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第97話 高すぎました

「よし、完成!」


 ショートケーキが完成した。


 クリームの絞りとかがなかったからデザインはシンプルなものだが、まずまずの出来だと思う。


「綺麗……」

 クトルがうっとりとした表情でケーキを見つめている。


「もはや芸術の域です」


 サラも大きく目を見開いていた。


「それじゃあ試食してみようか」


 初めて作ったケーキだからな。味はマズくなりようがないけど、確認はしたい。


 俺はケーキを4等分して、その場にいた3人に配った。


 4人にしては量が少ないが、試食だからね。


「カットしてもいいっすね」


 カインが側面を興味深そうに眺める。


 俺もイチゴとクリームの断面は美味しそうに見えるから好きだ。


「いただきます」


 俺はフォークで先端をカットして一口食べた。


「うん、最高」


 久しぶりに食べたケーキだからか、めちゃくちゃ美味い。


 三温糖にしたおかげで生クリームをたっぷり使ってもさっぱりと食べられる。


 あと、イチゴと生クリームの相性が良すぎる。


 イチゴの酸味を生クリームが優しく包み込んでくれるから完璧だ。



「我が人生でこれほど我の心を満たしてくれた食べ物はないです……」


 クトルはほっぺをおさえながら感想を言う。


「自分もこんな料理があることを知ることが出来て嬉しいっす」


 カインも満足そうだ。


「これふぁ、さいふぉふすふぃます」


 サラは一口で食べたのか、口の中がケーキでいっぱいだった。


 うん、何を言っているかわからないが喜んでくれているのは確かだな。


「これもう一つ作ってくれませんか?」


 サラがおねだりしてくる。


「今日はもう遅いからまた今度な」


 さすがに今からもう一つ作るのは時間がかかるし止めておこう。



「満足してもらったと思うんだけど、これも新メニューに入れるのはどうかな?」


 みんなの反応を見る限り大ヒット間違いなしだと思う。


「是非!!」

「俺も賛成っす!」


 クトルとカインは賛成してくれた。


「サラはどう?」


「私は……店頭で売るのは反対します」


 予想外の返事が返ってきた。


「え!?どうして?」


 サラもあんなに気に入ってたのに、なんなら2つ目のケーキを作ってくれって言ってたのに。


「リュウさん、このケーキと言うものをいくらで売ろうと思ってます?」


 サラが俺に質問してきた。


「うーん、2000クローネ?それか高くして2500クローネってところだと思う」


 3号のケーキは直径にすると9㎝のケーキだ。大体1人前から2人前の大きさになる。


 デパートで2000円前後で売られているのはみたことがあるから、それより少し高めにって感じかな。


 ただ、これだとメニューとして高すぎるから、半分にするとかしようと思う。


「そういうと思ってました。でも、これを売るならこの2分の1の大きさで2000クローネですね」


「え!?2000クローネ!?」


 このひと切れにそんなに値段取るの!?


 つまりこの1ホールに4000クローネってことか。


「当たり前です!さっきリュウさん何のためらいもなく砂糖を入れてましたけど高いんですからね!」


 この世界だと砂糖は高級品になる。甘い物といったら普通の人は果物だ。


 だからこの世界ではお菓子とそのものがかなり高価な部類になる。


 それに種類も少なくて、クッキーぐらいだな。


 その結果、甘さ控えめのスポンジケーキ程度なら問題ないらしいが、ケーキまでくると値段が大変なことになるらしい。


 まあ、砂糖だけじゃなくイチゴも使ったからな。


 俺の予想が甘かった。


 ちなみに塩はエルランド国の政策として、海水から大量に生産している。


 そのため、内陸のソルーンでは若干高くなるものの、気にするような値段ではない。


「ほんとサート商会にいると感覚が麻痺してきます」


 サラがやれやれというように首を振る。悪かったな。


「とにかく、ハンバーガーと比べてもこのケーキを安い値段で売るのは供給バランスに対する被害が大きすぎます。かなり高い値段で売らなければなりません」


「だから、反対ってことか」


「はい、2000クローネの商品をソルーン・バーガーで売るわけには行きませんから」


 確かに値段が浮きすぎている気がする。


 4分の1でも1000クローネ。でもこれは大きさ的に食べた気がしないからな。


 止めておいた方がいいかもしれない。


「わかった、それなら諦めよう」


 こういう時のサラの判断は正しいからね。


「いえ、諦めるわけではないです。こんな美味しい物私ももっと食べたい……じゃなくてもっと他の人に食べて欲しいですから」


「本音が出たな」


 サラのそういうところ嫌いじゃないよ。


「そ……それは置いておいて。このケーキは予約販売にするのはどうでしょうか?」


「予約販売か」


 販売個数を絞って、思いっきり高級路線に舵を切るというものだ。


「それならば、流通的にも問題ありません」


 サラの作戦としては、スイーツ・バーガーを頼む人に対して裏メニュー的な感じで提案するというものだ。


 もちろん、誰構わず売り込むわけではないらしい。


「了解した。売り方はそんな感じで行こう。2人もそれでいいかな?」


「「はい!(うっす!)」」


 クトルもカインも納得してくれた。


 経営方針についてはサラの判断に任せるのが一番いいからね。


「あの、会長。もしよかったら、このケーキ作りは我に任せてくれませんか?」


「クトルが?」


「はい!このケーキを世の中に広めることこそが我の使命だと感じました」


 クトルが俺の事を熱い目で見つめてくる。


「わかった、そこまで言うのならお願いしよう」


 やりたいって言っている人に任せるのが一番いいからね。


「ありがとうございます!」


 クトルが笑顔になる。


「それじゃ、また今度空いているときに改めて作り方を教えるよ」


 今日は遅いからね。また後日にしよう。

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