#7 ロリっ子が北十字星に恵まれる話。
「で、何でこのお嬢ちゃんはここにおるのかな?」
ノーザンさんの疑問は受付嬢、メリィさんが解消してくれた。
「ああ、可哀想にお嬢ちゃん。親はどうしたん?」
「えと……いません……」
この世界には、だけど。
「居ない……判らない、じゃなくて……うん。よっしゃ。俺がお嬢ちゃんに名を与えよう」
「え、いいん……ですか?」
「おう。気にせんでええで。それじゃあお嬢ちゃんの名は……アイリスだ。アイリス・ペンタゴンでどうやろう」
「性まで付けるんですか……」
アイリス……ペンタゴン……いい名前だなぁ。
あれ? もしかしてノーザンさんっていい人?
「哀れな嬢ちゃんにもう一つプレゼント。俺の加護を付けてやろう。どこに紋、打つ?」
「えぇ!? ノーザンさん、其処までしなくとも……」
ごもっともですメリィさん。でも私、貰える物は貰っとく主義でしてね。
「じゃあ……左手で」
「ん。見してみ」
私が左手を差し出すとノーザンさんは親指の付け根をニギニギし始めた。
なんか……凄い恥ずかしい……
グッと力を入れられる。親指の関節が外れそうだけど、なんとか耐える。
焼けるような熱さを感じる。ふとノーザンさんの顔を見ると、髪の毛が逆立っていた。
まるでジブリの演出みたいだ。
「ふぅ。終わったよ。ご覧」
改めて自身の左手を見ると親指の付け根に白鳥座のような十字が黒く刻まれている。
「おおっ! かっこいい! 有難うございます!」
「ううっ……可愛い……っ! そうだ、嬢ちゃん。嬢ちゃんは幾らもお金を持ってへんやろう? 少しばかりお兄ちゃんが恵んでやろう」
そう言ってノーザンさんは財布からポンと紙幣を五枚くれた。
10,000フェル紙幣を五枚。
「ちょ、ちょっとノーザンさん。甘やかしすぎですって! 何も見ず知らずの女の子にこんな大金……」
「ええんよ、お嬢ちゃん。このこわーいネーちゃんの言う事は聞かんでも。じゃ、頑張りなよ」
「ぐむむ……だから貴方はロリコンだとかと言われるんですよ!」
「ロ、ロリコンちゃうわ! せめてシスコンって言え!」
そう言ってノーザンさんは行ってしまった。
あれ? あの人、クエスト受けに来たんじゃ?
「お、おほん。では、名も出来た事ですし、登録料として1,000フェル頂きますが?」
メリィさんにさっきノーザンさんからもらった紙幣を渡す。
「はい。確かに。では少々お待ちください」
よっしゃ。これで私も立派な冒険者だ。
………問題は、身分証目当てでギルドカードを発行したと思われてるって事だ。
クエスト、請けられるだろうか……
そう言えば。ノーザンさんに加護を付けてもらったとか言ってたな。
もう一度自分を鑑定。
【 名 前 】アイリス・ペンタゴン
【 Lv. 】1
【 種 族 】転生者
【 職 業 】冒険者
【 体 力 】12/12
【 魔 力 】982384/9823
84
【 攻撃力 】3
【 防御力 】4
【 敏 捷 】34《+17》
【 状 態 】空腹
《北十字星の加護》
【 技 能 】《鑑定》
《アイテムボックスLv.Max》
【 修得済魔法 】無し
おお。付いてる付いてる。北十字星……ああ、ノーザンクロスだからか。確か白鳥座? だったっけ。そう言えばシスコンとかって言われてたけど……妹か姉はサザン・クロスか?
はは、まさかね。
敏捷に補正値が付いてる。ははん。なるほど。大体判った。
北十字星の加護を鑑定する。
【北十字星の加護】
敏捷が1.5倍になる。
敏捷1.5倍か。結構強いな。これは。もし攻撃力とかに補正が掛かってたらクソスキルもいいところだからね。
私の魔力に次いで良いステータス……というか、月と水素原子位の差があるけど、敏捷が上がるのは嬉しいね。
お、私のギルドカードが出来たみたいだ。