翔龍騎伝 ドラゴン・ライダー! 第3章 キル・ラルの遺跡 Act9
現れた敵?!
闇の翔龍騎ジャキと睨み合うミコだったが・・・
黒き鋼の翔龍騎が佇んでいた。
紅き闇の瞳で睨みつけて・・・
「お前達も魔剣を求めて来たのであろう?
4つの力を求めて来たのであろう?」
澱んだ空間になりつつある遺跡深部に、ジャキと名乗った翔龍騎の声が響く。
「魔剣ってどんな物なのかも知らないし、4つの力って何の事なの?」
ミコがさっぱり訳が解らないと聞き返すのだが。
「惚けるな!ラルの神殿に入って来た者が知らぬ筈があるまい」
ジャキの声が怒りを伴って返される。
「だって・・・この遺跡の名前さえも知らなかったんだよ?
秘宝があるって事だけを教えられて入って来たんだよ?
知る訳がないのに、いきなり魔剣がどうのって言われても・・・」
本当に何も知らずに此処まで来たと、ミコが答えると。
黒鉄の翔龍騎ジャキの眼が少女を見据える。
「そなた・・・本当に何も知らずに此処まで辿り着いたというのか?」
「うん・・・そうなんだ」
即答するミコをジッと見据えていたジャキが。
「それはそなたの運が悪かったという事だな。
若過ぎた・・・そう思うが良い。あの世で・・・」
ミコ目掛けて最後通牒を言い渡しながら、右手を一閃させた。
空気が震えた。
鎌鼬の様な旋風が巻き起こり、ミコに触れた。
「「ミコっ!」」
宿るミレニアが瞬間に防御魔法を放ったが。
「「避けきれない!」」
まともに旋風が魔法障壁を突いて来た。
(( ビリッ ))
リュートがミコに振り返った時には。
「ミコぉっ?!」
コルセットの紐がズタズタに引き裂かれてしまっていた。
「「ミコに傷を着けられなかっただけでも感謝しなさいよ、下僕!」」
ミレニアが戦闘に直接関与してしまった。
神が直接戦闘に関与してはならない掟なのに・・・
下僕としてミコを護っていた者に言い放つ。
「「リュート!ミコをちゃんと護りなさいよね。
私は今ので眠りに就かなくっちゃいけなくなっちゃったんだから!
女神の掟を少々破っちゃったんだからね!」」
宿った状態のまま、またもや永い休息時間に入らざるを得ないミレニアが。
「「良いわねリュート、ミコを護りなさい。
何としても、何が何でも!そうじゃないと私もミコもリュートも・・・
生きて還れなくなっちゃうんだからね!」」
全てを翔龍リュートに託して声を閉じた。
「ああ、解ってるさ糞女神!
俺がミコを護ってみせるさ、どんな相手だろうと!」
モフモフの狐モドキが胸を叩いて請け負った。
「うっく・・・リュート・・・戦わなくっちゃ駄目なのかな?」
お腹を露出させられたミコが前かがみになって黒きジャキを観る。
「勿論さ。奴が攻撃して来たんだぜ?!
自分の身を護る為にも、売られた喧嘩は買わなきゃいけないんだぜ?」
リュートには初めから解っている。
ミコは闘いたくは無いという事に。
それは弟にも思える気の優しい少年、尊の本心からの想いなのだと。
「でも・・・別に秘宝がどうしても欲しい訳じゃないから。
話せば解ってくれるんじゃないかな・・・」
ミコが闘う事に戸惑いをみせる。
相手から視線をずらして、殴り合う事に躊躇する・・・少年の心。
リュートは異世界に転移して魔物と闘う事になった時にもみせた、
ミコという幼馴染の心根が、いつまでもそうであって欲しいと願う。
しかし、今は・・・
「ミコ、話し合って解ってくれる相手じゃなさそうだぞ?
奴は魔王の仲間だと言っていたんだ。配下の者だって言ったんだぞ?!
そんな奴と対峙しているんだぞ?悠長な話をしている暇はないんだ!
闘えっ、俺の幼馴染!倒すんだ魔王の手先を!
今求められているのはミコの願いと力なんだ!俺と共に帰る為に!」
リュートがミコへ力を求めてくる。
今は現れた敵と闘うのだと・・・教えてくる。
「リュート・・・解ったよ。
ジャキを倒して、二人で帰ろう。ミコ姉の元へ!」
ミコの右手が龍を求めて掲げられる。
魔法の龍に同化を求める。
「変身!」
黒き鋼の翔龍騎ジャキの前に、
白金色に輝く翔龍騎が現れ出る。
金色の光を纏い、少女の身体が白金のバリアブルジャケットに包まれていた。
「ほほぅ・・・白金の翔龍か。
こいつは珍しい・・・喰うには惜しい位だぞ?」
負けるとは端から思っても居ないというのか、ジャキが哂う。
「食えるものなら喰ってみろ!
僕はお前なんかに負けたりはしないんだから!」
大人の姿になったミコが足元を踏み固めて構えつつ言い返すと。
「笑止!
お前如きの女に、この黒き鋼が倒せるものか!
我が装甲の前にはお前の技など、通用しないと教えてやろう。
かかって来るが良い、我の装甲の威力をみせてやろう」
黒鉄の胸当てを一叩きしたジャキが嘲る。
ー 確かに・・・硬そうだ。
黒鉄の翔龍の自信の程が、只のプロテクターではない事を教えている。
無駄に分厚そうな何重もの装甲板が、闘う相手の攻撃から身を護っている。
そう感じたリュートが、ミコの額に着けられた龍のシンボルから教えるのは。
「ミコ!ジャキの装甲が無い場所を叩くぞ!」
相手がわざわざ叩かれてくれるというのなら、思い通りにしてやろうと思った。
そう・・・叩くべき場所を考えて。
「装甲の無いのは、奴の足だ!
足に手傷を負わせれれば、後の攻撃も掛けやすくなるし。
何より、攻撃のスピードを制限できるんだからな!」
攻撃ポイントをジャキの足に絞らせるリュート。
それは齧っていた空手にも共通して言える事。
「先にダメージを与えられれば、それだけで格闘戦は有利になる!
憶えておくんだぞミコ!」
「うん、覚えておくからねリュート!」
返された声が、彼女と同じ言葉だと思った。
弟を護ろうと必死に抗う、女の子の声と・・・
<美呼お前は、弟を愛するが故に闘う事も辞さないと言った。
今、ミコに身体を預けているお前は何処に居ると言うんだ?>
感慨に耽る暇は無かった。
攻撃をしくじる事は、ミコの心もミーの身体をも危険に晒す。
格闘戦に突入した今、自分がミコをリードしなければならないのだから。
「ミコ!一撃をかけるっ、奴の右足へ!」
接近戦で確実にポイントを叩くには。
「良いか、俺が言う通りに身体を動かすんだぞ?!」
構えたミコが顎を引き締めて頷いた。
姉とそっくりな気構え方に、リュートの気が少しだけ解れる。
「いくぞ!ダッシュで奴の左側面に突っ込むんだ!」
リュートの掛け声に併せて、ミコの足が地を蹴った!
ジャキはミコがてっきり正面から叩きに来るものと思い込んでいたのだが。
意に反して、ミコの身体が左側にそれて行くのに動揺する。
「なにっ?!貴様っ?」
ミコが胸当てを叩くのではないと初めて感付いたようだが。
ミコの身体が側面を盗る方が速かった。
「ミコっ!左足で奴の右足を蹴りつけるんだ!」
側面を盗ったリュートの作戦はものの見事に成功した。
黒鉄の装甲を持っていない部分に、蹴りつけるミコ。
左足に力を籠めて、半回転を掛けながら蹴る。
鋼のシューズに込められた魔法力が敵に撃ち込められた。
((バシッ))
「ぐおぉつ?!」
蹴りつけられたジャキが堪らず右足を地に着けて悶絶する。
「巧くいったぞミコ。
致命傷とはいかないが、これで奴の動きも・・・」
リュートが手ごたえを感じて言った時の事だ。
((ヒュン))
黒い何かが視線の端に映ったような気がした・・・
((バキャッ))
白金の翔龍騎がもんどり打って飛ばされてしまった。
何が起きたのかを知る前に・・・
リュートがミコの身に何が起きかを知る前に・・・
ヤバイ?!
ミコに加えられた攻撃は?!
闘う少女は強敵とどう向き合うのか?
そして・・・リュートの記憶が蘇る?!
次回 第3章 キル・ラルの遺跡 Act10
君は思い出の中で何を思い出すというのか?記憶を辿る時何が見えるというのか?




