翔龍騎伝 ドラゴン・ライダー! 第1章 龍と女神と幼馴染と?! Act10
ミコのピンチ?!
勝負はこれからだ!
振り解こうと力を籠めるミコに襲い掛かる毒蛇。
穿かれた顎に鈍く光る2本の牙。
毒牙を突き立てられれば一瞬で勝負がついてしまう。
毒蛇の毒で狂い殺されてしまう・・・
「させるかよ!」
蒼き目が輝く。
リュートの眼が敵に向けて力を放つ。
ミコを護る為に・・・
「龍よ!俺に力を貸せ!俺とミコに力を貸してくれ!」
ヘッドギアの碧き目が、備えられた力を開放した。
ミコに巻き付いた魔法の蛇が跡形もなく消し飛ぶ。
襲い掛かる顎に何かがぶつかり、毒蛇の頭を吹き飛ばした。
「なっ?!そんな馬鹿な?!」
レッドアイが初めて驚愕の叫びをあげた。
「貴様は?!それが龍の?龍の力だというのか?!」
吹き飛ばされた魔法に驚いた訳では無かった。
目の前に佇む魔法少女の姿に驚愕したからだ。
ヴァイパーの魔力を打ち消した者・・・
毒蛇の顎を吹き飛ばした少女・・・
白金の魔法衣に纏わり着いていた爆焔が晴れて行く・・・
白金の魔法衣を纏った翔龍騎の少女が姿を現す。
緑の瞳を半眼にしたミコがそこに居た。
「レッドアイ・・・今度はこっちからいくよ」
呟いたミコが右手を翳す。
魔法攻撃と感じたレッドアイが防御姿勢を執る。
右手を翳したミコの前に、魔法のモニターが現れ出る。
「戦闘・・・直接攻撃・・・全力全開・・・拳
<<エクセリア・モード>>
白金龍拳・・・」
現れ出たモニターを撫でる様に入力するミコ。
モニターは入力され終わると掻き消える。
「リュートに任せるから・・・この身体を。
だから・・・護って・・・姉さんと僕を・・・」
半眼のミコが呟く・・・何かに憑りつかれたかのように。
「ミコ?・・・オッケィーっ、任されたぜ!」
ミコを守護するリュートへ命令が下される。
「我が名を以って闇を砕け!我が力を以って闘え!
我は翔龍騎!白金のミコ!」
ミコが自らが何者なのかを名乗る。
レッドアイへと・・・初めて本物の翔龍騎たる<白金のミコ>と。
ヘッドギアのリュートの眼に、目標たる闇の者がポイントされた。
機械の眼がレッドアイを目標と定め、弱点を暴き出す。
闇の翔龍騎ヴァイパーの魔法衣を纏う女の弱点は・・・
「解ったぞ!お前の弱点は・・・そこだ!」
リュートの眼に、魔王を名乗る女の腹部の色が変わって観える。
腰と胸の牙状の突起物が蛇の牙となって映り、
「大きく開かれた口と同じと言う訳か!」
毒牙を持つ口が最も弱い部分と思えた。
リュートに任せたミコの身体から光が溢れ出す。
姉の美呼の身体になっているミコが、リュートに身を任せていた。
格闘技を身に着けているリュートに、全てを託して。
「いくぜミコ!勝負をつけてやるぜ!」
ミコの身体を操るリュートが、必殺拳へと力を注ぐ。
身についている空手の技と重なるような、神拳を放つ為に。
引き付けられた右手のナックルガードから、4方に魔法の蒼き光が現れ出る。
放たれる魔法力に併せて光が刃と化す。
拳の先で4つの刃が合さり、右手自体が一本の刀となる。
「貴様ぁっ?!その力は一体?!」
レッドアイは魔法少女の力を侮っていた事を後悔し始めていた。
先程まであどけない程の少女だった者が、
今は、強力な力を放とうとする勇者にも思えてしまった。
だが・・・気が付くのが遅すぎた・・・
「魔王ヴァイパーよ!白金龍拳を受けてみろ!」
レッドアイに向かって飛び上がったミコの一撃が下される。
リュートの眼に映る、腹部へと。
ヴァイパーの弱点でもある顎の中へと。
「終わりにしようぜ!毒蛇!」
リュートの咆哮が闇を切り裂いた。
とびかかって来る魔法少女へ防御障壁を展開していたレッドアイ。
しかし、脆くも障壁は蒼き拳に破られ、がら空きになっていた腹部へと突きこまれる。
闇の翔龍、毒蛇のレッドアイは、魔法拳をもろに喰らう。
「がぁはぁっ?!」
弱点を射抜かれた女が苦悶の叫びをあげる。
パンチを繰り出したリュートが、ミコの身体を振り返らせて。
「ジャッジメント・・・だ!」
((グワアアァッンッ))
毒蛇のレッドアイが爆焔を放ち倒れ去る。
勝負がついた・・・リュートに因って。
一撃で邪悪な魔法衣を剥ぎ取られた女がそこに居た。
毒蛇の翔龍騎ではなくなった女は、
元のコスプレ衣装を纏う変な姿の女でしかなくなっていた。
「くっそう!おのれぇっ・・・私の世界を返せぇっ!」
苦悶する女から怨嗟の呟きが聞こえる。
「この世界こそ私だけのモノだったのに。
やっと満足出来そうだったのに・・・畜生っ!」
恨み声をあげる女の姿が擦れ始める。
「覚えておけよ!この恨みは現実世界で返してやるからな!」
ヴァイパーの魔王だった女の姿が消えて行く。
「今度会ったらタダじゃおかないよ!この世界では負けたけど。
現実世界に戻ったら・・・いびり殺してやるんだからね!」
口惜しむ女が恨み声をあげていたが・・・
「なっ?!なぜっ?私・・・死ぬ?死んじゃうの?どうしてなのよぉ?!
戻れない?倒されちゃったら元にも戻れないの?このまま死ぬと云うの?」
消えゆく瞬間、戸惑いの言葉と悲鳴を上げて消える・・・
「嫌だぁっ?!召喚した蛇と一緒に死ぬなんて・・・嫌ぁっ・・・」
拒絶の叫びが姿と共に消え、辺りは静けさの中に包まれる。
「ミコの下僕、善くやったわ!褒めてとらす!」
ミレニアが無邪気に喜びの声をあげる。
「いやぁ、当然!ミコを護るのが俺の役目だからな!」
さも当然とでも言いたいのか、ヘッドギアが胸を張る・・・ないけど。
「ねぇミコ。あなたも褒めてやれば?下僕でもやれば出来るじゃないって!」
ミレニアが余計な事を言って来る。
「そうだね・・・まぁ、リュートだから。
褒めてやるのはこの後、帰れた後でってことにする」
姉の姿のままでリュートを褒めるのに気が咎めたミコが、
「だからさぁミレニア。
さっさと僕達を元の世界へ還してよ!」
話を逸らそうと女神に頼んだ。
「・・・・・・・」
身体の中で何かを呟いているみたいなミレニアが居る。
「?・・・何をぶつくさいってるんだよ?
俺達は魔王とやらを葬ったんだぞ?さっさと開放しろよ?」
ヘッドギアのリュートも催促して来る。
「・・・あれ?いや・・・あっと・・・ええっと・・・」
なにか、魔法の呪文を唱えているみたいな声と共に、混乱した女神の声が。
「あれぇ~っ?おかしいなぁ?どうしてぇ?」
ミコとリュートが盛大な冷や汗を垂らす。
「まさか・・・ミレニア・・・さん?」
「帰れないとか・・・ないよな?」
2人が一番恐れている一言を呟く。
「・・・その・・・まさか。
・・・・なの・・・・れすぅ!」
涙声のミレニアが・・・断末魔の言葉を告げた。
「ばっきゃろぉーっ?!」
「・・・死んで・・・ぷりーず?!」
姉の姿のままで怒るミコ。
額に着けられたままでどうする事も出来ないリュート。
どうしてこうなった?!
魔王を倒した筈なのに?!
なぜだか帰る事が出来ない?!
それが意味するのは?
ああ、損な女神が原因か・・・どこも同じだなぁ・・・にひっ!
次回 第1章 龍と女神と幼馴染と?! Act11
帰れないとは損なヤツラだ・・・え?!そんな訳があったのか?
君達が一番損な子達だった訳かぁ(棒)




