翔龍騎伝 ドラゴン・ライダー! 第3章 キル・ラルの遺跡 Act13
気が付いた時には、もう・・・
額に突き当たったミコの足から魔力が放たれていた。
(( グワシャッ ))
ど派手な炸裂音と装甲が破壊される音とが混ざり合う。
翔龍騎キックをもろに受け止めたジャキの額が砕け、
闇のオーラが噴き出されて、流石の装甲が突き破られた事を表していた。
「やったわね・・・あの娘。一撃で倒せるなんて・・・やるじゃない!」
起き上がったサエが降り立つミコに、聞こえない位の小声で言った。
「あががっ・・・・」
崩れ去るのは闇の翔龍騎。
姿を醜い爬虫類と化していたジャキ。
「あなたに訊く。
魔王はどこに居る?どこが魔王の住処なの?」
キックを決めたミコが振り返りながら問う。
「げっはぁぁっ?!」
屑折れるジャキ。
「言ってよ?あなたはもう負けたんだから!」
振り向いたミコが、ジャキに問い直すが・・・
「げぼぼっ・・・ぼげぇっ・・・」
屑折れたジャキは答える事も、まともに話す事さえも出来ない様だった。
「あっ?!ちょっとぉっ?待ってよ、逝く前に話してよぉっ?!」
ダメージが凄すぎて・・・離す事さえも叶わないのか?
((ドッゴオオォンッ))
倒れたジャキは闇のオーラを噴き出して、爆発して果てた。
「あ・・・損なぁ?!」
慌てるミコとリュート。
「馬鹿やろうっ!答えてから逝けよぉっ?!」
自分達がやらかしたのに、ジャキの所為にするリュート。
消え去った闇の翔龍騎ジャキを呆然と見るミコの横から。
「あららぁ?おいたわしや。
何も言わずに消し飛んじゃったわねぇ・・・どうするのよミコ?」
サエがいつの間にか横迄来て訊く。
「ふえぇ~んっ、こんな筈では無かったんだよぅ?!」
ジャキに与えたダメージが思いのほか強力過ぎたのが玉に瑕。
「うむむ・・・これ程だとは思いもしなかった・・・」
リュートも想像だにしていなかった結末に、ため息を吐くだけだった。
白金の翔龍騎ミコの落胆する横で、サエが肩を窄めると。
「やっちゃったモンはしょうがないわよねぇ。
それじゃあミコ達は教えられていなかったのよね、魔王の在処を?」
サエに頷いたミコが半べそを掻いて。
「だって・・・こんなにあっさり逝くとは思わなかったんだもん・・・」
女の子喋りで言い訳を溢す。
「はいはい、後の祭りって奴よねぇ?
済んじゃったことはどうにもならないから・・・」
トドメを刺された感が半端ないが、サエがいう事も納得ではある。
噴き跳んでしまったジャキの跡に、紅き魔法石が転がっていた。
「ほほぅ・・・これはなかなかの大きさだ。
ミコのモノだけど喰らわないのか?」
ひょいっと摘まんだサエが品定めしながら訊いて来る。
「あ・・・どうしよう?それはサエさんにあげようかな?
だって助けに来てくれなかったら危ない処だったから・・・」
譲るミコに眼を丸くしたサエが。
「えっ?!ミコってお人好し過ぎるな?・・・いいの?」
当に喰らう気満々だったサエが、上目使いに確かめると。
「うん、別に善いよ?」
ミコは何ともないような顔色で答えたから、却ってサエの方が遠慮気味に訊いて来る。
「ミコ・・・何かあるんでしょ?訳が・・・」
そう聞き返しながらも、サエが翔龍モードに豹を戻す。
青年の姿が男の娘に戻り、豹の背にある供給口へ魔法石を放り込むのを躊躇わなかった。
((ぼおぅっ))
魔力を吸収した豹が身悶えるように跳ね上がる。
「良かったわねパンサー・・・って、あれれっ?!」
サエの姿が少しだけ成長したように感じられ、声もハスキーさが増したような気がした。
「やっぱりだ・・・強力な翔龍騎を喰らったら・・・成長するんだ」
確かめたようだった。
そう・・・ミコが、急に女の子に成長した訳を。
「翔龍騎ってさぁ、補給する以上に魔力をあげる事になれば。
身体も成長するんだね?僕もさっき急に成長したから・・・そうじゃないかとは思っていたんだけど」
ふむふむと、腕を組んで考えていたミコに。
「何ですって?!それをどうして早く言ってくれないのよぉ?!」
「えっ?!サエさんって・・・知っていなかったの?」
驚き合う二人。
眼が点状態の二人・・・
「えっ?えええええっ?!」
「何でこんな事になっちゃうのよぉ?!」
サエとミコの叫びが遺跡の中に響き渡る。
座り込んだサエが涙目でミコを観る。
「本当だ・・・女の子になってる・・・ミコが」
翔龍騎モードを解除したミコが隣に立つ。
「出る処が出てるし・・・女の子に育ったんだ?」
「サエさん・・・もっと他に言う事ないの?」
困ったように言い募るミコを擬視するサエ。
「他に言う事なんてないわよ?!
これじゃあ魔王なんかを喰える訳が無くなっちゃったわ!
もしも食べでもすれば、お爺ちゃんになっちゃうかもしれないのよ!」
言ってる事がずれている。
だが、しかし。成長するのであればそうなるのかもしれないが・・・
「あああっ?!こんな事になるのなら、女の子のままでも善かったかも。
王様じゃなくて女王でも善かったのかもぉ?!」
またまた・・・ずれてる。
「そんなに王様になりたかったの?
どうしてサエさんはエクセリアの王になりたいと願ったの?」
この世界へ来た者が、願いを果たそうとするのは知っている。
召喚された者と、来訪者の違い。
方や願いを果たそうとする者、方や無理やり連れて来られた者。
「アンタになんて話す事じゃないわ」
あっさりサエが拒否するのだが。
「僕達は無理やり召喚されて来たから。
サエさんはどうやってエクセリアに来たの?何があってこの世界へ来たの?」
サエの横顔を見るミコが訊いてみたいと思った。
「話したくなければ・・・話したくなったら教えてくれない?」
無理強いはしないけど、訊いてみたいとは思って言ってみた。
「アンタ・・・ズッコイわよ?
アンタ達だって訳が無けりゃこんな所にまで連れ込まれやしない筈なのに」
サエが足元に視線を向けて呟いてきた。
「ミコもリュートも。
黒き魔法書を知ってる筈よね?あの魔法の古文書に書かれてある言葉を」
サエの問いに、記憶を取り戻す。
確かにあの魔法書に因って召喚された事には間違いがないが・・・
「書かれてある事なんて知らないよ。
僕は姉さんの部屋でしか観た事がないんだから。
書かれてある言葉を解読したことなんてなかったんだから」
古ぼけた古文書に興味はなかった。
唯、姉が眠り込んでしまってから気になっただけの事だったのだが。
「やはり・・・アンタは偶然だと言いたい訳ね?
でもね、偶然だとしてもおかしいのよね?
黒き魔法書は意味がない者の元には存在しないんだから」
ふっと息を吐いたサエがミコを観て。
「アナタ・・・背中が煤けてるんじゃないの?」
意味有り気に眼を細めた・・・
サエに訊いてみたら?
意外な事に男の子になった訳が・・・
人間外見だけでは判断できないなー(棒)
次回 第3章 キル・ラルの遺跡 Act14
君の話す言葉に垣間見えるのは・・・真実?!




