#3 ロリっ子が異世界で目利きする話。
目を開けたら、其処は見紛う事なき異世界だった。
煉瓦造りの家が立ち並び、人と人に近い人が街を往来する。
雑踏、喧騒、少し、心地いい。
大通りに面した路地裏に私は座っていた様だった。
取り敢えずはどうしようか。異世界の食べ物を食べてみようか。いやあ、やっぱり冒険者登録でしょ。シルヴァさんにせっかく魔力下さい! って言ったんだからな。魔術師になって、あの十三大大迷宮とやらを攻略してやる!
スクッと立ち上がってみる。
……ん? あれ? 身長、低くない?
さっきは興奮で余り気にしてなかったが街ゆく人、皆々身長が高い……いや、
私が小さくなってる!?
大通りを横切って川を覗き込む。
うわぁ。すっごい透明。美味しそう……
じゃなくて、水面に映ってるのは本当に私か!?
眼鏡、隈、黒髪、おさげ……はすっかり消え失せ、可愛い緑髪の幼女が其処にいた。
マジか。
……マジか。私、超可愛いじゃん。
「えっへっへー。私、勝ち組ーっ!」
おっと。そういえばシルヴァさんから鑑定の能力をもらったんだっけ。使ってみよう。
……どうやって使うんだ?
試しに右手を地面に着き、鑑定、と念じてみる。
すると、頭の中に情報が書き綴られた。
【ミレン石】
柔らかく、加工しやすい石。衝撃を吸収する性質がある為、石畳などによく用いられる。
おお! 凄い! これなら異世界でも何の心配も無いな!
川の水に手を突っ込み鑑定する。
【水】
アーデル山の湧き水を源泉としたアーデル川の水。ミネラル分が豊富。
おお! なんかもう、鑑定してるだけで楽しい!
あ、生き物に使ったらどうなるんだろう? ステータスとか見れるのかな? ちょっとやってみるか。
適当な……そうだ。あの冒険者っぽい人にしよう。
「うわっ! すみませんおにいさん……」
ぶつかりざまに鑑定。
【 名 前 】バスタイン
【 Lv. 】5
【 種 族 】人間
【 職 業 】冒険者
【 体 力 】521/521
【 魔 力 】129/129
【 攻撃力 】112
【 防御力 】98
【 敏 捷 】132
【 状 態 】健康
【 技 能 】特筆無し
【 修得済魔法 】無し
「いやいや、怪我は無いかい?」
「はい! 大丈夫です!」
成程。いたってノーマル、って感じだな。この世界ではステータス値は100前後が普通なのかな? あ、今度はあの荷車を曳いてる……猪みたいな奴を鑑定しよう。
「おっちゃん! この子の名前なんていうの?」
猪に乗っているおっちゃんに話しかける。
「あ? この子はな、ミミっつうんだ。もう一緒に仕事して三年経つかな」
「へー! 撫でてもいい?」
「ああ、いいぞ。首の裏掻くと喜ぶぞ」
首の裏を掻いてみる。ミミは目を細め、気持ちよさそうにする。
ついでに鑑定。
【 名 前 】ミミ
【 Lv. 】13
【 種 族 】ジョイントヒプノス
【 職 業 】
【 魔 力 】298/298
【 体 力 】1069/1069
【 攻撃力 】420
【 防御力 】312
【 敏 捷 】34
【 状 態 】疲労
【 技 能 】《牽引》
【 修得済魔法 】無し
うわ! さっきの冒険者より強いじゃん。
敏捷が低い所をみると、牽引に適した家畜ってところかな。
この場合の攻撃力は牽引力とも取れるかな。
「おっちゃんありがとう! ミミちゃん、ちょっと疲れてるみたいだよ?」
「ああ、今日の仕事はこれ運んだらお終いさ。じゃあ嬢ちゃん、荷台のりんご、一つ持ってけ! サービスだ!」
そう言っておっちゃんはりんごをポイと投げた。何とかキャッチする。
「おー! ありがとなおっちゃん!」
「いいってことよ!」
なんだ。異世界、良いところじゃん。