翔龍騎伝 ドラゴン・ライダー! 第3章 キル・ラルの遺跡 Act15
心の底で願うだけなら・・・
声に出してしまえば罪になるのなら・・・
僕は・・・この世界へ来てしまった意味を知る事になった。
「僕の願いは・・・本当に求めていたのは。
僕の一番大事な人に愛されているのかを知りたかったんだ!」
サエの前で思いっきり大声で言ってしまった。
想いがはち切れんばかりに膨れ上がるのを停めれなくなった。
「僕も現実世界で、酷い目に遭った。
僕達家族に向けられ続ける蔑んだ目、姉さんと僕に向けられる憐みの眼。
みんな皆、好奇の目と嘲りの眼で観ているんだ。
父さんの研究していた事に対して馬鹿にしたような目で見ていたんだ。
父さんが事故で亡くなってからは、僕達家族みんなを虐めだした。
どれだけ僕達が苦しんでも、抵抗しても・・・辞めてはくれなかった。
だけど、リュートだけは僕達を庇ってくれ続けた。
いつも、いつでも、どこででも・・・」
ミコの眼から涙が溢れ出して来る。
思い出の中で、苛めを繰り返す学生たちの前に立ち塞がる幼馴染の姿。
怪我を厭わずに立ち向かう兄の様にも思える男の子。
「いつの間にか、僕の中でリュートに対する想いが変わって行った。
兄の様に慕う心が・・・いつの間にか一番大切な人の傍に居続けたいと。
姉さんと同級生のリュートに対する想いが、憧れから変わったんだ」
もう、そこまで話せば・・・
ミコの想い人が誰なのかは瞭然。
「姉さんにリュートが想いを抱いてるのなら・・・諦めなきゃ。
現実世界ではそう考えていたんだ、それが当たり前だと思っていた。
だけど、エクセリアに来て。
この身体になってからおかしくなってきたんだ、戸惑いが無くなるみたいに。
まるで当たり前の様にリュートを頼って、リュートを求めて・・・」
自分の身体、つまり女の子になった自分を抱きしめ、ミコが悶えるように告げるのは。
「僕は・・・ううん、ミコは・・・リュートが好き。
姉さんより、リュートの方が好きなんだ!」
仕舞い込んでいた心の叫びを声に出してしまった。
現実世界では言える筈もなかった男の子として言ってはならない事を。
「ごめんなさいリュート。
嫌になっただろ?こんな変態みたいな幼馴染を。
毛嫌いされるのが怖くてずっと言えなかったんだ。
だけど、エクセリアに召喚される時に願いを問い質されたんだ。
だから・・・リュートが好きな人の姿になりたいって・・・
姉さんの事がきっと好きなんだろうって想っちゃったから・・・」
ミコの頬を涙が伝う。
とうとう、打ち明けてしまったのだと。
もう、現実世界へは帰れなくなったと・・・サエと同じように。
「あらら・・・アンタも何だか深刻な話をしたわねぇ?
でも、ミコが想った事を下僕はどう受け止めるのかしらね?」
男の娘サエが意味有り気にミコに言った。
「独りで勝手に思い込んでるようだけど?
リュートはどう思ってるのか確かめないの?」
ビクンっとミコの身体が撥ねる。
一度も話した事さえなかった、話す事だけでも罪になると思っていたから。
それに、想いを打ち明けてしまえばリュートとの仲は潰え去ると思い込んでいたから。
「そもそもよ?
アンタを護る男なんだよ?アンタがどう思っているかなんて知っていたんじゃないの?」
他人の恋事情にも長けているのか。
それとも自分が禁断の恋をしていたからなのか?
「別に男同士が恋に堕ちたって可笑しいとは思わないからアタシは。
恋に性別なんて関係ないわ、それこそ時代錯誤って奴よ。
いいえ、昔から同性愛者なんて腐る程あったのよ?
信長や謙信の話・・・知らないの?」
そんな戦国時代の話を持ち出されても困るのだが。
サエが言いたい事は何と無くだが解る。
「でも・・・リュートがどう思ってるのかが。
美呼姉さんの恋人なんだろうし・・・僕なんかの出る幕じゃないんだ」
「確かめたの?」
またもやミコの身体が撥ねる。
確かに、一度も美呼姉には訊いた事はない。
ましてやリュートに訊くなんて、出来っこなかった。
「そんなの。
二人の態度を観てれば・・・あんなに仲良く話しているんだもん」
確かめる必要も無いと思っていた。
だが、サエには思いつく事があったようで。
「ミコ・・・アンタやっぱ。
背中が煤けてるわね!いいえ、心の中が燻ぶっちゃってるのね?」
「・・・は・・・い?」
意味が納得出来ずに、訊き返したつもりだったのだが。
「ミコ、ここまで来たら正式に告白すれば良いだけの事よ。
狐モドキにお出ましして貰って、はっきりと白黒着けるのよ!」
きっぱり、赤の他人から言われるとは思いもしなかったのだが。
「それでアンタの心も晴れる・・・まぁ、失恋も含めてね!」
悪魔の様な言葉でサエが言い切った。
損なぁーっ、とは思うのだが。サエの言った事にも道理は有る。
「うじうじ異世界で悩むよりは、世界が違う分だけ良いでしょ?
例え想いが通じなくっても、魔王を倒せれば帰還できるんでしょ?
アッチに戻れば、こっちの記憶なんて残ってないかもしれないんだから!」
確かにそうかもしれないと思った。
リュートがどう思っているのか。
判らずにこのまま異世界で暮らしていくよりは、今いっその事打ち明けてしまうのも良いかもしれない。
そう考えるに至ったミコが、思い切って告白しようと考えを改めた。
「そ、そうだよね。うじうじしてたって何も変わらないんだもんね」
女の子の身体になってでも求めていた。
TSした事に因って何かが変えられるような気がしていたのも事実。
「僕の願いは・・・果たされるのかな?」
金色の腕輪からリュートを召喚した。
腕輪から出て来たリュートは無言でミコの前に丸まっている。
モフモフの狐モドキを腕の中に抱き寄せて、
「リュート、聞いて欲しい事があるんだ。
あの・・・あのね、僕の事をどう思っているのか知りたいんだ」
怖々(こわごわ)訊くミコ。
「じ、実は・・・僕はね、あの・・・その・・・」
いざ、告白するとなると。
勇気が足りなくなり、話し出す事も出来なくなってしまう。
そんなミコの姿をじれったそうに観ていたサエが。
「あんなぁ、ミコがお前の事を愛してるんだってさ?」
「ぎゃあああぁっ?!サエさんっ、何て事をっ?!」
跳び上がって悲鳴を上げるミコに、
「アンタがうじうじしてるからよ!じれったいったらありゃしない!」
そういったサエが狐モドキに指差ししながら言い放つ。
「リュート!どうなのよ?!
アンタは可愛い女の子になってまで告白したミコに、
どんな気持ちで接しているのか・・・はっきり言いなさいよね!」
サエ・・・それは強制的に好きだと言えって言ってるのと同じだぞ?
・・・・・・
返事がない・・・・
・・・・・
・・・
・・
唯の・・・狐モドキのようだ。
「あれ?リュート?・・・気絶してる?」
ミコが抱きしめた狐モドキに気が付いた。
眼を廻して悶絶して・・・気を失ってるみたいなのだが。
「あああああっ?!なんで?この糞野郎はっ?!」
男の娘が悪態を吐く。
抱きしめたミコは、何故だかほっとしたような心になっていた。
「あははっ、これじゃあ告白タイムなんて出来ないよ?」
ため息混ざりでサエに答えるミコに、
「なんて・・・なんてふざけた奴なのっ!この肝心な時に!」
サエが怒りまくる傍で、ミコは思っていた。
なぜ、リュートは気絶してしまっていたのかを。
ー リュートには聞こえていたんだね。
サエさんと僕が話し合っていた事が。
だから・・・気絶してたんだろ?
嫌だったのかな?それとも・・・嬉し過ぎたのかな?
答えはいつかは分るだろう。
リュートが目覚めれば。
リュートがぎこちない仕草で接して来れば・・・
リュートが今迄通り護ってくれるのなら・・・
そして・・・今迄以上に護ろうとしてくれるのならば。
ミコは抱きしめた狐モドキに、そっと心の中で呟くのだった。
<ありがとう・・・リュート・・・>
男の娘が呆れ果てたような顔でミコと下僕を観て、
「これだから・・・男って解かんないのよ・・・」
もろ手を挙げて、呟くのだった・・・遺跡の中で。
ミコ「なんて・・・こと・・・Orz」
さば・「残念だったか?」
ミコ「損な事を言ってるんじゃないっ!」
さば・「?」
ミコ「なんなんだよっ?!こんなかっこうさせて!」
さば・「とある方の小説に呼ばれてるんでな?ミコを抜擢したのだ!」
ミコ「なんでぇ~っ?<さば>なんだよぉ?!」
・・・こんな感じでどうでしょ?
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ファザコン警部補とシスコン巡査の愉快な非日常:その2~あなたの恨み、必ず晴らしてみせます~法で裁けぬ悪を裁くは黒い猫?!~決戦の地は世羅高原!!元自衛官VS特殊捜査班~ダリアの花言葉と黒い葉書の謎!!
是非一度ご確認くださいませ・・・さば・の運命や如何に?!
さて・・・
告白が巧くいかなかったけど、気にしてちゃぁ駄目だよね?
遺跡に来た目的を果さなきゃ!
次回 第3章 キル・ラルの遺跡 Act16
魔剣を見つけるのが目的だった筈でしょ?何処にあるのか誰か知らないかなぁ?・・・って。アレは?!




