翔龍騎伝 ドラゴン・ライダー! 第1章 龍と女神と幼馴染と?! Act12
どうやら魔王を求めて旅立つ事になりました。
そこで思うのですが・・・装備は?
<エクセリア>・・・
この世界に召喚された者達は、どれ位居ると云うのだろうか?
女神に因って召喚された人間がどんな運命を辿ったと云うのだろう?
神が存在し、悪魔たる闇の者が居る。
その中で生きる人間達が存在しているという。
ミコとリュートが召喚されてしまった<エクセリア>という異世界。
無事に帰るには一つだけしか方法が無いという・・・
「まぁ、そんな訳で。
これからどうしようかしらねぇ?」
ミコの口からミレニアの言葉が漏れ出る。
「どうもこうもあるかよ?!帰るには一つしか方法がないんだろ?」
狐モドキに成り果てたリュートがミコの足元で愚痴る。
「だったら、探し出してぶっ飛ばすしかないじゃんか?!」
魔王を倒せれば帰れる・・・そう言いたいようだったが。
「でもぉ、どこに居るのかも知らないのよ?
私に命じられていたのは、
この魔王城に居るレッドアイを滅ぼせって事だけなんだもん!」
確かにミレニアのいう事も本当なのだろう。
先達の神に命じられたというのなら、此処が魔王の居城だったのだろう。
では?本当の魔王は今何処にいるというのか。
それは、ミレニアさえも教えられてはいなかった…という事。
「・・・探そうよ。
探し出して倒して・・・帰るんだ、絶対に!」
ミコが二人に言い聞かす。
「絶対に帰らなきゃ!ミコ姉を誰が助けるんだよ?
早く帰らなきゃミコ姉が待っているんだよ?!
リュートだって逢いたいんだろミコ姉に。だったら一刻も早く帰らないと!」
現実世界で病に倒れている姉を想い、ミコが急き立てる。
病院で目覚めない姉の姿を描き、ミコが二人に言う。
「僕は必ず無事に帰る!だってミコ姉を誰が気付かせられるのさ?
こんな世界にいつまでも居られる筈がないじゃないか!」
ミコの声にリュートも頷く。
「そうだよなミコ。早い処帰ろうぜ!」
二人の言葉に耳を貸していたミレニアが、
「そう!その粋よ!ミコだったらきっと魔王を倒す事だって出来る!
なにせ私の龍を纏っているんだもの。白金の龍を宿らせたんだもん!」
翔龍騎になったミコに、期待を込めて言った・・・が。
「ミレニアには倒した暁にはお礼を貰わなくっちゃ!
だって、元々勘違いから召喚したんだろ僕を?」
「うっ?!そ、それはそのぅ・・・・はい」
女神のお礼って?
今は還る事より、魔王を探し出す事に全力を向けるのが先決って奴なのでは?
リュートは二人に突っ込もうとしたが。
<んっ?!なんだ?何かが迫っている?>
龍の力が何かを告げている様に感じ、そちらへ意識を向けた。
「リュート?どうかしたの黙っちゃって?」
気を集中させていたリュートへミコが話しかけると。
<うん?変な感じも消えた?>
気が削がれたというのか。
狐モドキの姿になったリュートが首をかしげる。
「いや、なにもない。さっさとここから出ようぜ?」
嫌な気が心に蟠り、出発を急かした。
「そうだよね、こんな嫌な場所に留まってなんか居られないよね!」
狐モドキがさっさと歩み出したのに連れて、ミコも歩き出す。
「でもさぁ、リュートは良いとして。
ミレニア、僕ってこんな格好のままで旅に出るの?装備とかないの?」
少女の身体には局部を隠す位の衣服しか着されてはいなかったから。
「う~んっ、そうねぇ。
この城に何か残ってはいないかなぁ。城から出る前に少し探してみましょう」
広間から出るミコとリュート。
ミコに宿る女神ミレニア。
3人の旅路が、今始まろうとしていた。
広間から出て、城の中を探索していくと。
「あった!これとこれで・・・それに・・・剣もあったよ!」
嬉々として装備していくミコ。
まるでゲームの中に居るかのように、装備品を確かめて喜んでいる。
髪留めを着ける。跳ね上がっていた癖っ毛がこれで落ち着いた。
革靴を見つける。ちょうど良いサイズだった。
羽織る物を見つける。マントとして使えそうだった。
剣を帯刀する。短剣だったが切れ味は良さそうだった。
イヤリングが転がっていた。魔力を持つ石の様だった。
お腹がこのままでは冷えそうだったからコルセットを巻いた。
さっきまで裸同然の少女は、これで一応の装備を整えられた。
旅に出るにはかなりな軽装備なのだが・・・
「ミコ・・・注意してよ?
この世界では魔物が徘徊しているんだから。
油断していたら翔龍騎とはいえ、ころっと殺されちゃうからね?」
ミレニアが注意を促して来る。
「えっ?!そうだったの?
ヤバイ世界なんだね<エクセリア>って・・・」
驚いたミコが体の中に辿る女神へと答えると。
「ミコは俺が護る・・・って言いたいところだけど。
こんな姿じゃ足手纏いにならないか、心配だよ」
モフモフの狐モドキが主人を見上げてため息を吐いた。
「あ、そうそう!リュートは宿りし者でもあるんだから大丈夫よ。
イザとなれば腕輪に逃げ帰れるんだから・・・安心ね!」
ミレニアがお気楽に教えると、ミコが猛反対して来る。
「あのねぇ、主人をほったらかしにする下僕が居るのかよ?
リュートは常に僕を護るの!
なんと言ったって僕が魔王を倒さなきゃ帰れないんだから!」
リュートに向かって許せないって言い放つが。
「でもよぉミコ。
こんな姿を他人が観てどう思う?ヤバくないのかよ?」
「う・・・うん、まぁ」
確かに存在自体が変な生き物なのだから。
「だったら・・・人目に付くのも問題がある。
もし、それが敵だとすれば尚の事、隠しておかないといけないんじゃないのか?」
「う・・・うん、確かに」
リュートに諄々と説得されるミコ。
「だったら、俺は腕輪の中に居る事にするぜ。
そうすりゃ問題はない筈だし、護る事にも影響は出ないだろ?」
「そ、そうだね。その方がいいのかも・・・」
あっさり、リュートの口車に載せられたミコが認めてしまった。
「良し、これで決定だな。通常、俺は腕輪の中に居る事に決めたよ。
その方がミコの為にもなるんだからな!」
何か釈然としないミコが、憮然とした顔で頷く。
「ミコ・・・あなたも損なコねぇ・・・」
ミレニアが諦めたように呟いて溜息を吐いた。
元魔王城から旅路が始まる。
異世界転移が齎した行方も知れない宛ても無き旅路が。
「さぁって!これからどっちへ行こうか?こっち?それともこっち?」
ミコが右左を交互に指して、進む方角を訊ねる。
「「さぁな、取り敢えず・・・この森を抜けてから考えようぜ?」」
右手に填めた金の腕輪からリュートの声が聞こえてくる。
「そうよ!先ずは森を抜けなきゃ話にもならないわ!」
身体に宿った女神ミレニアも旅立ちの方角を決めずに言い切る。
「そっか、そうだよね。森を抜けないと始まらないって事だよね!」
魔王城の周りは一面の森だった。
どれ程の奥行きがあるのかも判らない、鬱蒼たる森が目の前にある。
踏み入れた者にどれ程の危険が迫る処なのかも知らずに、ミコ達は進んで行った。
森・・・エクセリアでは闇の支配する場所。
闇の魔物が棲む・・・禁忌の世界へと・・・・
「ホント・・・馬鹿にしているわ!」
蒼き瞳が広間を見詰める。
「折角来てやったというのに・・・こんな石ころになってるなんて」
光が届かなくなった魔王城の広間に、何者かの声が響く。
「「ぐるるるっ?」」
獣の声も同じ場所から聞こえてくる。
「ええ、そうよパンサー。
これがレッドアイの成れの果て・・・魔法石」
一瞬、声の主が屈んだ時、紅い髪らしいモノがふわりと靡いた。
靡いた髪にはリボンが結われてあるのか、長い髪が束ねて観えた。
「観てパンサー、これ。
魔法石をそのままにしておくなんて、何処の誰だかは知らないけど。
馬鹿にしているわ・・・私達の事を!」
「「ぐるっ?ぐぁるる?」」
獣と会話しているのか、声の主は紅い魔法石を差し出しながら。
「ええ、落とし主は戻っては来ないでしょうね。
だからあなたにあげるわパンサー、食べちゃっても良いのよ?」
声の主が傍にいるであろう獣に向かって石を放り投げた。
「「がぅ!」」
暗闇の中で何かが閃くと、紅い魔法石が消え去る。
((ぼわっ))
魔法石が消え去った場所で紅い炎が舞う。
「どう?おいしかった?パンサー・・・」
蒼き瞳が細くなると、獣へ向かって命じた。
「その石にレッドアイを変えた者・・・
私の楽しみを奪った奴。
赦さない・・・許してしてやるもんか。
この翔龍騎ピンクのパンサー<サエ>が討ち取ってやる!」
紅い炎が翔龍から溢れ、声の主を照らしだした。
白銀の豹、白銀翔龍の傍に立つ、ピンク髪の少女。
長い髪を紅いリボンで結い垂らす、ハスキーボイスの<サエ>と名乗った者の姿を・・・
第1章 End
・・・Continued on next time
やっと物語がここから始まるのです。
魔王城だった場所から?
そうです、普通じゃない物語だから・・・
魔王を求めるのはミコ達だけじゃない?
現れた者が求めるのは?
いよいよ序章の部分に戻ります?!
これにて第1章を終わりにさせて頂きます。
次章は?
次回 翔龍騎伝 ドラゴン・ライダー! 第2章 紅き魔法石 Act1
始った旅路の果てに待つものとは・・・帰還か滅びか?待て次回!




