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第98話 パティシエール・クトル

 2日後、クトルと一緒に厨房に立つ。


 今日はケーキ作り講座を開講するつもりだ。


 メンバーが増えてくれたおかげで、日中にもこういったことに時間が割けるようになってきた。


 ありがたいことだな。


 まず、クトルにこの前作ったショートケーキの作り方をレクチャーする。


 この作り方自体はシンプルなものだから、教えるのはそれほど難しくなかった。


「これなら我でも問題なさそうです」


 さすが料理人なこともあって覚えるのが早い。


 1回作っただけで完全に覚えていたよ。


「あとは、使う果物を変えてみたり、クリームに使う砂糖の種類を変えてみたりして」


 そこにオリジナリティが出るからね。


「さらに至高なものに出来るよう努力します」


 クトルもやる気十分だ。


「あと、ケーキと言えばクリームの飾りつけだけど……」


 問題は絞る道具がないことだ。


 ビニール袋は布で代用出来るけど、口の部分の金属が無いからなぁ。


「よし、作りに行くか。クトル少し待ってて」


 思い立ったらすぐに行動しよう。


 ーーーーー


 俺は店を出て商店街にある金物屋へと向かった。


「いらっしゃい」


「すいません、作ってもらいたいものがあるんですが」


 俺は口金の形状を説明する。


「何に使うかはよく分からないが、それだったらすぐに作ってやるよ」


 そう言うと、金物屋のおじさんは小さな金属の板を取り出すと、金槌等を使いながらどんどん形を作っていく。


 金属とは思えないぐらい簡単に曲がっていたから、多分スキルが使われているのかな。


 ものの数分で口金が完成した。


 値段は500クローネと値段はそんなにかからなかったのは良かったな。


 俺は完成したものを持って再び店に戻ってくる。


「会長、それは?」


 クトルが興味深そうに見てくる。


「これを使ってケーキにクリームを加えるんだ」


 俺は口金をはめた布にクリームを詰めると、ケーキの上にクリームを絞る。


 星形の口金にしてもらったので、くるくる回さなくても十分綺麗なものが出来上がる。


 小さめに作ってもらったから、3号のケーキの上でも十分使えるものになっていると思う。


「今見た感じでやってみると綺麗になるよ。使い方はクトルのセンスに任せる」


「これほどまで美麗なものを我が作れるなんて……頑張ります!」


 さて、クリームの絞り方も教えたし、俺が知ってる知識は大体教えたかな。


 こうして、パティシエール・クトルが誕生した。


 基本は教えることが出来たから、ここからは自分で改良して頑張ってみて欲しい。



 ーーーーー



 ある日、モードンさんが買いにやってきた。


「いらっしゃいませ。メニューはどうしますか?」


「フルーツバーガーを1つください」


「かしこまりました」


 会計を済ませると俺は注文の品をモードンさんに手渡す。


「ありがとうございます。フルーツバーガーはソフィア様がとても気に入っておりまして」


「それは嬉しいです」


 ソフィア様はセレド様の妹だ。


 そんな人からお墨付きをもらえるのはありがたいことだな。


 あとでクトルにも伝えておこう。


「あの、フルーツバーガーを気に入っていただけているのなら、ご紹介したい商品があるのですが」


「ほう。それはどのような商品なのですか?」


「ケーキというものです」


 フルーツバーガーを更に改良したもので、1ホール4000クローネと値は張るが味は保証するということを説明した。


「この商品は完全予約制なので、是非ソフィア様にお伝えいただけませんか?」


「分かりました。ソフィア様も興味をお持ちになると思うのでお話してみます」


 こうして、モードンさんはフルーツバーガーを持って帰っていった。


 いい返事を期待しよう。



 数日後、モードンさんからケーキを1つ予約したいという連絡が入った。


 早速クトルに報告しに行く。


「クトル、ケーキの注文が入ったぞ!」


「本当ですか!?」


 クトルが俺の話に飛びついた。


「相手はソフィア様だ」


「ソフィア様!?」


 クトルが驚く。


「ああ。モードンさんが言うにはソフィア様はフルーツバーガーがお気に入りらしく、今回のケーキも楽しみにしているみたいだよ」


「それを聞くと身が引き締まる思いです」


 クトルが緊張した面持ちになる。


「予約は1週間後になったからよろしく頼むね」


「はい!最高のケーキを作ります!」


 それからクトルは、ソフィア様へケーキを作るために色々試行錯誤をしていた。


 使うフルーツや砂糖の分量とかは最適解を見つけたらしいけど、クリームのデザインについてはまだ納得がいってないらしい。


 6日後ついに


「会長!納得のいくものが出来ました!」


「おめでとう!」


 たまに作業を横から見てたけど、動きが洗練されていたしすっかりパティシエールになっていた。


「見せてもらってもいいかな?」


「はい!」


 クトルがケーキを持ってくる。


「おおーー!!」


 持ってきたケーキは都内のおしゃれなケーキ屋で見るものと遜色ない物だった。


 ケーキの上には小さくカットしたイチゴとメロンがいいバランスでトッピングされている。


 その間を縫うように繊細なクリームのデコレ―ジョンがされていた。


 デコレーションも派手になりすぎないように空きをつくりながら上品に配置されている。


 小さい3号のケーキの中でここまで表現されているのは見事としか言いようがない。


 これはソフィア様に見せるのが楽しみだ。

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