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#17 ロリっ子が異世界転生者の本分を発揮する話。


「それではこちらが報酬と余剰分の買い取り価格ですね。1,500フェルです。内訳はお聞きになりますか?」

「いや、いいです」

 紙幣と硬貨を掴み、アイテムボックスに入れる。

 ギルドの酒場で簡単な昼食を済ませ、またクエストボードへ。

 よっしよし。張り切っていくぞう。

 アーサーウォルフ三頭討伐、木材収集……なんだかなぁ。パッとしないクエストが多いよ。


 ……ん? なんだろう。クエストボードの端っこに日本語が?

 それは直ぐに判った。ここの世界、少なくとも国の文字はアルファベットの発展系みたいな形をしてるし、読み方とか文法も似てるから最悪、神様にそういう特典を貰えなくともギリギリ生活出来る。

 だけど、日本語。しかも、漢字だ。

 クエストの紙にはこう書かれている。


 こちらの文字を読める方を探しています。『冷奴』


 冷奴。ひややっこ。そう。あの豆腐だ。

 チベたくて美味しい、あれだろうな。

 でも、依頼書が高くて手が届かない……


「なんだい? 君、これが欲しいの?」

 高身長のイケメン冒険者が取ってくれた。

 お礼を言って、受付へ。

 どうやらこの依頼主は町外れの場所に住んでいるようだった。



 受付のお姉さんから渡された地図はここだよね。

 ごく普通の一軒家。本当に、なんの変哲も無い家だ。

 ノックする。コンコン、と乾いた良い音がする。

「あー、すみません。ちょっとお待ち……う、うわあぁっ!?」

 ……何かが崩れる音がした。

「ああ、ごめんなさ……ど、どちら様?」

 シックな扉を開け、出てきたのはいたって普通の男性だった。メガネを掛けている、すごく穏やかそうな男性。

「えと……ギルドのクエスト見て来ました。アイリス・ペンタゴンと言います」

 私がそういうと、男性は両手を取って激しく揺さぶった。


「ああ! 君、神象形が読めるのか! いやあ、非常に有り難い! ささ、上がって! 君に訳して欲しい本が何十冊もあるんだ!」

 リビングルーム……らしき部屋に通される。不思議に思うのも無理ないと思う。この家、廊下も階段も、あらゆるところが本だらけ。

「さて……まずは、君が本当に神象形文字を読めるのか。不躾だが、少しテストをさせてもらおう」

 そう言われ、幾つかの漢字が書かれた紙を差し出される。

 書かれている漢字は簡単なものだった。

『醤油』、『胡椒』、『冷奴』、『肝臓』、『癌』、『視神系』、『蹴鞠』……


 どれもこれも丁寧な文字とは言えない、乱雑なものだったけど、かろうじて読めた。

「どういう意味か説明してもらえるかい?」

「はい。えと……まず、『醤油』これは液体の調味料です。塩辛いです。『胡椒』は……これもまた調味料ですね。粉末で、辛いです。『冷奴』は冷たくて、美味しい豆腐という食べ物で……」


 一つ一つ丁寧に説明する。まずは信用を得ることが最優先だ。

 なんたってこのクエストの報酬は二百万フェルなんだから。

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