俺かコイツかはたまた……
「なぁ雅樹」
「何だ昴?」
夕焼けに染まった海岸で俺と親友の雅樹は海パン姿でポツリと佇んでいる。辺りには人の気配は全く無い。
「もうすぐ日が沈んでしまう」
「そうだな、なんて一日は早く終わってしまうんだろうな」
「あぁ、だが俺が言いたいのはそうじゃないんだ」
俺はゆっくりと立ち上がる。海に沈んでゆく太陽を眺めながら雅樹が言葉を発するのを待つ。
「解っているさ、お前が何を悩んでいて、何がいいたいかぐらい」
「さすが俺の親友だ」
雅樹も立ち上がる。その顔は何故か輝き世紀に満ち溢れている。
「あの太陽に向かって泳ぎたいんだろう?」
「あぁ、一緒にあの燦燦と輝く太陽の下へ――って違うわボケ!」
海へ駆け出そうとした雅樹にハイキックをお見舞いする。雅樹は文句を言い足さそうな顔をしているが無視だ。
「俺が悩んでるのはな」
「――彼女が欲しいぃぃぃぃ!」
ゴツッ、ドカッ、不真面目な親友を俺は殴り蹴り飛ばす。俺が言いたいのは、いやまぁそれも大事な悩み事だけど、
――どうして
「無人島に居るんだぁぁぁぁ!」
高校の夏休みを利用して俺と雅樹を含む知り合い5名(男三人、女二人)と旅行に来ていたはずなのに、いつの間にか俺と雅樹しか居ないではないか。
「そりゃ遭難しちまったからだろう」
「ちくしょう………神は何てベタな展開を俺に与えたんだ」
「いいや、ベタじゃないぞ」
「…………何処がだ?」
「こういう展開は普通、男女ペアだろう?」
「――いいや、男同士も結構あるんじゃないか?」
ダメだ、まず二人ペアってのがアウトだ。せめて大人数なら脱出するために色々する気になったのに、むさい男とじゃ手を取り合って脱出どころか生存する気にすらなれない――逃げ出したくはなるが。
「ふむふむ、じゃぁオチはどんな感じだと思う?」
「アレじゃないか? 友情が深まった感じの雰囲気にしといて、どっちか一人しか脱出できませんで醜い争いをするみたいな」
「それはお前の固定概念かもしれないしベタかもしれないな」
どっちなんだよと突っ込むが二人しか居ないのだから視野が狭くて解らない。
二人とも助からないってオチは無いよな?
「まぁもしもそんなオチが来ても俺はお前を見捨てたりしないぜ」
「そういった奴が颯爽と見捨てていくんだよ雅樹」
もちろん、そんな状況になったら雅樹なんて見捨てるなんてこれっぽっちも……………ノーコメントだ。
「まず俺達助かるのか?」
「智紀達が気づいて助けに来てくれるだろ」
「そ……そうだよな、大丈夫だよな」
「それよりもさっきのオチ、もし本当に会っても見捨てるんじゃねぞ」
「お……お前こそ、約束だからな!」
こいつかなり疑ってやがる、大丈夫……そんなこと実際に起こってたまるか。
もし神が許しても俺がそんなこと許さない。無駄にごついこいつと争ったら確実に殺られる。
………大丈夫だよな?
心配しながら救助を暫く待っていると
「おい! 見ろよあれ、小さいがボートがこっちに向かってきてないか?」
「おぉ! 本当だでかした雅樹!」
でも何か小さくないか? もしかして………予測しうる最悪のケースか?
俺はそーと雅樹の方を向いてみる、どうやら雅樹も最悪のケースを予想したらしい。眼が……眼が俺を殺る気だ。
おお! 神よ、何故俺にそこまで詰めたいのですか? ツンですか? ツンなのですか? デレはいつきますか!?
「おーい、雅樹ー、昴ー助けに来てやったぞー」
「ありがとう智紀!」
ボートの上には智紀と女の子二人が乗っている。
「だけど、このボート小さくてな、後男一人しか乗れそうに無いんだ、でも大丈夫、後で――女の子とたっぷり遊んだ後に迎えに着てやるから!」
ヤバイ! このままでは女の子との楽しいひと時が消えてしまう! 何のために旅行に着たのか解らなくなってしまう。
「まぁこの子達は俺様がかわいがってやるからお前ら二人とも残るってのもありだけどな!」
―――その瞬間俺は閃いた、後男一人しか乗れない、そう此処には一人置いていけば事足りるってことだ。
俺はゆっくりと雅樹の方を向く、どうやら親友も俺と同じ考えのようだ。
「残る奴が決まったからこっちにボートを寄せてくれ!」
俺が智紀に向かって叫ぶ、愉快そうにこちらにボートを寄せてくる智紀。そして近くまで来た瞬間。
『――残るのはてめえだとものりぃぃぃ!』
俺と雅樹は絶妙なコンビネーションで智紀をボートから海へ落とし颯爽と乗り込む。そして即効で漕いで行く。
「おい! 置いてかないでくれよぉぉぉ!」
「大丈夫だ智紀! 女の子とイチャイチャした後に迎えに着てやるから!」
「じゃーな智紀! 二人のうち一人が取り残されるなんてオチは見事に回避してやったぜ!」
まんざらでも無さそうな女の子二人を連れて俺と雅樹はボートを漕いで行った。
背後から聞こえるむなしい男の叫び声を聞きながら。




