翔龍騎伝 ドラゴン・ライダー! 第1章 龍と女神と幼馴染と?! Act9
遂に始る魔王との決戦!
いや、イキナリと言った方があたってるな・・・・
闇の姿になった女・・・毒蛇の翔龍騎レッドアイ。
魔王城の広間で戦いが始ろうとしていた・・・
赤紫色の髪を振り乱して睨みつけるレッドアイ。
身に纏った力に絶対の信頼があるというのか、少女を蔑むような眼で見下ろしている。
レッドアイの右手に魔力が集中し始め、紅い魔法陣が描かれ始める。
「お前の名は?墓には何と名を刻めばいいのだ?」
白金色に輝く翔龍騎へ、嘲るように訊いた。
「一瞬で方を着けてやっても良いのだぞ?
・・・最期に言い残す事はあるか?」
紅い魔法陣が巨大化していく。
レッドアイは一撃で葬り去るつもりなのか?
魔王の名に恥じない力を持っているのだと示そうとしているのか?
少女の身体から大人の身体に変身したミコはレッドアイに目を向けたまま、
「ミコ・・・私の名はミコ。
あなたは闇を求めているの?力を邪悪に染める者なの?」
静かな口調で訊き返した。
落ち着いた口調で返されたレッドアイの顔が怒りに歪む。
「貴様・・・我を誰と思っているのだ?
我は<魔王>を名乗るレッドアイ。
毒蛇の翔龍騎を纏う者だぞ?!知らずにここまで来たというのか!」
魔王城の広間で。
城主たるレッドアイとミコが睨みあう。
「私は女神ミレニアに因って召喚されたミコ。
白金の翔龍を纏う者・・・」
レッドアイの魔法攻撃に対して身構えるミコが、
「そして龍との契約を果たす者・・・魔王を倒す者だ!」
握り締めた右手をレッドアイに突き付ける。
<あのさぁ・・・ミコ。カッコつけている場合じゃないと思うんだけど>
身体に宿るミレニアがため息を吐く。
「あ・・・あれ?僕・・・今何を話してたんだ?」
姉の身体になっている尊が宿る者に訊いて来る。
「ミコ?!自分を取り戻したようね。
どうやら初めて翔龍騎に変身したから、副作用が出ているみたいね。
魔王を倒すのはミコなんだから、しっかりしてよね?」
心配げなミレニアがミコに話しかけてくる。
「ミコが倒せなかったら、私もミコも、おまけに下僕もみんなやられちゃうんだから。
ぜぇーったいに勝ちなさいよ、良いわね!」
負けるなんて事は許さないとばかり、召喚したミレニアが頼んで来る。
「ミコ、その女神の言う通りだぜ!勝つんだ、いいな!」
額に装着されたヘッドギアからリュートも言って来る。
「うん・・・頑張るよ。
でもさぁ、ミコ姉の身体なんだし、そんなに強いとは思えないんだけど?」
少女から大人になったとはいえ、所詮は女の子には変わりがないと思って訊くが。
「何言ってんのよ!さっきよりは随分強そうになったわよ。
・・・って、強くなってるに決まっているじゃないの!」
ミレニアはミコの身体に流れる力を感じ取って言い放った。
「ミコは翔龍騎、ミコは龍を纏えた。
そして私の力を使えるの、女神の魔力を・・・よ!
あんな魔王に負ける訳がないんだからね!」
ミレニアにはミコの力が解るというのか?
「ミレニアの言う通りだぜミコ。
俺も全力でサポートするから、ミコも全力で闘うんだ!」
リュートはミコを護る為に、全力を使うと言った。
「二人とも、ありがとう。
でも、どうやればいいのかな?僕は喧嘩もしたことがないんで。
闘うって言われてもどうすればいいのか・・・」
大人しい性格が災いしたというのか?
ミコが格闘方法が解らないとリュートに訊ねた。
「あ・・・そうだったっけか。
ミコはいっつも俺の後ろにくっついて居たからなぁ。
・・・喧嘩なんてしなかったもんなぁ」
ヘッドギアからため息混ざりの声が返ってきて。
「それなら・・・俺に任せろ。
腕っぷしは俺の方が強いからな・・・そうだろミコ?」
闘いは任せておけと言って来る。
「そうだよな、リュートに任せた方がいいかも。
なにせ空手やっていたんだからリュートは・・・」
そう呟いたミコが思い出して口を閉ざす。
ー そうだ、リュートは空手を習っていた。
だけど・・・ミコ姉と僕の為に・・・辞めちゃったんだ・・・
思い出すのも辛い・・・過去の出来事。
自分達姉弟を庇って喧嘩をしたリュートに下された審判は・・・
ー 出場を取り消されてしまったんだ、喧嘩の所為で。
選手生命を閉ざされてしまったんだリュートは・・・
でも、リュートはその時言ってくれた。
<出場出来なくなってもミコ達を護れた事の方が誇らしいんだ>・・・と。
虐められる自分達姉弟を悪い奴等から護ってくれた・・・
ー まるで・・・そう。
正義のヒーローみたいに思えたんだ・・・リュートの事が・・・
思い出に居る幼馴染で年上のリュートは、輝いて観えていた。
「ミコ?!何をぼんやりしているの?!
レッドアイが攻撃して来るわよ!」
ミレニアの声で我に返った時。
頭上に佇むレッドアイが魔法攻撃を開始し始めた。
「ミコ!右に避けるんだ!」
リュートの声に身体が勝手に反応する。
素早い動きで魔法弾を避け、身を起こしざまに身構え直す。
「よし、上出来だミコ。次はこっちからいこうぜ!」
格闘方法に長けたリュートが促す。
ヘッドギアの碧き目が輝き、両足に力が入る。
「奴に向かって飛び上がれ!右手で奴を打ちのめせ!」
ジャンプして右アッパーを喰らわせろとリュートが教える。
「やってみる!」
足に力を籠めて床へと魔力を集中する。
魔法のバトルスーツが反応し、素早く床を蹴った。
((バンッ))
飛び上がったミコが右手にも力を籠めて、レッドアイにパンチを咬まそうとしたが。
「愚か者め!そんなへなちょこパンチを喰らう訳がなかろうに!」
飛びあがって来たミコを易々といなすレッドアイが、
「内部処へ飛び込んで来たつけを味わうが良い!」
いなしたミコの身体へ毒蛇の魔術を放った。
赤黒い蛇の尻尾となった魔法陣が飛びあがって来たミコに巻き付く。
「うわわっ?!なんだよこれ?」
毒蛇の胴に巻き付かれ、身動きを停められてしまったミコが喘ぐ。
「うぅっ!動けないっ?!」
縛り上げられた身体を捩るミコに、
「ミコ、慌てなさんな。
魔法の蛇なんだから、魔法で吹き飛ばしなさい!」
ミレニアの声がミコに教え、続けてリュートに向かって。
「龍の力をみせる時よ!白金の力は伊達じゃないってとこをね!」
ミコに纏う龍へ向けて命じる。
「おう!そうこなきゃな!
いくぜミコ、俺達の力をみせつけてやろうぜ!」
ヘッドギアの碧き目が光を放つ。
リュートの求めに宿りし龍が応える。
ミコの腕に備えられたナックルガードに力が籠められ、魔法の呪縛から解き放とうとする。
「もう少しだミコ。もう少し力を入れるんだ!」
促すリュートの声に頷くミコが、更に力を籠める。
ビキビキと音を立てて、魔法の蛇が千切れて行く。
「ふふふっ!足掻いてもこれを喰らえば一巻の終わりだ!」
レッドアイが破り去られていく魔法に焦る事も無く次の手を放ってくる。
闇より出でる毒蛇の頭が邪くな顎を剥いて襲い掛かる。
2本の毒牙を剥きだしにして・・・
「こいつを突き立てられれば、喰らった者は生きてはおられん。
邪気を受けた者は正気ではおられん!狂い死ぬが良い!」
邪悪な牙がミコに襲い掛かる。
魔法の毒蛇が牙を剥いてミコに喰らい付こうと迫る!
翔龍騎となったミコ!
決闘の行方は?
イキナリのピンチをどう切り抜ける?
次回 第1章 龍と女神と幼馴染と?! Act10
君達は帰らねばならない!勝利を収めて・・・元の世界へと!




