翔龍騎伝 ドラゴン・ライダー! 第3章 キル・ラルの遺跡 Act11
ミコの心は誰に向けられているのか?
リュートには確かめねばならない訳があった?!
告白タイムと化したか?
戦闘はどうなってるんだ?!
闇の翔龍騎と対峙するミコとリュート。
白金の翔龍騎が敵の攻撃を躱し続けれているのは、
リュートの経験則に因ってのみだった・・・
「「ミコっ、このまま逃げ続けられるかは判らねぇ。
奴の隙を突く戦法にも限度があるからな、一か八か勝負に出るぞ?!」」
リュートは焦り始めていた。
ミコの魔法力の限界と、自分の判断に疑いを感じ始めて。
「リュートに任せるって言ったんだから!
僕だけで闘っても勝てっこないんだからっ!
リュートが勝負に出ると言うのなら力の限り闘うよ!」
ロッドを繰り出して攻撃して来るジャキから避け続けられているのは、リュートの指示に従っているから。
翔龍騎状態でいられているのは魔法力がある制限時間内。
それも後少ししか保てなくなりつつある。
力が失われて、翔龍騎を維持できなくなれば。
「残り時間で倒せなきゃ、どのみち助からない!
そうだろリュート?分かってるさ!」
リュートが焦り始めた理由が手に取る様に解った。
「「すまんなミコ。俺にもっと力があれば・・・勝負に出る!」」
一か八かの勝負にミコの身を晒すのは心外だが、そうするしか道が無いと考えたのだ。
幼馴染の身体と、弟の様に想う尊の心を護る為にも。
<いざとなれば。俺が身代わりになってでも護ってやらないと。
そうしなきゃ、約束は守れない・・・そうだろミー?!>
リュートはミコの姉との約束を果たそうと思っていた。
「リュート・・・独りで逝かないでよ?
やられる時は一緒だよ?こんな世界に僕を置き去りにしちゃ嫌だよ?」
考えていた事が伝わっていたのか、ミコの口から思いがけない言葉が零れる。
「リュートはいっつも僕を助けてくれていた。
自分の事を差し置いてでも・・・だけど今度ばかりは嫌だからね。
僕を置いてきぼりにしちゃ嫌だからね・・・約束して。
僕を置き去りにしないって、必ず一緒に元の世界へ帰るんだって・・・」
現実世界に戻ろうと言うミコの声は姉と同じように思える。
女幼馴染で同級生の美呼の声に・・・
「姉さんの身体になってる時に感じるんだ。
リュートの声や心が痛い程解って来る・・・それが何故なのかが解る。
姉さんはリュートを心だけでは無く身体でも愛しているんだって・・・」
ミコの言葉がリュートの心に刺さる。
美呼の声で告げられるのは堪らなく辛く思えて。
「「ミコ・・・お前は?
ミコトは俺の事をどう感じているんだよ?姉の身体じゃないとしたら。
弟としてじゃないとすれば、俺の事をどう思っていると言うんだ?」」
訊いてしまった。
とうとう・・・心の中でいつも知りたいと思っていた言葉を吐いてしまった。
「・・・今、それを訊いてどうするの?
リュートに教えたら・・・僕は、僕でなくなっちゃうかもしれない。
それに美呼姉の身体で言っても、なんだか空々しくなっちゃうかもよ?」
ミコの声が震えて聞こえた。
少年の声じゃない女の子の声が、何かを耐えかねている様に聞こえたのだ。
「「ミコ・・・・言えよ」」
翔龍騎になっている今の姿でなければ、じっと見据えていたであろう。
幼馴染の少年に向き合って訊いていただろう。
「酷いよリュートは。
僕が今どう思っているのか知ってるくせに。
ミコ姉の身体になっている今じゃない時に訊いて欲しかったのに・・・」
ミコの声が涙ぐんでいるみたいに聞こえるが。
「「それでも、今聴きたいんだ!
後悔したくなんかないからっ、今!ここで言ってくれ!」」
勝負に打って出ると言った自分に、力を与えれるのは・・・
「うん・・・一回だけだからね!
僕の口から言うのは・・・これっきりだから・・・」
震える声がリュートの心臓を早鐘の様に鳴り響かせる。
「僕は・・・尊はいつもリュートの傍に居たい。
だって・・・僕はリュートの事を・・・」
((ごくんっ))
生唾を飲み込んで、次の語句を待つ。
幼馴染で、同級生の弟で、昔々からずっと可愛がってきた・・・尊の口から告げられるのは?!
「いやっほぉうっ!こーんなトコに居たのねぇっ!」
男の娘が大げさに呼びかけて来た。
勿論、自らの下僕ともいえるピンクの豹を従えて。
「なーんだか、ヤバい事になってるぅ?」
御気楽そうな声とは裏腹に、殺気を孕んだ目で見据えて。
「あっ?!サエさんっ!」
ミコの口が告白の途中で途切れられた。
(( ずぅう~んっ ))
「あんっ?!どうしたのリュート?」
急に体が重くなった気がしたミコが下僕であるリュートに問いかけたが。
「「なんでもねぇよ・・・なんでも・・・」」
落胆した声が額から墜ちてくる。
「おーぅっ白金の!なにやら困ってるみたいねぇ?」
リュートに心のダメージを喰らわせた張本人が訊いて来ると。
「サエさんっ、闇の翔龍騎なんだ!」
黒鉄のジャキを指して戦っている事を教えると。
「ほほぅ?こいつが・・・翔龍騎なんだ?」
眼を細めたサエがパンサーを寄せて、ニヤリと細く笑む。
「じゃあ、アタシも参戦するわ!パンサーの餌に丁度良いわね?」
闘う前から勝った気でいるサエ。
「サエさんっ、闘ってくれるのはありがたいけど。
奴はヒートロッドを操る術の使い手なんだ!気を付けないと焼かれちゃうからね?!」
注意を促すミコに手を挙げたサエが、笑んだままで返して来る。
「そう?ご忠告痛み入るわ。
でもね、アタシも翔龍騎なんだよ?
パンサーの力を持つ者なんだよ?見くびらないで貰いたいわね!」
手をパンサーに添えて、ミコの忠告を受け流すと。
「それじゃあ観ていなさいよ!アタシのジャケットを。
ピンクの翔龍騎が如何なる者かを!」
手を掲げて召喚するのだった。
~ 白銀の光が溢れ出す・・・サエの右手から。
魔法空間で男の娘の衣服が光に溶け、成長していく。
しなやかな肉体美を誇る男子が、魔法のジャケットを身に纏う。
流麗なるジャケットに鋼の装備が着けられ、
魔法の装甲、魔法の鍵爪が光を放つ。
白地を基調にしたバリアージャケットに、白銀のショルダーガードが着けられた。
ピンクの長い髪に着けられた緑のリボンが揺れていた ~
「じゃぁ~んっ!どうよ?」
言葉使いはサエそのものだが、姿は・・・
「サエさんっ?!本当にサエさんなの?」
身長が今迄とは雲泥程も違い、ミコから頭一つ分ほども高く感じられる。
そして、男の娘とは違って、目元麗しい男子の顔がそこにあったのだから。
ミコが驚いたのも仕方が無かろう。
「ああ、アタシだよ。
びっくりしただろう?初めて変身した時にはアタシも腰を抜かしたわ!」
鍵爪を一振りした男の姿は、とても凛々しく頼れそうに思えてしまった。
「すっごい・・・本当にびっくりした!」
流し目で観られたミコが、戸惑ったように顔を背けると。
瞬時に気付いたサエが、気が付く暇もない速さで寄ると。
「あら、かわいこちゃんになってるじゃない。これはほっとけないわね?」
ミコの顎に手を添え、無理やり振り返らせると。
「この愛らしい唇で、幼馴染を射止めたのかしら?いけない子ねぇ?」
細めた目でミコの顔を上に向けさせる。
「わっ?!わっわっ?何をするの?!」
元は男の子なミコ。それに対して元々は女の子なサエが言い寄っているような姿に。
「「お前なぁ?!けしからん娘だな?」」
額のリュートがジト目でサエを睨んだ。
「おおっち?!こんな所に狐モドキが存在してたのね?!」
驚きの声を発したサエが、飛び退く様にミコを離すと。
「「こんな所で悪かったな。
でもよ、女の子同士で見つめ合われるのも困るんだけどな。時に今は!」」
リュートが眼で敵の存在を知らしめる。
「そっ、そうだよサエさんっ!こんな事してる場合じゃないからっ」
戸惑いながら、少しだけ頬を赤らめたミコが続けると。
「そうだったわ!アイツを滅ぼして喰らっちゃわないと!」
ニヤリと笑い直すサエの顔は、男とも思えない妖美さが伺えた。
「奴を倒しちゃいましょうよミコ。
それから遺跡の秘宝をゲットしちゃいましょう!」
簡単に言い放ったサエ。
確かに白銀の豹を纏う翔龍騎なのだが、その実力の程は?
「サエさんっ、気を付けないと僕みたいに叩かれちゃうよ?」
ミコが忠告した時、黒鉄の翔龍騎のロッドが襲い掛かって来た。
現れた救援?
男になったサエの姿に驚きを隠せないミコ。
ミコの紅くなった顔を観て、面白くないリュート。
2人の翔龍騎は闇と対峙するのだが?
次回 第3章 キル・ラルの遺跡 Act12
中ボス戦!決着はどうなる?サエとミコは黒鉄のジャキに対峙する!




