#2 冴えないJDが異世界転生する話。
何か、何か大切な事を忘れている気がする。
偶に考えるんだ。その忘れている事が何なのかを。
何故かって、思い出そうとしないと、忘れている事すらも忘れてしまいそうで、怖いんだ。
或る日、家のインターホンが鳴った。
「はい……どちら様?」
玄関先には、見知らぬ女の人が立っていた。
「えと……涼白薺さん……ですよね?」
はい、と私が言うと、彼女は初めまして。と言った。
私も初めまして。と返すと、彼女は酷く落ち込んだ。
「……済みません。人違いでした」
彼女は去り際に、目も合わせずにそう言った。
その言葉には、微かな怒気が混ざっていた気がするんだ。
【Take 】
「パンパカパーン。シルヴァちゃんだよーっ」
意識が途切れたかと思ったら、目の前には白い世界。真っ白。びっくりするほど。
そして、私の目の前には巨乳で高身長なおねーさんがいた。これまた真っ白な服を着ている。
ああ、女神的な奴か。そう思った。
……って、マジで?
「マジも大マジ。聡明な薺ちゃんの思ってる通り、私は女神なのだーっ」
涼白薺。私の名を知っている。
「そうだよー? 神様は何でもお見通しなのだ!」
どうやら大マジらしい。この女神の名はシルヴァ。
で、私は異世界転生できるのだろうか?
「出来るよー? 勿論! で、君に選んでもらうのは転生特典なんだけど……」
「ま、魔法はありますか?」
「うん。勿論! で、転生特典、何がいい?」
「えと、えっと、 魔力と、アイテムボックスとか……で、あ! 鑑定、とかあるといいなぁ……で、出来ますか?」
「できるできる! じゃあ、それでいい?」
「はい!」
「うん。判った。で、その代わりと言っちゃあ何だけど……」
お? 何だ? これだけ優遇してくれるなら私にできる範囲なら何でもやっちゃうぞ。
「ええと、今から薺ちゃんが行く世界にはには十三大大迷宮っていうダンジョンがあるんだけど、その中でも庭と奈落ってとこを攻略して欲しいんだ」
成程。十三大大迷宮か……楽しそうだなぁ……
「以上ですか?」
「うん。それだけ。いってらっしゃい! 今度の人生は大切にね!」
解ってるさ。始まるんだ。私の冒険が。
霧が晴れるように、段々と意識が聡明になっていった。
「いやあ、シルヴァも人が悪いね」
白い世界で白いダッフルコートを着た少年が呟いた。
「んー? 何が?」
「あんな女の子に十三大大迷宮なんて攻略できる訳がないだろう。ましてやあの程度の特典でさ」
「……多分、出来るよ。運命が導いてくれるさ……ささ、仕事、仕事!」
伸びをするシルヴァに少年が声を掛けた。
「お前は何を企んでる? 自身の力を削ってまで、何故あの人間に肩入れをする?」
「んー?」
「それに、あの人間の魂、あれは……」
シルヴァの顔が狂気の笑顔に変わった。