表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/30

#15 「君である事に理由があると、そう思うかい?」

 

「……さま」


 駅のホームに私は立っていた。


 誰も居ない、駅のホームに。


「……お……様」


 それは異質な光景だった。こんな真昼間に誰も居ないホームを見るなんて、一度も無かった事だから。


 私は眼鏡を掛けていた。久々な気がする。


 黒い髪が視界に入る。緑じゃあない。


 ああ、大学に行かなきゃ。


 私は独り、電車を待った。


「やあ」


 不意に声が聞こえた。


 しかし、周りを見渡しても誰も居ない。


「こっちだよ」


 声は下から聞こえた。


 線路の上には、白いダッフルコートを着た少年が立っていた。


 危ないよ。と私は言った。


 彼は「君のほうが危ないよ」と言った。


 そんな訳無い。明らかに線路にいる方が危ないに決まってる。


「間も無く、三番線を、列車が通過します」


 ほら、危ないよ。


 危なくないよ。


 そんなやりとりが続く。


 段々怒気を孕んだ声になる私とは裏腹に、何回も同じ声のトーンで言う彼。


 電車のライトが眩しくなる。


「もしも、僕達の立っている場所が逆だったなら……ど____


 彼の声は最後まで響く事は無かった。


 代わりに、骨が砕けるような鈍い音がした。


 彼は鉄の蛇に喰われたのだ。




「お客様! 起きて下さい!」

「ほえ?」

 気づけば私は机に突っ伏して寝ていた様だった。

 気付けばギルドの側にある酒場。

 さっき、サザンさんと散々飲んで……お酒じゃないけど。そのまま電池切れて寝ちゃったか……

 私の横には若い女の店員さんが。メイド服みたいな制服を着ている。

「ああ……水を一杯貰えますか?」

 ウェイターさんは水差しから私のコップに水を入れた。

「はい、どうぞ」

 グイッと一気飲みする。

 うん。冷えてて美味しい。


「お勘定幾らでしょう?」

 財布を開きながら聞くと、代金はもう貰っているとの事だった。

 サザンさんが払ってくれたのだろう。有難い。

 店を出ると、酔い潰れた人がちらほら居た。


 宿も無いので今日も野宿だ。明日からはちゃんと冒険者やろう。

 外壁まで歩き、また、寝た。




「やあ」


 線路の上に、白いダッフルコートを着た少年が立っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ