#18 ロリっ子が翻訳家になる話。
「で、『蹴鞠』というのは、貴族の間で流行った遊びで、ボールを足で蹴り上げて回していって、落とさないようにする、といった娯楽です」
「ふむ。成程……君は本当に神象形が読めるんだね。驚いたな」
あれ? というか、この人、漢字読めないんだよね? なんで意味が解るのかな?
「前半三つは料理の解説本と思しき物に記されていたもの。次の三つは医学書らしき本。『蹴鞠』は娯楽集のような本から特に難しいのを選んだんだが……どれも僕の予想と大体合っていたね。読み方はまあ、解らなかったが、君のお陰で解った。有難う」
そう言ってお辞儀する男性。そう言えば名前、知らないな。鑑定。
【 名 前 】キャンドル・シュトレインメール
【 Lv. 】34
【 種 族 】混血(エルフ、人間)
【 職 業 】考古学者、文学者、哲学者、魔術学者
【 体 力 】197/197
【 魔 力 】1982/2098
【 攻撃力 】198
【 防御力 】222
【 敏 捷 】156
【 状 態 】睡眠不足
【 技 能 】《速読Lv.3》
【 修得済魔法 】《自動回復Lv.2》
ううん……微妙なところだなぁ。
いやいや、そうじゃない。大切なのは数値じゃなくて、名前だ。
キャンドル・シュトレインメール……随分と仰々しい名前だ。
それに多くの学問を学んでるんだな。考古学、文学、哲学、魔術学……か。
どれもこれもちんぷんかんぷんだけど。
「ああ、そう言えば名乗ってなかったね。僕の名はキャンドル・シュトレインメールって言うんだ。よろしく、アイリスさん」
「よろしくお願いします、キャンドルさん。で、私は何をすれば?」
「ああ、それなんだがね……」
そういってキャンドルさんは金庫から出した数冊の本を抱え、どさりと私の前に置いた。
これが神象形の本だ。アイリスさんにはこれを訳して欲しい。との事。
お安い御用よ。
「ああ、無理しちゃあいけないよ。僕は大丈夫だから、君はじっくりと訳してくれ。大事なのは速度ではなく精度だからね。訳した内容はこっちの本に纏めてくれ。なるべく原書と同じ位置にね。頼んだよ。君の部屋は二階の階段を上って左の部屋だ。基本的な筆記用具はあるからね。あと布団も。寝る時は内鍵を掛けてもらっても構わないからね。トイレは向いの部屋。ご飯は出来たら教えるよ。僕は基本、リビングか書斎にいるから。じゃあ、よろしく!」
言い終わるとキャンドルさんはどさっと私に占めて六冊の本を持たせた。
は、はぁ。まあ、大体解った。つまり、泊まりで働けと。
……いいじゃん。やってやる!




