#10 ロリっ子が自分は狩りが出来ないと気付く話。
街の公衆トイレみたいなところで着替えてみた。
いやあ、日本と違ってすっごく綺麗だった。
白いワンピースに白い防具。革で作られたナイフホルダー。
鏡をみるとそこには幼女の冒険者が。
うんうん。様になってるね。
今は昼過ぎくらいかな。ちょちょっと何かを狩って夕飯代を稼ごう。ノーザンさんのお金に頼りっぱなしもいけないしね。
街の外側には外壁が連なっていた。
【蓮華石】
赤褐色のとても硬質な石。僅かに銅分を有する。
この外壁は蓮華石っていうのかぁ。確かに硬い。
門を抜けると広大な平原と森が広がっていた。
うっわぁ。凄いなぁ。日本じゃこんな景色見れないよ。
あ、そういえばナイフの鑑定をしてないや。
【ナイフ】
触れている者の魔力を吸収し続ける剣。魔力を使うことで極限まで軽量化をしている。魔力を吸い続ける限り刃毀れしない。
ん? この剣、名前が無いのか。じゃあ私が銘を刻んであげよう。
うーん……妖刀……はっ! 素晴らしいアイディアが!
「お前は幼刀ヴェネチカだ!」
もう一度鑑定。
【幼刀ヴェネチカ】
触れている者の魔力を吸収し続ける剣。極限まで軽量化をしている。魔力を吸い続ける限り刃毀れしない。銘はアイリス・ペンタゴンによって刻まれた。『妖刀』と『幼女』を掛けている模様。
うぐっ、なんか、改まって説明されると小っ恥ずかしいなぁ……
妖刀と幼女を掛けてみた。うん。この剣は私にしか扱えないからね。
お、何やら前方に青いゼリー状の物体を発見。
スライムかな? 結構遠いけど……鑑定してみる。
【 名 前 】
【 Lv. 】2
【 種 族 】スライム
【 職 業 】
【 体 力 】16/16
【 魔 力 】3/3
【 攻撃力 】5
【 防御力 】1
【 敏 捷 】2
【 状 態 】健康
【 技 能 】《流動体》
【 修得済魔法 】無し
おお、本当にスライムだった。
レベル2か……倒せるかな?
草むらに隠れながらこそりこそりと近付く。
スライムはプルプルと体を揺らしながら草を食べているようだった。
青く透き通っている体は絶えず流動しているようだけど……剣、効くかなぁ?
……ん? よく見ると体の中心に赤い球がある。あれは……スライムの核かな?
ナイフをゆっくりと抜く。
「ていっ!」
っと振り下ろす!
が、
ヌルンと外れる。
流動体ってやつだろうか?
急いでスライムから離れて体勢を立て直す。マズいなぁ。今の私の体はまだ年端もいかない幼気な幼女だ。急な運動は体に毒。
なるべく短期決戦で仕留めてやる。
……と、思ったけど、逃げられた。
ジタバタと一目散に逃げる姿に心を打たれてしまった私は、それ以上追撃することは出来なかった。
く、くそう。私だってやればできるって事をギルドに思い知らせてやる!
ガサッと音がした。身を屈める。
ここらの草原は道以外はそれなりに丈のある草が生えている。
今の私の身長ならば屈めば全身隠れるくらいだ。
ナイフを握る手に力が入る。
いざ参らんと思った先に居たのは兎だった。
「モキュ?」
赤い瞳と目があってしまう。私は黙ってナイフを仕舞う。
スクッと立ち上がり、また草むらに倒れ込む。
ああ、私ってダメだ。ダメダメだ。
だって今まで動物なんか殺した事無いもん。……虫は結構殺してきたけどさ。
動物どころかモンスターも殺せないなんて……冒険者失格だな、私。
……ん? 冒険者? いや、違う。いや、違わないけど、私は魔術師になりにここへ来たんだ。忘れてた。
だったら魔法、使ってみますか!




