翔龍騎伝 ドラゴン・ライダー! 第1章 龍と女神と幼馴染と?! Act6
ミレニアに因って気がついたリュート。
彼に因って事件は起きる・・・
女神ミレニアの持つ魔法書から金色の文字が浮き出る。
「さぁ!動き出せミコの下僕よ。
あなたはこれより鋼の身体を持つ者として生まれ変わるの!」
リュートに向けて放たれた魔術。
金色の文字が魔法陣となりリュートの身体に沁み込んでいく。
「気付け!あなたの主人に忠誠を尽くせ!」
ミレニアは魔法書に記されてある通りの魔法を与えた。
それがどんな副作用を生み出すのかも知らずに。
「う・・・ミコぉ?どうなってんだよ?」
意識が戻った・・・だが。
「体中が痛ぇ・・・し、重たい・・・」
身動きしようと身をもがくが、思ったように動けない。
眼を開いて状況を知ろうとするが周り中が暗くて良く見えない。
「ここは?そうだミコの奴は?」
ミコを包んだ光から助けようと手を出した処までは憶えているのだが。
その先は真っ暗な意識があっただけで、何も分からなかった。
「ミコの下僕!起き上がりなさいっ、早く!」
女の子が呼びかけている、頭の上から。
「鋼の身体に宿ったんでしょ?ミコの下僕?!」
また・・・頭ごなしに言われた。
「ミコの下僕だって?どう意味なんだよ。
俺はなぁ、ミコの幼馴染で危険から守ろうと・・・」
助けようとしたんだ・・・そう言おうとしたら。
「やっぱり、護りし者なのね!
そうだとしたら早く起き上がってミコを護りなさいよ!」
頭の上に居るであろう女の子が急かしてきた。
「ミコを?ミコがどうしたって言うんだ?
ミコが危険な目に遭わされているというのか?」
痛む身体に鞭を打って、リュートは跳ね起きた。
初めに映った景色の中に、少女の姿が見える。
茶色の髪以外は、そっくりな姿の女の子が。
「まさか・・・そんな馬鹿な?美呼じゃねえか?
俺はタイムスリップしてしまったのか?」
リュートの眼に飛び込んで来た女の子は・・・
「美呼俺だよ。龍斗だよ、幼馴染で隣に住んでる!」
自分の歳からずっと昔の姿を見せ呆然と立つ、
幼馴染の女の子と思ったリュートが思わず少女に取り縋った。
「美呼俺が解らないのかよ?リュートなんだってば!」
まるで人形にでもなってしまったかのように反応を返さない少女に叫んだが。
「下僕!早くミコと契約しなさいよ!」
先程から声を掛けてくる女の子が背後から命令口調で叫んでくる。
「誰だよお前は?!」
うるさい声に振り返ったリュートの目の前に、羽の生えた小人の少女が浮かんでいる。
「は?!なんだこれ?」
眼と鼻の先まで飛んで来た少女が・・・
((べしこんっ))
手に持った魔術書でリュートの顔面を打ち据えた。
「いたぁーいっ!」
だが、痛がったのは少女の方。
「痛たたぁっ、鋼だったんだった」
魔術書で叩いたが弾き返されて手が痺れてしまったようだ。
「あんた・・・誰?」
眼を点にしたリュートが訊ねると。
「ミコを召喚した女神ミレニア様よ下僕!
さっさとミコと契約しなさい!さもないと魔王にみんな殺されちゃうわよ?!」
痛む手を振りながらリュートへ答えた。
「はぁ?女神だって?何をふざけた事を言っているんだよ・・・
って?!マジですか?!女神ぃ?」
栗毛を靡かせて宙を浮く少女に向かって吠えるリュートに。
「そうよ!女神の命令なんだから、さっさと契約しなさい!」
指でミコを示し、ついでにリュートにも指を差すと。
「下僕だったんでしょミコの!
改めて契約すれば良いだけなんだから早くしなさい!」
ミコとリュートを指した手をパンと一叩きして合体する事を示す。
「はぁ?!俺がミコの下僕だって?
さっきも言った通り、幼馴染なだけで下僕なんかじゃないって!」
しかも・・・こんな少女に戻っている女の子になんて。
そう言い返そうとした時。
「ミコはあなたと一緒に元の世界へ帰るんだって言ってたわ。
それにはミコと契約して下僕にならなきゃいけないのよ。
ミコの力を引き出すにはあんたの身体が必要なの!」
目の前まで来た女神ミレニアが苛立ったようにリュートへ吠える。
「良い?契約してミコの下僕になりなさい!
そうすればミコは自我を取り戻せるの。
あなたという力を具現化させれる道具を手にすれば魔王にも負けはしないから!」
ミレニアが命じている言葉の意味がイマイチ飲み込めないが。
「それって・・・ミコを助けろっていう事だよな?
ミコが動けないのは俺が契約していないからだって事なんだな?」
少女化した幼馴染を救う為と言われたリュートが女神に訊き直す。
「そ・・・そうよ!
早く契約してあげないととんでもない事になっちゃうわよ?
ミコを助けるのが下僕の務めでしょう?」
「下僕かどうかは知らねぇけど。
俺はちっちゃい時に約束したんだミコと。
美呼と弟の尊を護るって!
こいつとは一緒に居るって誓ったんだからな!」
女神にリュートが知らせる、約束の在処が誰なのかを。
「その契約ってどうすりゃ善いんだよ?!教えろ!」
咄嗟にリュートがミレニアを握る。
鋼の手で掴まれたミレニアが押し潰されそうになって悶絶する。
「がはっ?!」
金属の身体になっている事を教えていなかった自分の迂闊さに舌打ちをする暇もなく。
「潰れりゅぅ・・・」
一声啼いて、目を廻す。
「おいっ?!目を廻す前に教えろよ!
どうすりゃミコと契約ってもんが出来るんだよ?!」
潰されそうになって眼を廻すミレニアが、方法を呟く。
「契約するには・・・純潔を・・・与えねば・・・ならない」
良くは聞こえなかったのだが。
「なっ?!なんだとぉっ?!純潔を?!」
リュートの耳には確かにそう聴こえた。
「この魔法世界の契約方法なのよねぇ・・・純潔を与えなきゃならないの」
意識も朦朧となったミレニアが主語を抜いて話す。
「純潔だって?!そんな事出来るかよ!」
リュートは聞き齧っている<純潔>の意味を履き違えているようだった。
「純潔・・・を与えれば契約となる・・・のよねぇ」
眼を廻したミレニアが純潔の意味を呟く。
キスだと教えられたと思ったリュートが生唾を飲み込み。
「判った!キスすりゃ―良いんだな?」
握った女神を見詰めて・・・
(( ぶちゅぅっ))
ちっちゃな女神にキスした・・・
「むぅわぁっ?!」
誰に・・・という主語が抜けていたミレニアの言葉で。
リュートは女神の純潔を奪い去ってしまった。
「これで・・・良いんだよな?女神さんよ?」
唇を離したリュートの手の中で女神が今度は本当に失神している。
「ありゃ?!おいっ?気絶するのかよ、おいったら!」
手の中でぐったりとしてしまっているミレニアの身体が透けて消えて行く。
「おいおいっ?!マジかよ?これで契約したんだよな?」
姿が消えてしまった女神が何処へ言ったのかと周りを見渡した。
どこにも姿は観えはしなかったのだが。
「「ばかぁっ!なんて事してくれたのよぉっ!
お前なんかに宿るつもりはないんだからぁっ!」」
何故だか体の中から直接ミレニアの叫びが聞こえた気がした。
「何処に行ったんだよ?契約は済んだんだろ?」
勘違いからミレニアと契約してしまったリュートに、女神が言い募る。
「「誰が私の純潔を奪えって言ったのよぉ!
私が契約しろって言ったのはミコの方なんだからぁ!
この、薄ら頓智気、アンポンタン!」」
女神が体の中で暴れているような気がしたが、この際気にせず。
「なんだって?!ミコの唇を奪えっていうのかよ?!」
だから・・・リュート君。
契約なんだってば・・・・聞こえが悪いぞ?
「「そうよ!そうだわ!!
こうなれば・・・あんたがミコの純潔を奪うのよ!
そうすれば・・・私も移動出来る・・・筈!」」
ミレニアは何かを思いついたようだ。
そう・・・口移し・・・という契約方法を無視した方法に。
「「にひひっ!その手があったんだわ!
こいつに宿るくらいならミコに宿った方がマシ。
ミコは女の子なんだから・・・問題なし子ね!」」
ミレニアはそう考えたようだ。
一方、ミコにキスしようと近寄ったリュートだが。
「いや待て。これは契約なんだ・・・そうだ契約。
ミコを救う為に必要な行いなんだ・・・キスじゃない・・・」
自分に言い聞かせようと、何度も少女の顔に近寄っては離れ・・・
「やっぱり・・・駄目だ!こんな幼いミコに。
いたいけな女の子の唇を奪うなんて・・・ファーストキスに決まってるんだから」
自分はロリコンでは無いと言い聞かせるリュート。
「「ええいぃっ!今更何を戸惑うのよ!女神の純潔を奪っておきながら!」」
宿った女神の力を発動させる。
「「下僕なら光栄に思いなさいよ!
私があなたの意気地ない心に喝をいれてあげるわ!」」
身体に宿ったミレニアが術を放つ・・・というか。
「わぁっ?!」
勝手に体がミコを抱き寄せ・・・
「むふぅ?!」
ミコへ口づけを交わしてしまった。
光が流れる・・・流れが交わされる。
力が目覚める・・・力が呼び覚まされる。
瞳が開く・・・瞳が輝く。
ミコの眼に光が戻る・・・
思わぬことにトチ狂うミレニア。
それが後にどう影響するのか?
まぁ・・・役得だったんだから良いだろう?
次回 第1章 龍と女神と幼馴染と?! Act7
君は遂に契約してしまう・・・白金の龍と・・・




