翔龍騎伝 ドラゴン・ライダー! 第3章 キル・ラルの遺跡 Act6
遺跡のトラップに引っ掛かった!
女神ミレニアがミコに乗り移った為に。
そんなぁーっ?!(損)
堕ちた・・・どこまでかは解らないが。
トラップに引っ掛かった・・・ミレニアの所為で。
女神なら助けるのが当然だろうに、使徒とその下僕に任せっきりにしときながら。
「・・・なんて糞女神なんだ・・・」
気が付いた。
思わず思っていた事を口走ってしまった。
「リュート?気が付いたんだね?」
ミコの声が頭上から聞こえて来た。
はっきりと気が付いた時に感じたのは・・・
<なんだか・・・温かいし。
なぜだか柔らかいモノの上に寝ているような気がする。
それに・・・身体を擦られて・・・気持ちがいい?!>
眼が開くと、目の前に映ったのは。
「うわっ?!」
声が飛び出てしまった。
目の前には少女のお腹が観えていたから。
「・・・って。ああ、俺はモフモフ状態だったか・・・」
リュートの身体はミコの太腿の上に寝かされていた。
狐モドキ状態でなかったら、これはこれで問題がありそうなのだが。
「気が付いたんだねリュート。善かったぁ」
心配そうな少女の声が耳に優しい。
「あれ?俺ってどうなってしまってたんだ?」
記憶が混乱してミコに訊いてみると。
「うん、リュートが僕を救ってくれたんだ。
あのまま落ちていたら死んでいたと思う・・・間違いなく。
だけど、リュートが僕の代わりに下敷きになって・・・気を失ったんだ」
思い出してきた。
ミコの身代わりになって、地面に叩きつけられた。
咄嗟の行動だったが、どうやら二人共無事に済んだみたいなのだが。
「ごめん、リュート!
痛かっただろ?どこか悪くした?痛む処は何処?」
モフモフの毛を撫でるミコが涙ぐんでいるのだが。
<うむむ・・・この状態を辞めるのも勿体ないような。
もう少しナデナデして貰うとするか・・・どこも痛くは無いのだが>
リュートの身体は翔龍なので、少々の衝撃ぐらいではどうという事も無かった。
白金の龍との契約で鋼の身体を持つ者なのだから。
<それにしても・・・だ。
良くもまぁこの身体でミコを護れたもんだよなぁ。
咄嗟に庇った事は確かだが、こんなちっこい身体でミコを護れたのは奇跡なのか?>
叩きつけられる瞬間をリュートが思い起こす。
<そうだ、あの瞬間だ。
龍の奴が勝手に翔龍状態になりやがったんだった。
一瞬だけ、鋼の身体になってミコの身体にダメージが無いようにしやがったんだ>
落下が終わる時、龍が独自の判断でリュートの身体を鋼に替えた。
鋼と云っても翔龍にだ。
腹の上に載せて、ミコに衝撃を与えない様に空気の層を造って・・・
<それでミコにはダメージがなかったのか。
その代わり、俺はしこたま背中をぶつけたって訳だな?>
契約した龍に文句の一つでも言ってやりたいと思うのだが。
「リュート、ありがとう。
僕を救ってくれて・・痛いだろ?」
気を喪う程の痛みがあるのだろうとミコが涙ぐんだまま訊ねてくるのを、
いいや、違うんだとは言い出せないリュートが。
「あ、いやそのな・・・もうちょっとこのままで」
痛くも痒くもないのだが、モフモフの背中を撫でるミコの指先が気持ち良くて。
「もう少し優しく撫でてくれよ」
痛みがある様な声で頼んでみると。
太腿の上に寝そべる狐モドキのリュートを心配して。
「あっ、痛かったんだね?ごめんっ、気が付かなくて!
今直ぐミレニアさんにヒーリングの術を頼むからっ!」
半べそを掻いた声をあげたミコが女神に頼もうとする。
「いや待てミコ。
俺達が落っこちたのも元はと云えばあの糞女神の所為なんだぞ?!
今俺がこうなっているのもミレニアの所為なんだからな。
ヒーリングを掛けられても嬉しくないね!」
本当はどこも痛くは無いのだが、ミコの指先と太腿が気持ち良くてつい、嘘を吐いてしまう。
「そんなぁ。
そんなこと言ったらミレニアさんに悪いよ。
責任を感じてるのは僕と同じなんだからね、ミレニアさんも!」
ミコの言葉にリュートが思いつく。
「そうなのか?だったら誠意を見せて貰いたいもんだね?
ミコと同じと言うんなら、同じように膝枕をして貰いたいもんだね」
「・・・解った!」
おやっと思う間もなく。リュートの身体が少しだけ高くなったように感じられて。
<おいおいっ?!マジか?>
少女とは違う女の子の太腿に、リュートの方が赤面する。
<確かに・・・ミレニアの身体・・・なんだよな、これ?>
すっと顔をあげて見上げてみると。
「どう?!これでいいの?これで許してくれるの?」
女神のツンとした顔が眼の先にあった。
「・・・駄目だね。ミコみたいに撫でてくれなくっちゃ!」
モフモフの尻尾を揺らせて、リュートが催促すると。
「うっ・・・良いわよ、それくらいの事なら!」
ミレニアの指が背中の毛を掻き撫でる。
「うう~っ、至福のひと時・・・」
眼を細める狐モドキ。
「リュート・・・ミコが眠ってる今だから言うわ。
あの子が言っていた話の事だけど・・・ね?」
「あん?言っていた事?」
眼を細めて極楽の一時を楽しんでいたリュートに、
「さっきの事よ。ミコの姉がどうとか・・・言っていたでしょ?」
ミレニアが話しかける。
「墜ちる前に話そうと思っていたんだけどね。
ミコの姉がどうしたって言うのよ?黒い魔法書をどうしたって言うの?」
不意に話を戻らせたミレニアに、リュートが怪訝な表情で聞き咎める。
「なんだよミレニア。ミーの事ならミコが言った通りだぜ?」
姉が眠り込んでいるのは唯の偶然だと言いたげに答えるのだが。
「いいえ、そうじゃない筈よ。
もともとの召喚者だった娘がミコになってしまった事も関係がありそうなのよね。
これは私にとっても重要な事なの、勿論あなた達にとってもよ!」
ミレニアはリュートの眼を眺め込んで訊く。
「あなたは何かを隠している。
ミコの姉と何かを共有して隠している筈よ・・・それは何?」
しらばっくれるつもりで、目を逸らしたが。
「隠しなさんな。ミコは今聞いてはいないし、私も黙っておくわ。
だから正直に何があるのかを話しなさいよ!」
追及されるリュートが黙っていると。
「やっぱりね・・・隠し事は為にならないわよ?
それに、あなた達が帰還する事にも関係があるかも知れないのよ。
私の前任者が行方を眩ましてしまったのもちょうど一か月ほど前なんだ・・・
何か関係があるような気がしたのよね。
リュートがミコに黙り込んでいたから、何かを隠している気がしたのよ」
ミレニアはリュートが想っている程愚かな女神ではないようだった。
女神に昇進してからまだ一週間足らずの新米女神だが。
確かに、今のままではいつになっても帰れるような気がしなかった。
無数にも数え上げられる魔王を全て倒すには、数えきれない時間を要するだろう。
まかり間違えば、倒す処か倒されてしまうかもしれない。
そうなれば帰還どころか命の保証もない。
「教えれば道が開かれるというのかよ?
もしもミコに知られたら、俺はもう一緒に居られなくなるかもしれないんだぜ?」
リュートは一緒に居られなくなるかもしれない者の名を告げなかった。
ミコなのか、それとも?
「女神が約束するわ!神が約束を破ったらどうなるのか知ってるわよね?
だから・・・言いなさい!今ここで!」
美呼との約束がどんな物なのかを。
何をミコに知られる事がいけないのかをも、ミレニアは求めて来た。
「・・・約束しろよ?いいな。
ミコの姉、美呼と俺は約束を交わした。
美呼の想いが果たされる時までミコを護るって。
ミコを愛する姉が望んだのは・・・」
答え始めたリュートの声が途中で停まった。
辺りに聞こえ始めた異音に気が付いたから・・・
(( ぐしゅる ))
地を這うような物音がミレニアの太腿に乗るリュートの獣耳に聞こえて来たからだ。
そう。
2人が話し合っている場所とは・・・遺跡の深部だったのだから。
此処は遺跡の中。
つまりはダンジョン・・・現れ出るのは?!
決まってますね、魔物ですよ。
でわっ?!どんなヤツなのか?
これまでミコはレベルアップしてませんでしたよね?
・・・つまり。
・・・・・・・アレですよ!アレ!!
分かった方は素晴しい洞察力を持たれています!(断言)
次回 第3章 キル・ラルの遺跡 Act7
さぁ!倒してレベルアップするんだ!逃げられちゃったら大損だぞ?!
攻撃だ!・・・((ツルッ))・・・なんだってぇ?!←これがヒント




