲを見て驚いている。


 確かにこの世界でメレンゲを使っているところってみたことないもんな。


 メレンゲが泡立ったら、次に卵黄も泡立つまでかき混ぜていく。


「俺がかき混ぜるから粉を少しずつ入れてくれ」


 卵黄に粉を入れながらかき混ぜていく。


 そこに卵白を分けながら加えていったら、ケーキ生地の完成だ。


「これをオーブンで焼こう」


 型に詰めてオーブンで焼いていく。


「おー、膨らんできた膨らんできた」


 中を覗き込むと、中央部分が盛り上がって来ていた。


「中までしっかり温度が上がってます」


 クトルが教えてくれた。


 さすがスキルでサーモグラフィーを使えるだけあるね。


 十分加熱したら、今度は冷蔵庫でケーキを冷やしていく。


 そして


「完成!」


 3号サイズのケーキが出来上がった。


 早速みんなで味見をしようとしたその時



「リュウさんこんにちは!お昼休憩になったのでこっちに遊びに来てみました!」


 突然サラが現れた。


「あ!ケーキの試作品が出来たんですね!私にも味見させてください!」


「……都合が良すぎないか?」


 こんな完成と同時のタイミングで来るなんてあり得るのか?


「いやいやいやいやいや、完全に偶然です」


 サラが首を横にブンブン振る。


 ……怪しい。


 とはいえ、断る理由もないのでみんなで試食することにした。


「うん、うまくいったな」


 調理魔法で作るよりも若干ふっくらさが足りないような気もするが、最初にしては上々だろう。


「美味しいです!わざわざ来た意味がありました」


 サラも美味しそうに食べている。


 クトルもマノンも満足そうだ。



 次は大きなサイズを作っていこう。

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