#25 ロリっ子が観戦に熱心になる話。
私がアルートルに来てから数十日が経った。
ダンジョンと街を往復する生活。基礎体力も結構ついてきたんじゃないかな。
あと、魔獣とモンスターは違うらしい。
魔獣は獣で、倒しても残骸が残るけど、モンスターは魔力の塊みたいな物だから倒したら魔力になって霧散するみたい。モンスターは魔物とも呼ばれるけどそれだと魔獣と混同するからモンスターと呼ぶのが一般的……らしい。
そのモンスターの核、魔石を拾ってはギルドに売っ払う。それを繰り返していたら結構金額にも余裕が出来てきた。キャンドルさんから貰ったお金は取っておきたいしね。
でも生活は未だにテント暮らしだ。結構快適。街の外れの空き地が定位置。
さて、今日はコロシアムで一大イベントがある。
なんでも、とある領主さんがべらぼうに強い魔石を賭けて勝負させるらしい。いわゆるバトルロワイアルみたいになるのだろうか。
そしてその試合にはあのキュリア・ビルバードも出場するのだ! すっかりキュリアのファンになった私はキュリアの出る試合は欠かさず見ている。
さて、早速コロシアムに行こうか!
絡まれた。
「なぁ嬢ちゃん。最近儲かってるらしいじゃん」
「ちょっとにいちゃん達に恵んでくれねぇかな?」
三人組のゴロツキ。こんな幼気な幼女になんてことするのだろう。
って言いたいところだけど、腹一杯飯食べて、十分すぎる運動をしているせいか、前の世界の幼女よりも発育が良いみたいで、もう身長は百三十センチ近くある。
胸……はまだみたいだけど。前世とは違って大きくなるといいなぁ。サザンさんやシルヴァさん程のものは要らないけど。
じゃなくて、どうしてやろうか。こいつら。
「持ってないの? じゃあコロシアムの入場料はどうするつもりなのかなぁ?」
うわ。私がコロシアムに通ってるのもバレてるよ。
「アリーナの前売り券買ったんですけど」
そう。大枚叩いてアリーナ席の前売り券を購入したのだ。
「アリーナ席って高い奴やつだろ? 嬢ちゃん誰のファン?」
「キュリア・ビルバードですけど」
すると、
「マジで? 俺達もなんだよ!」
え?
「いや、頼むよ! 入場料分でいいからさ!」
って事で、一緒に行く事になった。
ゴロツキ達は無事私に入場料を払ってもらい入場。私はアリーナ席に。
うっひょー! 超近い! これなら大迫力の試合が見れそうだ!
「さあ皆様お待たせ致しました! 世紀の大試合! 秘宝、カリオストロストーンを賭けた大試合! 今回のVIP席には様々な権力者、著名人が勢ぞろい! 先ずはカリオストロストーンの所有者にして今回の試合のオーナー、ガーデンベルク卿! キュリア・ビルバードのファンという、キャロライン・ヨークシャー・ヘンゼルバーク子卿! 南西第九訃塔守護者、サザン・クロス!」
ブッと水筒の水を噴き出す。目を凝らしてVIP席を見てみると、確かにそこには巨乳の魔術学者の姿が。
サザンさんってそんなに偉かったんだなぁ。相変わらずガブガブと水を飲んでるみたい。
「今回の参加者は百二十人! A~Dブロックに三十人ずつ分かれてもらい、一人を選出します! 勝ち残った四人はトーナメントにて優勝者を決定します!」
優勝商品はカリオストロストーンと賞金。
ルールは単純。殺害禁止。予選は立っているのが一人になって十秒カウントで終了。本戦も同様、ダウンして十秒カウントで終了。
殺さないなら大体何してもオッケー。魔法の使用や急所の集中狙いは禁止ではないが、やると観衆からブーイングが飛ぶ。要するにマナー違反。
人対魔獣はその限りでは無いが、コロシアムの試合はあくまでステゴロ。それが面白い。
Aグループの試合が始まる。続々と入場する参加者。
……キュリアが居ない。あれ? キュリアはAグループの筈だけど。
……と思ったら、遅れて入場。帽子を被っている。
よく探検家の人が被ってるような頑丈そうな帽子。烏の物のような黒く大きい羽根飾りが一枚あしらわれている。超かっこいい。キュリアに似合ってる。
他の参加者が壁際に陣取る中、キュリアはど真ん中に突っ立つ。勿論、そんな事をすれば四方八方から狙われるだろう。しかも、あのキュリアだ。他の参加者から警戒されない訳がない。今にも飛び掛かられそうだ。
スコーンとゴングが鳴る。
瞬間、キュリアを倒しに掛かる参加者。さらに、その参加者の背中を狙う参加者……この混沌が面白い。
それを軽々と崩すキュリア。その軽い身のこなしは美しさを覚える程。
……結果、数十分で全員を伸してしまった。そしてあの気だるそうな表情。きゃーっ! カッコ良いーっ!




