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#26 黒き百合と白銀の竜


 どうせこの大会もキュリアの圧勝だろう。そう思っていた。

 Dグループ予選、結果は、五分で終了。

 勝ったのは、伝説の生物とさえ言われる竜人。名はミツバと言うらしい。

 白銀の鱗。天を裂く爪、衝く角。赤色の大翼。それでいて人一人殺さずに伸してしまう繊細さ。しかもイケメン。会場は歓喜に包まれた。主に女性の声が多いと感じた。

 係員によって伸された参加者が片付けられた後、キュリアとBグループの勝者の試合が始まったが……決着はすぐついた。元々キュリアはタイマンが得意なタイプのようだったからね。

 同様に、Cグループ勝者とミツバの試合もすぐ終わった。

 

 私が見たところでは、キュリアは相手の攻撃を防いで体術を極めて落とすタイプ。それよりも強力なのはあの強烈な左ストレート。この前はでっかい猪の頭蓋を砕き割っていた。

 逆に、ミツバは絶大な火力で叩きのめすタイプ。しかも、あんなナリで結構身軽な所がかなり武器になっている。しかも、翼がある分、普通の人間よりも加速が速い。跳躍力もかなり強化されているみたいだけど、飛ぶ事は出来ないみたい。あと、人間より腕が大きい。まさに竜の様だ。爪も鋭い。

 さて、いよいよ決勝が始まる。


「さあ! お待たせいたしました! 両者準備が整った様です! 早速入場していただきましょう! このコロシアムの英雄! 未だ負け無し! キュリア! ビルバードォォォ!!」

 赤ゲートからキュリアが。帽子を胸に当て、一瞥。キュキュッと被り直し、気合を入れている様だった。

「そして! 伝説が目を醒ます! そいつはまさにダークホースならぬシルバードラゴン! キュリアの無敗伝説を崩すか!? 竜人、ミツバァァァ!!」

 青ゲートからミツバが。天を仰ぎ、炎を噴いた。数十メートルの火柱が立つ。会場は騒ぐが、私はちょっと嫌な事を思い出した。


「いっけー! ミツバァ! 負けんじゃないわよーっ!!」

「負けるにゃーっ!!」

「ミツバくーん! 頑張ってくれよーっ!」

 私の三つ隣に座る赤い髪の女の人、猫の獣人っぽい女の子、穏やかそうな魔術師が。

 負けじと私もエールを贈る。

「キュリアーー!! 頑張ってーー!!」

 今、ゴングが鳴った。


 至って普通の構えをするミツバ。対して、左腕を突き出すようにした独特の構えをするキュリア。両者とも膠着状態。距離、五十メートル程か。

 先に仕掛けたのはミツバ。持ち前の加速力を活かし、一気に距離を縮める。

 右腕を大きく引いている。あれは大振りのフックか? 腹に一発入れる気だろう。

 だが、キュリアにそんな事したら……キュリアは防御の構えを解き、体術を極める時の構えへと移行する。接触まであと……!

 グルリとミツバが宙を舞う。しかし、翼を羽ばたかせ直様持ち直す。まさか、其処まで読んでいたのか?

 再びミツバの右ストレート。左腕で受けるキュリア。

 左腕の大振り…………いや、尻尾だ!

 一発、腹にクリーンヒットが入ったキュリア。あれは痛いぞ。半径五十メートルはあるコロシアムを突っ切って飛んでいく。あの尻尾、どれだけ強いんだ?

 コロシアムの壁に当たる瞬間、キュリアの背後に魔法陣。噴き出す強烈な風。

 激突を免れたキュリアは、風をブースターにしそのまま飛び込むようにミツバの元へ。

 防御の構えをするミツバ。しかし抵抗虚しく、首に脚を絡められ、そもまま頭を地面に叩きつけられる。あれは痛そうだ。

 そのまま首を極められる。キュリアお得意の体術。これは直ぐ落ちるだろう……そう思ったら、その大きい両腕で強引に体術を解いた。どんな馬鹿力だよ。

 ミツバは炎を吹き出し威嚇する。距離を置くキュリア。

 両者再び膠着状態。が、キュリアの左腕が大きく膨れ上がる。黒いワイヤーのような物が複雑に絡み合い、ミツバの物に匹敵する程大きな左腕を形成した。黒一色の腕。爪は鋭く尖っていた。

 それを見たミツバはもう一度大きく火を吹く。白銀の鱗は逆立ち、爪は更に鋭くなる。翼膜が広がる。その姿はまさに竜。


 両者睨み合う。会場は静まり返っていた。殺気というものをひしと感じる。

 キュリアの背後にさっきの三倍はあろう程の魔法陣が三つ形成される。ゆっくりと回り出すそれはさながら波動エンジンの様だ。

 ミツバは口から依然炎が漏れ出している。エンジンをふかっしっぱなしといったところか。翼をはためかせ加速体勢は十分……

 そして、両者同時に駆け出した。

 私の目ではギリギリで追える程のスピード、加速力。

 キュリアの、ミツバの、左拳が、右拳が、互いの拳を砕いた。


 キュリアの黒い拳は解け、ワイヤーの束のような物がだらしなく垂れ下がっていた。

 ミツバの白い拳は砕けていた。鱗が肘の辺りで粉々になっている。



 勝敗は____



「りょ、りょりょ、両者、気絶ーーッ!!??」

 実況席から一声。その瞬間、会場は喝采に包まれた。

 両者を讃える声。正直、腕を打ち付けただけで気絶するなんて、ちょっとよく判らないが、良いものを見せてもらった。


 ちなみに、このコロシアムでのドローは約五十年ぶりだという。


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