#1 冴えないJDがカミサマに殺される話。
____もう、何もかもが嫌だ。
そう思って、駅のプラットホームに立つ。
もういっそ飛び降りてしまいたい。
「…………間もなく、三番線を列車が通過します……」
電車に轢かれるのは確実性が高いらしいが、駄目だ。尋常じゃない程の迷惑が生まれる。
今日も一日、我慢して高校生活を過ごすんだ。
ああ、つまんないの。
そう思った時、私の前に居た、白いコートを着た少年が線路に飛び降りた。
「えっ?」
近くの女の人が声を漏らす。
次の瞬間、ドシャ、と鈍い音。
少年の姿はすぐ電車に置き換わった。
この駅を通過するはずだった電車は急ブレーキを掛け始める。
金属の擦れ合う音。甲高いスキール音が響く。
電車の中の人は例外なくバランスを崩していた。
「……人身事故が発生しました」
駅のスピーカーからそんな声が聞こえる。
どうやら駅員は動揺していないらしい。
周りの人間は誰も彼も慌て不為いていた。
やれ予定が狂っただの、やれ人死にが出ただの、大騒ぎだ。携帯で写真を取り出す者も居る。
……私は? 私はどうなんだ?
あの少年が、私だったとしたら____
【Take 】2016 6/2 23:33
……あれ? 私、寝てた?
眠い目を擦りながら、上体を起こす。
付けっ放しだった電気の明かりを頼りに、目覚まし時計を何とか読み取ろうとするが、視界がボヤついてしまい叶わない。
枕元のメガネを手探りで探し、装着。
「げ、十一時半……」
大学の課題を終わらせ、そのままネトゲ。反動で二徹してしまって、熟睡、だろうなぁ。
「ああ、そいえば今週の週刊少年バンプ買ってないや……」
スウェットのまま、財布だけもってコンビニに向かう。
雑誌と、ジュースと、朝……夕飯? いや、夜食を買って、コンビニを出る。
偶には夜の公園で食べてみようかな、なんて思ってみる。
ブランコに腰掛け、膝に雑誌を広げた。地面にペットボトルを置き、右手でおにぎりを食べる。……うん。美味しい。
街灯に、静かに照らされる。その光には温かみの欠片もなかった。
暗い公園に、私一人。
リアリティイエロゥのペットボトルのキャップを捻る。プシュッと炭酸の抜ける心地いい音。
ググッと喉に流し込む。レモンの酸味と強炭酸がこれまた心地いい。
一つ、思いにふける。
私ってこれまで何かして来たかなぁ。
私ってこれから何をして行くのかなぁ。
未来への漠然とした不安に満たされる。
いっそこの世を捨てられたらどれ程楽な事か。
「捨てたいの?」
不意に声が聞こえた。
ひぅっ、という変な声が漏れる。
でも、すぐに落ち着きを取り戻す。
雑誌を見ていた目を上げると、そこには私より若い程度の男の子が居た。
白いダッフルコートを着込んでおり、髪も白く染まっている。
表情は柔らかかった。ニッコリと、こちらを警戒させない様な顔。
「……出来るものならね」
何言ってんだろ、私。こんな見ず知らずの人に……
「できるさ。人間というのは理想を実現出来る生き物だからね」
目の前の男の子は臆せず言った。
「面白い事言うね。君は誰?」
面白いじゃないか。ちょっとノッてみよう。
「僕はカミサマさ」
「あ、じゃあ異世界転生って出来るかな?」
「できるよ。君が望むのならば」
じゃあ、お願いしようかな。私は苦笑いしながら言った。
するとカミサマはにこやかに笑って。
「じゃあ、君の魂、預かるよ」
バツッと何かが切れる音がした。