翔龍騎伝 ドラゴン・ライダー! 第1章 龍と女神と幼馴染と?! Act5
現れたのは<魔王>さんだった?!
これはいよいよ逃げられないかも?
澱んだ空間から人の影らしい物が現れ出て来た。
紅い二つの光が闇で光っている。
「お前達・・・我が城に入って無事に済むと思ったか?」
紅き二つの光から女の声が聞こえた。
「此処をレッドアイの居城と分かっておるのだろうな」
声の主は間違いなく城主魔王レッドアイを告げている。
闇から現れた人影が形となって現われ出でる。
二つの紅き光は双眸、赤紫の髪で顔を半ば隠した女・・・
「ほらっ、これがレッドアイ。魔王さんなんだって・・・」
女神ミレニアが片手を挙げて指し示し。
「見るからに・・・変なコスプレ魔女でしょ?」
レッドアイの衣装にいちゃもんを即ける。
ミコの前に現れた魔王レッドアイはショルダーガードを着け、
マントを翻し、豊かな胸を更に強調するレオタードの様なピチピチ衣装を身に纏っている。
おまけに腰にはトゲトゲの付いたヒップガードまで装着していた。
「確かに・・・コスプレ姉ちゃんだよな・・・どう見ても」
魔王というからにはそれなりに強いのだろうが、客観的に観ての感想は。
「ミレニア・・・この人が?魔王なんだよな?」
怖さより呆れに近いイメージが。
「そう!レッドアイ・・・この世界の魔王を名乗る者。
人間に危害を加えて支配しようとしている・・・らしいわ」
腕を組んでミレニアがミコに教えた・・・情報として。
「らしい・・・って、なんだよ」
不確かな情報ではないのかと、ミコが質すと。
「だって!私も女神になってまだ3日なんだもん!
詳しい事は教えて貰ってないのっ、ただ前任者の代わりに討伐せよって・・・」
ミレニアは剥きになって言い返して来る。
女神になってからまだ3日しか経っていないミレニアに、
それ以上訊くのは時間の無駄そうだった。
「その3日女神に召喚されたって・・・とんだ貧乏くじだよなぁ」
溜息と諦めで頭が重い。
ミコは横たわるリュートを観て、なんとか元の世界へ帰る方法を考える。
「ミレニア、この魔王を倒せれば、元の世界へ帰れるんだよな。
レッドアイとかいうこの女の人を打ち破れればこいつと一緒に戻れるんだったよな?」
ミレニアがちょこっとだけ話した帰還方法をもう一度確認する。
「えっ?ああ、そういう事らしいの。
魔王を倒せれば帰れるらしいけど?」
また・・・不確定な言葉が返って来る。
「ホントなんだな?ホントーに帰れるんだよな?」
女神に確約させる為に、ミコが念を押した。
「うっ?!ええ!そうよ!そういう事になってるわ!」
栗毛のミコに、栗毛の女神が押され気味に頷く。
「貴様ら・・・何をごちゃごちゃと話している?」
少女と妖精の様な者が仲違している様に観えたレッドアイが拍子が抜けた顔で聴いてくる。
魔王の声に我に返ったミコが、リュートを観て。
「リュート、待ってろ。今、助けて連れ帰ってやるから」
二人揃って帰還しようと言葉をかけた。
それにしても、相手は仮にも魔王を名乗る者。
並み半端なことでは倒せるとは思えないのだが。
「ミレニア、どうやって魔王を倒すのさ?
こんな体になってるし、裸同然なんだぜ?」
自分が何も装備していない女の子の状態で、どうやって魔王という女と闘えと言うのか。
ミコがミレニアに言うのも尤もな事だ。
「ああ、それね。ミコは力がある筈なんだけど?
私の属性を宿せる力と、魔法衣を羽織る事が出来る力とが・・・ね」
女神ミレニアが胸を叩いて自慢げに知らせてくる。
「ミコは召喚された時に身体が誰かと入れ替わった・・・か。
元々少女属性だったのかは解らないけど。
ともかく、あなたには力があるの。召喚に耐えられたのがその証拠。
そこの男みたいに動けぬ鋼と化していないから・・・」
ミレニアがリュートを指差し、改めてミコに言った。
「ミコは、白金のミレニアに因って召喚された。
私を宿す事が出来る唯一の騎士。そして龍乗りとなれる者。
その力は決して魔王にだって劣らない・・・筈」
最期は少々自信なさ気に呟くように言ったが。
「今は、ミコに賭けるしかないの!
先達の女神達も、龍騎士を召喚したんだから!
新米女神の私にだって力を授けることくらい出来るモン!」
そう言いながら・・・ミレニアは魔法で何かの書物を取り出して。
「え・・・ええぇーとぉ・・・属性転移。
龍の騎士にするのはぁ・・・ふむふむ・・・むぅ?!」
ページを繰ってこれから何をすればいいのかを調べ始めた。
「何やってんだよ!この新米女神は!」
目の前で魔法書物を読む女神ミレニアに怒鳴ってしまうミコへ。
「ちょっと・・・問題が発生。
これはねぇ・・・何というか。無理っぽいわ・・・」
本を凝視するミレニアがいきなり断って来る。
「はぁ?!なんでだよ今更?
そんな事をしていたら殺されちゃうんだろ?」
何かを委ねると言っていた女神が無理だと言った訳は?
「だぁーってぇ、宿るには・・・女神の純潔を与えて契約とするって。
とんでもない事が書かれてあるんだもん!」
女神の・・・純潔?!
純潔・・・だって?!
「・・・純潔って・・・何?」
ミコが本当に知らなそうな顔で訊き返した。
「ミコ・・・それ。真面目に言ったの?」
ミレニアがジト目で見詰めると、ミコは思いっきり頷いた。
「だぁ~っ、これだからお子ちゃまは・・・
イイコト?女神の純潔って云うのはねぇ・・・此処を与えるって事よ!」
ふんっと顔を突き出した女神が・・・唇を指差す。
「ほほぅ・・・キッス・・・なんだね?・・・って?!」
うんうん頷いていたミコが慌てて顔を紅くする。
「そうよ!女神の純潔を与えねば契約が出来ないらしいの。
そんな事出来る?出来ないでしょう?ねぇ・・・?」
真っ赤になったミコに向かってミレニアが念を押す。
「そ・・・そりゃぁ。初めて会った子にいきなりキスするなんて。
・・・じゃあ、どうすればいいんだよ?魔王を倒す方法が他にあるのかい?」
どぎまぎするミコが赤くなった顔を女神に向けて訊くが。
「そ、それは・・・ない・・・ような気がする。
ミコを召喚したのもその為だったんだから・・・ええいっ!こうなれば!」
ミレニアがミコの前に飛んで来て。
「良いミコ、これはキッスなんかじゃないの。
女神の力を宿らせる為の儀式なんだから・・・目を瞑りなさい!」
指を突き付けて命令して来る。
「えっ?ええっ?!本当にキスするのかよ?!」
戸惑うミコが冗談だろと、首を振ったが。
「時間が無いと言ったのは何処の誰よ!いいから目を閉じて!」
がっしり頬を掴まれたミコが逆に眼を見開いた・・・ら。
((ちゅっ))
ほっぺたにミレニアが唇を添えた。
((ドクン))
女神のキスが与えたのは・・・確かに魔法の力なのか。
ミコの身体の中で、何かが蠢き始める。
「うっ・・・うわっ?うわぁっ?!」
少女の肉体に何かが入り込んで来たように感じられる。
「なんだよこれ?誰かが・・・誰かに身体が取られたみたいだ!」
ミコの身体が自分の意志に関係なく動いた。
まりでマリオネットにでもなった気分と言えば解るだろうか?
「ふふふっ!成功だわっミコ!唇ではないけど。
宿る事に成功したみたいね、これであなたは竜騎士になった!」
手を叩いてミレニアが喜んでいたが。
「って・・・あれ?私ってここに居るのよね?
ミコに宿っている筈なのに・・・なんでなのよ?」
宿ったと思っていたが、どうやら失敗したようだ。
「しまったぁ!契約に失敗したの?
ど、どどど・・・どうしよう?!」
泡を喰ったミレニアがミコに言ったが、そのミコは何かに憑かれたような瞳で黙っている。
「わぁっ?!これはヤバイっ。
半分だけ宿ってしまったと云うの?どうすれば補正できるの?」
必死に状況の打開を考えるミレニアの眼に、鋼となっているリュートが映る。
「そ、そうだわ!このミコの下僕に授けて闘わせよう!
そうすれば・・・取り敢えず逃げ出すチャンスもあるかも!」
もはや、ミレニアは失敗を上塗りする事だけに気付いてはいなかった。
「鋼になった者を・・・生身に返すのは不可能か。
だとすれば・・・鋼のままで動けるようにすれば良いだけ!」
また・・・とんでもない魔法を掛けようとして、アンチョコ本のページを繰った。
「あ。あったわ!鋼の身体を持つ者に力を授ければ。
機械の身体を持てるようになる・・・か。まぁそれでもいいか?」
さらっと注意書きにも目を通さず、
ミレニアは大慌てで書かれてある魔法呪文を解き放ってしまった。
注意書きに記されてあるのは・・・
<著者注・この魔法は禁断にして解除方法が存在しない。因って掛けた者が責任を執るべし>
ああ・・・ここにも損な女神が居たのか・・・
契約・・・なぜそんな事を?!
純潔って・・・キス(まっか)?!
これはもしかして・・・なのか?!
貞操の危機なのでは?!
いや、あのね・・・変な意味じゃないからね?
次回 第1章 龍と女神と幼馴染と?! Act6
いよいよ迫る魔王さんに、損な子達は・・・何をやってるんだ?!
で?ドラゴン・ライダーになるのかならんのか?どっちやねん・・・