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翔龍騎伝 ドラゴン・ライダー! 第3章 キル・ラルの遺跡 Act14

遂に倒したと思ったら・・・


なんだってぇ?!な、ことに・・・

黒き魔法書に因って召喚された事実。

古文書を手にしていた意味が、何を教えているというのか。


見詰めてくるサエが言いたい事とは?


「それって・・・僕も何かを望んでいたって事?」


男の娘になってでも求めているというサエに訊いてみた。


「あなたの事は知らないけど、アタシは望んでこの世界へ来た。

 現実世界では果たせそうにもない願いを叶える為に・・・ね」


ふいっと顔を背けたサエが小声で答える。


「アッチの世界じゃ願っても叶えられるなんて思えなかったから。

 どんな努力も空しく潰えるような現実に嫌気が差していたからよ」


サエはエクセリアの世界で王になる事を願っていたと聞いた。

エクセリアで果たそうとしている事と、現実世界で果たそうとしていた事の違いは同じなのか?


ミコにはどう考えても同じとは思えなかった。

だから、訊いてみる事にした。


「サエさんの望みって・・・現実世界で求めても無理な話だったの?

 エクセリアで王になれば叶えられるような事だったの?」


少なくても男になってまで叶えたいと願うような話だったのか。

王となれば達成できるような願いなのかと・・・訊いたのだが。


「ミコ・・・アンタはどうなのよ?

 アッチの世界で何を願っていたの?何を求めていたというの?

 エクセリアに召喚される時に何を求めていたのよ?」


逆に訊き返されて、ミコは戸惑う。

無理やりミレニアに因って召喚されただけだと思っていたのだが。


「それは・・・何も・・・求めちゃいない・・・」


「嘘よ。アンタにも願いがあったから、召喚が為された。

 黒き魔法書があなたの元に在った事が何よりの証拠。

 あの古びた魔法書は心に強き願いを持つ者の元にしか現れない。

 そして、願いを叶えたい想いが強ければ強い程・・・転移出来るようになる。

 アタシはパンサーの元へ転移した時に教えられたわ」


サエは自分に起きた出来事を話し出す。

心の中に秘められていた、現実世界での願いを曝け出すように。


「アタシは元は高校生だった。

 なに不自由なく生きていくんだと思っていた・・・あの日までは。

 でも、突然今迄過ごしていた日常が崩れ去って行ったのよ。

 両親の離婚という出来事に因って・・・ね」


サエの一言に、ミコの身体がビクンと撥ねる。

サエは気が付かないのか、話を続ける。


「母に引き取られたアタシは、転校したの・・・友達もいない見知らぬ学校へと。

 それがアタシの人生をも狂わし始めるきっかけだった。

 転向してから友達もなかなか作れないアタシは・・・孤独だった」


話し続けるサエの傍で、ミコの表情が変わり始めていた。


「アタシは母を・・・父から遠ざけた母親を恨み始めていた。

 孤独感が心にまで闇を造り、やがてそれはあの古文書を引き寄せるまでになった。

 そう・・・現実世界からの逃避。

 いいえ・・・現実世界では求めても手に出来ない事に気が付いたから。

 アタシの孤独を満たしてくれるモノを手にしたくなったから」


サエは震える手を握り締めて話し続ける。

その姿は何かを求め、何かに復讐を果たそうとしているかのようにも思えた。


「アタシは願ったの、異世界へ転移する事を。

 現実では果たせようもない想いを遂げる為、アタシから奪い去られてしまった愛を掴み取る為。

 お父さんの身体になって、愛するモノをみんな手にする為に・・・」


サエが望んだのは、父親への想いなのか。

両親が離婚してしまい、父と離ればなれになった。

いつしか想いは募り、いつの間にか呪うまでになったのか。


黒き魔法書は、想いを募らせた者の前に現れた。


「そんな時よ、あの古文書を見つけたのは。

 いいえ、見つけたんじゃない。

 古文書の方から現れたのよ、アタシの前に」


サエが思い出して手を差し出し、古文書を掴む様な仕草をする。


「魔法の古文書には開けてはならない箇所があったの。

 龍と龍に跨る戦士が描かれた部分。

 あの部分に眼を停めた者は、いつの間にか引き込まれてしまうの。

 この・・・エクセリアと呼ばれる異世界に。

 エクセリアという人の心を喰らう悪魔の世界へと・・・」


サエがいう事はミコにも分かった。

自分もあの挿絵を観てしまったから。

それから・・・気が付いている事があった。


「サエさん、僕にも分かる事があるんだ。

 召喚されて初めて戦った時。

 レッドアイが最期に叫んだんだ、堕ちた闇に・・・どうしてなんだって」


果たされない願いに、絶望の叫びをあげた・・・レッドアイの声が耳に残っていた。

異世界へ転移してまでも願ったというのに、彼女は消え去った。


「どうしてだって言われてもねぇ、答えは簡単な事なのに。

 願いがあやふやだっただけの事でしょ?

 レッドアイと呼ばれた翔龍騎ドラゴンライダーは、果たそうと努力しなかっただけの事じゃないの?」


いとも簡単にサエが言い切ったので、ミコの方が驚く。


「努力すれば・・・魔王になれちゃうの?

 レッドアイは闇の力を持つ者として君臨できたって事?」


「そうかもしれない。

 だけど、この世界には魔王を名乗る者が数多く居るって話だよね?

 競争に勝ち残ったのならそうなれたのかもしれない。

 ・・・多分無理だったとは思う、ミコに倒されたくらいなら・・・ね?」


ニヤリと笑ったサエがミコを観て言った。

確かに転移していきなり闘ったミコに倒される位なら、魔王になれるには余程の努力が必要だろう。

その事は誰よりもミコやリュートの方が解っていただろうが。


「じゃあ、努力するだけでは願いは果たせないって事にもなる・・・

 エクセリアでは願いを果たせた人って、元の世界へ帰れるんじゃないの?

 果たせられた人って、過去に居たの?」


続けてミコが問いかける。

だが、サエは静かに首を振ると。


「アタシにも教えられるだけの知識を持ってる訳じゃないからね。

 パンサーに聞いた事はそれくらいの事だけ。

 アタシはこの世界から帰る気はないって事だけは言っておくけどね」


サエは現実世界に未練は無いというのだろうか。

それとも最早帰るべき処さえも喪っているのか。


「ミコ、アンタにだけ。

 アンタだから教えてあげる・・・アタシが男の娘になっている理由を。

 この身体はお父さんのモノになってるんだ・・・アタシが求めた人の姿に・・・だよ?」


耳を疑ってしまいそうになりながら、サエの言った意味に目を丸くした。

サエは・・・父親を愛していたのだという。

親子愛なのか・・・それとも?


ミコが黙り込んで見詰めている姿に、苦笑いを浮かべてサエが言ったのは。

想像もしていなかった現実世界の闇。


「ミコ、アンタにだけだからね、教えるのは。

 異世界に転移した者同士、秘密も何もないから。

 ・・・アタシ・・・お父さんに抱かれた事があるの・・・この意味判るでしょ?」


解ったけど、内情は想い計れないと思った。


「愛していたのよ、お父さんを。

 お父さんも愛してくれていたんだと思うんだ・・・だから。

 母親はお父さんを奪ってしまった、アタシから。

 告訴すると脅かし、離婚を迫った・・・憎い女!」


サエの声から、本当の事だと知れた。

本当にサエは現実世界で父親を愛し、母を恨んでいるのだと解った。

だから・・・サエは現実世界へ戻ろうとはしないのだろう。

憎い母親の下で過ごすのは、帰れない事よりも遥かに嫌な事なのだろう。


「アタシは女が嫌い。自分があんな自分勝手な女の娘だなんて思いたくもない。

 だから・・・男の娘になったのよ。

 これがアタシの真実・・・アタシがエクセリアに来た理由でもあるのよね!」


最期はいつものあっけらかんとした口調に戻ってミコに教えるのだった。

呆然と観て聞いていたミコに、次はあなたよと言わんばかりに。


「えっと・・・僕?」


見詰められたミコは言い難そうに後退る。


「何よ?人に話すだけ話させといて。

 自分の番になったら貝になっちゃう訳?」


他人の転移理由を聞きたがるサエに、動揺を隠せず慌てるミコが、


「そんな・・・僕は別に聞きたかった訳じゃ・・・」


言い逃れようとしているミコの腕を掴んだサエが。


「男ならっ!イジイジしてないで話しちゃいなさいよ!

 アンタがどうして女の子になってるのか!その訳を話したらどうなのっ?!」


逃がさないと迫って来る。


「だっ、だからぁっ!サエさんには関係ないだろっ!」


迫られたミコが顔を背けた時。


((ダンッ))


押し付けられたミコが、サエに壁ドンを噛まされた!


「ちゃっちゃと・・・言いな?!」


眼が座っているサエに、冷や汗を垂らすミコ。


「あ・・・あのっ、目が怖いんだけど?」


ジトっと見詰めてくるサエが、


「言うの?言わないのなら只じゃおかないから!」


ミコにぐっと迫ると・・・


「ひぃっ?!なっ何を?!」


男の娘サエに迫られる女の子ミコ・・・立場が・・・違う?


「貰っちゃうわよ?それでも言わないというの?」


貰っちゃう?何を・・・って?


「わあぁっ?!言う、言いますからっ!」


唇まで、後数センチにまで寄られたミコが涙目で訴える。


「そう?じゃあ言いなさいよ!」


仰け反る様に顔を逸らして抵抗しているミコの口から漏れ出るのは?


「僕・・・僕が求めていたのは・・・確かにミコ姉さんの事だよ。

 だけどそれは眠り続けている姉さんが心配だから・・・」


最初からその想いは変わらないと言っていた。

病院で眠り続けている姉の事を心配していたのは間違ってはいない。


「アンタ・・・アタシが聴きたい事を答えていないわ。

 アタシが訊いてるのは、ミコの身体が女の子になった訳よ?

 召喚された時に何を求めていたのかを訊いてるのよ!」


食い入るように見つめるサエに、漏れ出たのはミコの願いだったのか。


「僕は・・・あの時。

 古文書に引き込まれてしまう時・・・思ってしまったんだ・・・

 死んじゃうのなら、最期は愛する人に知って欲しいって・・・

 だけど・・・姉さんの身体でなんて考えてもいなかったんだよ!」


必死に叫んだミコの声が、宿りし者にも届いた。

そう・・・ミレニアにも。


幼馴染で兄の様にも思えていた・・・狐モドキにも。



今日は挿絵が付いていなかった?



甘いな!


本日はリュートの意見で此処に貼る事になりました!


では・・・心して観てください。


リュート「ミコが魔王を倒した暁には!」


ミコ「・・・・暁には?どうなるのさ?」


リュート「決まってるだろ?!姉美呼みこよりも・・・」


ミコ「リュート・・・キャラが崩壊してるよ?」


・・・って、事で。

リュート君が想像したのは?


挿絵(By みてみん)


リュート「バインバイン!」

ミコ「・・・死んでみる?いっぺん?」


次回  第3章 キル・ラルの遺跡 Act15


君の想いは誰にある?君の想いは伝えられる?告白ターイム!!

次回は・・・萌えれる人は萌えれるでしょう・・・・


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