#21 ロリっ子が『生きる覚悟』を決める話。
アルートルを目指して歩く事二日目。
杖を杖にして歩くとすっごい楽。持ち手に土が付いちゃうけど。
というか、杖って元々こうやって使うものだよね。
食料、水共にまだまだ沢山ある。余裕余裕!
……日も暮れてきたし、今日はここまでにしよう。
アイテムボックスからキャンプセットを取り出してテントを張る。
道中、良い感じの枝木を燃料に、薪をする。
コンロは光源にはならないからね。
魔力を送り十分に火の出たコンロに鉄板を乗せ、油を引き、ヒマシの街で買った生肉を乗せる。
ジュワッと良い音……たまらんね。
薪から焦げた枝木を二本拝借し、菜箸代わりにしてひっくり返す。
むふふ。良い香り。
良い感じに焼けたら、一日目に枝木をヴェネチカで削って作ったマイ箸でパクリ。
むっはぁーっ! 溢れる肉汁とさっぱりした味がたまらんね。
豚肉っぽい味だけど、なんて言うモンスターの肉だろうな。まあ、知らない方が幸せって事もあるから知ろうとはしないけど。
隣でガサッと音がした。
…………あ。こんな森の中で焼肉なんて一番ダメじゃん。肉の匂いにつられてモンスターが……
昨日みたいにパンと野菜炒めにすれば良かったかな。
コンロから離れ、ヴェネチカを構える。
草むらから出てきたのは大きな猪だった。
「ブフォー……」
私の目を真っ直ぐ見ている。猪は私より大きい。
鑑定なんてしてたら牙に貫かれるだろう。
勝てる。信じて疑うな。そうすりゃあ大体の戦に勝てる。ルーガー冒険記にもそう書いてあった。ルーガー先生は思い返せば暴論ばっかり言ってたけど、元気付けられるものも沢山あったからな。翻訳作業は無駄じゃなかった。
さて、この状況で私が勝つ為には……!
「閃光!」
先手必勝!
唱えた瞬間、薪の炎以上の明かりが辺りを覆う。
私の視界も一瞬白くなったが、目に異常はない。
猪は何が何やらわかっていないようだ。
今の内!
回り込んで、刃渡四十センチのナイフを首に振り下ろす!
ヴェネチカの切れ味は尋常じゃない。しかも、魔力を込めれば込める程に切れ味が増す。
それは私のような非力な幼女が振り下ろしても猪の頸を落とせる程。
毛を切り、皮を断ち、肉を割き、骨の継ぎ目を通り、血管を切り裂く。
盛大に返り血を浴びた。
頸を失った猪の体は数秒痙攣し、どさりと崩れた。
白のワンピースが赤に染まる。
頬にも生臭い血が付く。
『生きる覚悟』は『殺す覚悟』。ルーガー先生も言っていた。
成程。生きる覚悟か。理にかなっている。
猪を殺したのは初めてだった。




