翔龍騎伝 ドラゴン・ライダー! 第3章 キル・ラルの遺跡 Act4
遺跡に辿り着いたミコとサエ。
2人は遺跡の内部へと突入するのだったが・・・
見上げる石柱はいつの時代から此処に在るのか。
苔むした基部に描かれてある文字は何を表しているというのか。
「なんだろうなコレ?何かを模っているんだろうけど・・・」
描かれた文字と壁画が何を教えているのか皆目見当がつかない。
ミコの眼に映っているのは、人らしい者の上に乗る怪物。
いや、怪物というよりは悪魔とでも言った方が正確なのか。
人間を服従させ、伸し掛かる者の姿は歪な化け物として描かれている。
「この遺跡が何の為に造られたのかを表しているのかな?
それとも・・・此処に居た者の姿なのかな?」
遺跡が造られた理由が、描かれてある通りの者を祭ってあるのか。
それとも葬り去った過去の魔物を描いてあるのか。
「ミコ、これだけじゃあ何も分からないぞ。ミレニアは何か知っていないのか?」
宿る女神に訊ねるように促したリュートが、
「まさかとは思うけどな、遺跡の中にこいつが居るんじゃないのか?」
描かれた魔物が封じ込められている話がよくある。
盗掘者が間違って目覚めさせることもよく聞く話だ。
ファンタジーや映画の話なら、特にありがちな事だ。
「うん、ミレニアさんにも善くは分からないって。
こんな所に遺跡があった事も知らないって・・・言ってるよ?」
宿る女神に訊いたのか、ミコが首を振って応える。
「いつも持ってるアンチョコ本にも載ってないのか?
古来の遺跡だろうに、しかも悪魔みたいな奴が描かれてあるのにか?」
神の知らざる魔物というのかと、リュートが不思議がるが。
「なんでもここいらの歴史にこんな魔物は出て来ないって言ってるんだけど。
遺跡の存在も、こんな魔物の存在さえも伝承には残っていないんだって」
ミレニアの言葉をそのまま伝えてくるミコに、
「神さえも知らないって事なのか?」
狐モドキ状態に戻っているリュートがミコの肩に乗っかって石柱を見上げた。
2人がクエストを行おうとしている遺跡。
石柱一本が立つ、不可思議な広場にポツンと開いた石窟があった。
それは本当に遺跡なのか疑いたくなる程の、普通の岩穴にしか見えない。
唯、ずいぶん昔から此処に存在しているのであろうことは周りの雰囲気が醸し出していた。
「こんなに苔むしているんだから、きっと何百年前以上の遺跡なんだろうね?」
ミレニアは知らないというのだが、ミコやリュートにはそう思える。
「その中にあるというのが、魔法力を高められる秘宝だってことなんだろ?
そいつを見つけるのが目的なんだからな、間違っても魔物退治がメインじゃないぞ?」
後ろを振り返ったリュートがもう一組の翔龍騎に言った。
「うるさいわね!言われなくても解ってるわよ」
ピンクのオサゲ髪を一払いしたサエが白銀の翔龍に手を置いて言い返して来る。
今回のクエストで同伴する事になったサエの目的も、ミコと目的は同じ。
だが、遺跡まで辿り着くだけでも相当時間を要する事になったのが気になっているのか。
「早く秘宝とやらを見つけて還る方が良いわね。
さっさとしないと晩御飯までに帰れなくなるわよ?」
サエが言った事は本当だと思った。
無駄に時間を費やしたおかげで、空はいつの間にか夕焼け色に染まりつつあったから。
「そうだね、それじゃあさっさと内部に突入しようか?」
石窟の中を伺ったミコの中で、女神ミレニアが何かを感じ取った。
「「ミコ。出来るなら明日にしない?なんだか善からぬ気が漂ってるんだけど?」」
はっきりとした感覚では無く、気分的にそう言ったのかと思ったミコが。
「何言ってるの?折角ここまで来たのに、帰るなんて出来ないよ」
気分的な問題で引き返す事は出来ないと断るのだが。
「ミレニアもそう感じてるんだな?
実は俺もさっきから胸糞が悪くなってるんだ。
出来たら明日、朝早くから出直さないか?今度は用意を周到にしてから・・・」
ミコの肩でリュートが出直し案に賛同して促して来るのだが。
「あ~ら、アンタ達は帰っちゃうの?だったらお宝はアタシ一人の物ね!」
ミコを追い抜いて遺跡の中へさっさと進むサエが手を振ってくる。
「行こうよリュート。サエさんだけに秘宝を渡すなんて出来ないよ!」
意地を張るミコがサエの後を追いかけるように遺跡の中へと入って行く。
「う~んっ、こういう時。幼馴染はをどうやって停めれるというのか。
まだまだ俺は経験値不足だよなぁ・・・しょーがない」
天を仰ぐリュートがため息を漏らしながらも、ミコを護ろうと身を引き締めるのだった。
入り口からは想像できない程、奥が深くなっている。
段々と地下へと下って行くように感じられ、日の光が届かなくなる。
内部に灯りがない事は織り込み済みだったミコが、松明を点ける。
勿論、魔法の・・・だ。
やがて侵入して来る者を拒むかのように入り組み始め、
奥へ行く程、迷路のように枝分かれしていた。
「どっちに行こうか?」
立ち止まったミコが思案する横で。
「アンタ達は右に行けば?アタシ達は左に行くわ。
どっちかが行き止まりなら、此処まで戻って反対側に行けばいいだけ。
運が善い方がお宝に辿り着けるわ・・・それで文句ないでしょ?」
勝手な方策を執るように言って、サエが同意を求める。
「そんなぁサエさん、勝手過ぎるし。
それに単独行動は危険だよ?何が起きるかも分からないのに?」
ミコが危ないから止そうというのだが。
「アンタねぇ、男なんでしょ身体は女の子でも!
そんな心配性な気構えじゃモテないわよ!男の子だったらズバッといかなくっちゃ!」
サエが振り返ってミコを指差す。
「そんなの関係ないだろ今は!
いいよ、解ったよ!勝手にすれば良いだろ!」
いがみ合った二人が別々の道を選択し、
「じゃあ、僕は右に行くからね!」
「アタシは左に行くわ。秘宝を手に出来たら此処まで戻って来るのよ!
それともう一つ。間違っても先に帰らない事!
二組揃って帰らないとタストンに何を言われるか分からないもん!」
二組のペアが別れ際に言い合った。
確かに依頼主でもあるタストンとの契約では、
二組の翔龍騎に因ってと明記されたと思い出す。
ミコとサエ、両名によって依頼は遂行されなければならない。
「分かったよ!僕が秘宝を手にしたら分け前を欲しいんだろ?」
サエが考えている事を制して言うと。
「そうよ!何か問題でもあるの?!
二組に分かれて探すように言ったのはアタシなんだから。
当然、アタシにも権利があるのよ!」
財宝を奪い合うトレジャーハンターのように、サエの主張は身勝手に聞こえるのだが。
「はいはい。どうせ自分独りで見つけ出せるか分からないもんねぇ」
どちらに秘宝が与えられるのか、この時点で文句を言い合うのは捕らぬ狸の皮算用だと思った。
顔を引き攣らせたサエを置いて、さっさとミコが進みだす。
「解ってるわね?!この場所に集合よ!」
分岐点でもあるこの場所の目印を付けて、サエが念を押す。
「この壁に描いた丸が落ち合う所なんだからね!」
左右に分かる前にサエが記した丸。
果たして二人はもう一度落ち合う事が出来るのか?
ダンジョンの中という場所に、魔物が棲みつきやすい事を知らないのか?
ダンジョン内部に侵入したミコ。
経験が無い為、犯してはならない間違いを選んでしまった。
だって、ダンジョンなんだから!
二手に分かれちゃったら助け合う事も出来ないよ?
次回 第3章 キル・ラルの遺跡 Act5
気が付いた時には遅かった?!それはお約束ってヤツなのだよ!
損な子がここにも・・・・




