翔龍騎伝 ドラゴン・ライダー! 第1章 龍と女神と幼馴染と?! Act8
ミコは初めての変身を遂げる・・・
翔龍騎の姿へと!
「攘着<じょうちゃく>!!」
魔王の城で・・・
魔王城の広間に揺蕩う女から邪なる気が放たれ続けていた。
レッドアイが見下ろす少女から光が溢れ出した。
それは少女が唯の人間ではない証。
少なくても、魔法を使う者である証拠。
「ほほぅ・・・魔女っ子ということか?」
眼を細めたレッドアイが口元を歪める。
「ならば・・・少しは楽しむ事ができよう?」
右手から魔法の闇を取り出した魔王が、闇を少女に向けて放った。
ミコは金の腕輪に向けて命じる。
「リュート・・・相手は魔王なんだ。
いきなりだけど全力で闘うから・・・良いよね?」
ミコの口から承諾を求める言葉が漏れる。
「ああ!いつでも良いぜ!来いよ来いよ来いよぉっ!」
腕輪の声が力を求めて強く求めてくる。
「そっか・・・じゃぁ・・・放つからね?!」
ミコの胸の奥から翔龍の呪法が湧き出てくる。
「我が名は翔龍騎ミコ。
我が求めるのは闇を祓う力・・・我の仇を討つ力。
我が求めるのは強き力・・・鋼の龍と共に闘う力・・・」
詠唱がミコから流れ出る・・・
ー 黄昏より出でし者・・・
闇より暗き者・・・
陽の光より生まれし者・・・
我と我が力を以って呼び出さん・・・
我が下僕となりし鋼の龍を。
我が名を以って・・・
我の翔龍を呼び出さん -
声は自らの中へ。呪法は自らの力を呼び出す為。
そして・・・
レッドアイは眼を疑った。
眼下に佇む少女から白金の龍が現れ、少女を包むかのように被さった。
その次の瞬間には。
「なんだとおっ?!こいつが翔龍騎だとぉ?!」
白金の魔法衣を纏う少女・・・
いや、先程の女の子とは全くの別人の姿が、その場に現れたから。
ミコは龍に向かって命じた。
リュートよ全力で闘おうと・・・命じたのだ。
金色の腕輪が龍の咆哮をあげて変化を遂げる。
白金の龍が咆哮と共に姿を現す。
光の空間で佇んでいた龍とは全く違う姿で。
鋼鉄の姿・・・機械の身体。
この<エクセリア>に存在する魔法の機械。
神の手で創られたとでも言うのか、龍は鋼鉄の身体を持つ。
主人を載せる為の鞍が背に着き、長い首と尻尾を揺さぶる。
鋼の爪が敵を切り裂き、強固な足が敵を踏みつける。
両肩に着いた半透明の羽根で空を翔ける・・・
リュートの姿は鋼鉄の龍となった。
ミコの求めは全力だった。
龍を召喚したミコの身体は、全力を求めて天を指す。
「攘着!」
金色の光がミコを包み込む。
光の粒が少女を包み込む・・・次第に光がミコの身体に纏わり付いて。
~~ ミコの身体が光と共に成長していく・・・
背が伸び、髪が長くなって光り輝く。
幼い顔立ちが凛々しく、優し気な瞳が緑色に輝く。
胸が豊かに、お尻から長く足が伸び、足先まで光が伝うと。
金色の光の輪が身体中を何本も囲み、
移動するにつれて魔法の装備が現れ出る。
肩にショルダーガード、腹部に装甲板。
腰にシールドガード、両手にナックルガード・・・
白を基調にした魔法のプラグスーツが装着されていく。
魔法衣を纏ったミコの頭上から逆5角形のヘッドギアが降りてくると・・・
長い髪に包まれたミコの額に装着される。
装備された全てが白金の輝きを放つと、
額のギアにリュートの蒼き双眸が見開かれる ~~
少女の姿はそこにはない。
そこに立つ者は翔龍騎・・・ミコ
鋼鉄の龍を纏いし者<<ドラゴン・ライダー>>の雄姿だった。
靡く茶髪は金色を纏い、靡くローブは白金色に。
見開く眼は緑く・・・口元は凛々しく結ばれて。
((ガオンッ))
飛んで来た闇の弾が弾かれる。
鋼鉄のガードに因って・・・
「馬鹿なっ?!あんな小娘が・・・翔龍騎だっただと?!」
レッドアイが弾き返された闇の弾を観て叫んだ。
長い髪を靡かせて立つ娘が、足元を踏みしめるように構えると。
「うはははっ!これは面白い!実に面白い!
お前がどれ程の実力を持つ者なのか試してやろう!」
レッドアイは自らの身体に手を翳すと。
「我の力にひれ伏すが良い。
この<魔王>たるレッドアイの魔力に敵う者など、居る訳がないのだ!」
魔力を開放した・・・
赤紫の髪が闇に包まれ、やがて全身を覆う。
澱んだ空間に暗闇が集い、レッドアイを変えた。
その姿は・・・
「我は毒蛇のレッドアイ。
我が乗るのは毒蛇の龍・・・我に敵う者などいない」
黒く澱んだ姿。
紫と赤で彩られた魔王の姿に変身していた。
悍ましい姿になった女を観たリュートが。
「なんだ・・・蛇かよ。見掛け倒しだな」
ミコの額で呟いた・・・ヘッドギアから。
「でも、僕達は初めて闘うんだから・・・油断しちゃ駄目だよ?」
ミコの声が初めて呟かれる。
その声は少女だったミコとは違い・・・
「お前・・・美呼の声になってるぞ?」
身体が成長したミコの声は、姉の美呼と変わらぬように聞こえた。
「そう?リュート・・・変な気を起こすなよ?
ミコ姉の身体だって思うのなら、護ってくれよな?」
包み込んでいるのはリュートの方。
姉の身体になったミコに力を与えているのは幼馴染。
「ああ、心配すんな。
俺は美呼も大事だが、お前も大事なんだからな!」
リュートは約束を思い出して言い放ったのだが。
訊いたミコは真剣な声に、心がドキリと鳴る。
ー リュート・・・今言ったのは本気なんだ?
それともミコ姉の身体になった僕・・・だから?
兄の様に慕った・・・幼き日。
美呼姉と一緒に龍斗と遊んだ日々。
走馬燈の様に、記憶が流れ・・・
ー でも、リュートは美呼姉を独占した。彼氏になったんだろ?
幼馴染を越えて、姉と同い年のリュートは恋仲になったと思っている。
だから・・・少しだけ離れた。
だから・・・リュートを遠ざけた。
自分から身を引くのが辛かった・・・だけど。
ー リュートは僕の事をどう思っているんだろう?
本当に美呼姉を好きになって・・・愛しているんだろうか?
訊いてみた事は一度だってない。
そんな事を訊いてしまったら、これからどう付き合えば良いというのか。
もしも、本当に二人が恋仲だったら。
自分はどうすれば良いのか・・・分からないから。
「ミコっ!さっさとやっつけないと。
魔力にも限界があるのよ!」
身体の中からミレニアが呼びかけ、やっと自分を取り戻した。
「魔力の限界?それって時間制限があるの?」
ミレニアに訊いてみる。
「まぁ・・・それに近いわ。
翔龍騎には違いがあるけど強い力を持つ龍なら、魔力を喰らうのも早い筈。
だとすればミコの能力にも限りがあるから・・・魔力が尽きれば戦えなくなるわ!」
時間制限というより。
「それって。魔力が尽きる・・・尽きれば敵にやられちゃうって事なの?」
魔法書を開いて確認したミレニアが頷き、
「最悪の場合は。それでなくても闘う事が出来なくなるわ。
そんな事になればここから出る事も元に戻る事も出来なくなるわよ?!」
急いで決着を着けるように勧める。
「そっか・・・早期決着をって事だね!」
身構え直したミコが魔王たる女を見上げる。
闇の力を放つ翔龍騎で魔王の、毒蛇のレッドアイを・・・
ミコは翔龍騎へと変身した!!
魔王を名乗るレッドアイとの決着を求めて・・・
闘いは魔法力の制限下で行われる!
次回 第1章 龍と女神と幼馴染と?! Act9
君は翔龍騎・・・白金の龍を纏う者・・・その名はミコ




