#9 ロリっ子がお小遣いで武装する話。
さて、街の裏にある商店街に来た。
色々なお店があるが……まずは服だ。
仕立屋に行く。寂れてはいるが、品揃えは良さそうだ。
白いワンピースを二着買う。3,000フェルだった。残金、45,500フェル。
二着ともアイテムボックスに突っ込んでおく。『装備品』というファイルにね。
次に武具屋に寄る。
「あぁあ? んだぁ? ガキが来るたぁ珍しいなぁ」
無愛想な店主が店の奥からヌッと出て来た。
凄く背が高くて、髭が生えてて、バンダナを頭に巻いた、いかにも鍛冶屋って感じの人。
「あの……私でも、武器って買えますか?」
「ああ、金さえあればな。……ただ……俺が打った武器を下手な事に使いやがったら……ぶっ飛ばすからな」
うひぃ、怖いなぁ……
ここは中々品揃えがいいなぁ。
両手剣、片手剣は勿論、斧とか、槌とか、色々だ。
でもいずれも木箱に突っ込まれて埃を被ってる。売れてないのかなぁ?
店を見て回ってると、唯一ショーケースに飾ってある武器があった。
それは刃渡り四十センチくらいのナイフ。
刃は鋼色に輝いており、柄には幾つかの宝石がデコレーションされている。
でも、値段が書いてない。
「そいつは売り物じゃねぇよ」
「ひぃーっ!」
いきなり背後から話しかけられたので変な声を出してしまった。
「売り物じゃないって……どうして?」
「そのナイフが俺の最初で最後の失敗作だからだよ」
失敗作? これが?
……そうは見えないけどなぁ。
「確かにそのナイフは軽く、刃毀れしないっつぅ上等品だが……使い手を殺しちまう妖刀だよ」
「使い手を……殺す?」
「ああ。使い手の魔力を際限なく吸い上げちまう。常人なら一分も握っていれば、ばたんきゅーだぜ」
ばたんきゅーって……今日日ぷよぷよじゃないと聞かないよ……
でも、魔力を使うっていうのなら私にぴったりじゃないか。百万近く魔力があるからね。
「じゃあ、私、これ買います」
「……はぁ? ……上等だ。だったら十分。十分このナイフを握っていてみろ」
そう言って店主はショーケースの鍵を開け、私にナイフを渡す。
覚悟を決め、握る!
……軽い。凄く軽い。鉛筆を持ってるみたいだ。
確かに、力が吸われている気がする。でもこの程度なら……
三十分後。まだ私は疲れてない。
店主は凄く驚いていた。
「ああ、もういい。嬢ちゃんが飛び抜けて魔力に自信があるのは判ったよ。売る。売ってやるよ」
「やたー!」
武器を手に入れた! さて、後は防具だな。
「嬢ちゃん、まさかその服で行く気か?」
「……いえ、防具も欲しいんですけど」
「ならこれを貰ってくれねぇか? 本当は甥の誕生日祝いに打った手甲と脛当てなんだがな……誕生日の二日前に死んじまって結局渡せず終いだったんだ」
そう言って店主は店の奥の木箱を引っ張ってきた。中には小さな手甲と脛当て。
「ありがとうおっちゃん!」
「ナイフの代金は20,000フェルで良い。防具はサービスだ」
装備品を手に入れた。