表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/30

#アーカイブ:2 『ギルドマスターとノーザンの会話記録』


 アイリスが意気揚々とアーデル山へ向かったその時、入れ違いになるように一人の男がギルドへと入って行った。

 その男はノーザン・クロス。現在、ギルドに在籍する者としては最強である事が確認されている。

 ノーザンがギルドに入るや否や、ギルドから出て行く冒険者達。手練れなら知っている。北十字星の噂を。

 曰く、彼が通ったギルドのクエストボードはまっさらになる。

 曰く、彼はそのすべてのクエストを一日で終わらせる。

 曰く、彼は霊帝十三訃塔の守護者を妹に持つ。

 様々な噂があるが、確定的なのは、この場の誰も彼に勝てないという事。

 しかし、この日のノーザンはクエストボードには見向きもせず、カウンターの奥へと去って行った。


 ギルドにはギルドマスターという人物がいる。

 そのギルドにおける最高責任者だ。

 ギルドマスターの業務はギルドの管理のみならず、周辺のダンジョンの環境確認や、魔獣の生態系の管理などもその仕事に入っている。

 部屋にノックの音が響いた。

「入れ」

 重く響く声。ここ、サウスギルド支部のギルドマスターのものだった。

 かなり老獪な出で立ち。長く、白い髭とは対照的に禿げ上がった頭。

 少しエルフの血が入っているのか、耳は若干の尖りを帯びていた。

「失礼します」

 入ってきたのは、ノーザン。普通の男、という見た目をしているものの、その中身はまさに化け物と形容するのが適切だった。

「十三年程前か。最後に会ったのは」

「そんなに昔じゃあないですよ。精々八年かそこらです」

 ギルドの職員がポットとティーセットを持ち、部屋に入った。

 静かに紅茶を淹れ、ギルドマスターの背後に立つ。

「……どうも」

 ノーザンは一つ、小さく会釈し、ティーカップを持ち、紅茶を啜った。

「お主をわざわざセントラルから喚んだのは他でもない」

(ガーデン)の件ですか」

「左様」

 ノーザンはやっぱり、と合点がいった様な表情を浮かべた。

 続けて、大きな溜息。

「そう気を落とさんでくれ。今頼める冒険者はお主しかおらなかったのでな」

「サウスギルド本部付けの……ハルトはどうしたんですか?」

「あやつは実力はあるが守銭奴だからの。今回の件を担当させるにはちと信用がの……」

 ノーザンは口に運ぼうとしたティーカップの動きを止めた。

「マスター、それってまさか……」

「ああ。近々、『レプリカント』が現れる。お主にはそれを回収して欲しいのだ。勿論、報酬に糸目は付けん。ギルドグループの威信に関わる案件なのでな」


 レプリカント。それは神の果実とも呼ばれるもの。三十年に一度、十三大大迷宮の一つ、(ガーデン)の最終階層の木に生るとされる。

 食したものは、不老不死を得られるとも。


「大分重荷ですね。分かりました。やりましょう」

 膝に手を着き重そうに腰を上げるノーザン。

 その眼光は、仕事人、プロフェッショナルのそれだった。


 ギルドマスターの部屋を出たノーザンは服を着替える。

 着慣れた、布製のよれた服ではなく、アイテムボックスから取り出した仰々しい紺のコートの様な服。そしてキャップ、指ぬきのグローブ。ギルド直属のある組織の制服だった。

 右の胸元、心臓の部分には『8』と刻まれ、背にはギルドの紋章が。


 ノーザン・クロス。その男は、世界最強の冒険者にして、ギルドグループ直属の特殊部隊、『サイバー』の一員だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ