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常世に戻りし、さざめきの。

さてさて、第六十一部になります。


どんどん真実を明かしていってますが、どないでしようかね?


でも、まだ回収はんぶ……、


では、またー♪

「さての、一通り済んだかの」


大扇で御顔を隠されたまま、二ノ郭御殿内で初の発言を為された飯井槻さまはするり立ち、幾歩か前に進み、やがて御身の向きを上座にゆるり正対させて座した。


両脇には巫女装束の侍女、そして目の前には、あの生首入りの化粧箱を並べたままで、である。


「大事、ございませぬか?」

「ふししし♪ そなたが居るのに、あろう筈がないのじゃ♪」


兵庫介は先程の孫四郎の暴挙で、飯井槻さまが髪の毛ほどの怪我なりなされて居られぬことに、兵庫介は安堵したのだが……。


「それにしても、のう兵庫介よ。お主の裾、あやつの(つばき)でベッタリじゃぞ。早よ拭くが良いのじゃ♪」


と、来たものだから、流石の兵庫介もムッとなったが、直後に飯井槻さま御自らから差し出された、綿めんの手拭いを使って穢れを拭うことで機嫌を取り戻した。


「これ、あとで洗って返した方がいいか?」

「いるか左様なモノ!」


兵庫介は息絶え絶えながらも、戦場で役立つと医術の心得もある巻右衛門によって、物は言えども今は生かされる孫四郎を横目に看つつ、手拭いを洗って返そうかと飯井槻さまに問い掛けたところ、真顔でこう切り返されてしまったのだ。


いや、儂も要らないんだが。 …………仕方ない焚き付けにでも使うか。


そんな、実用本意の考えを兵庫介が頭の中で巡らせていると、飯井槻さまがその場で右往左往し、とりとめのない大広間の連中に向かって、こう切り出されたのだ。


「さての、深志の者共と土豪たちよ。お主ら、何か妙だとは思わぬかや?」


そう云われた途端、彼らは無駄な動きと騒ぎを止め、飯井槻さまを注視した。


無論、誰もかれも我ら茅野家主従を襲うなどとは、思い付きもせぬのは、奴等の態度から見ても分かる。


コイツらは足元に、何やら見えない結界でも引いたように距離をとり、我らを無意識に避けておる。


其処には罠なぞもなく、あるのは本能的な危険回避の(ことわり)からの、為せる(わざ)だろう。


まあ、掛かってきたら容赦なく切り刻むだけだがな。


だか、其れにしても、コヤツらもコヤツらだ。


折角の飯井槻さまからの問い掛けに、何かしら応えることも出来ずに、ただ口を開けて次の言葉を待っているだけとは、どんだけ我らに圧倒され過ぎてんだ。


「……まあ、あれじゃ。解らぬようじゃから教えてやろうかの」


呆れ顔の飯井槻さまは、ふみから手渡された(おお)(ぬさ)を、ザッザッと、周囲の邪気を払い清める簡易な神事を成されてから、口を開かれた。


「此れだけ騒いでおって、未だたれも御殿に入らぬは、可笑しかろう?」


これで話が通じねば、もはや放て置く気満々の、実にやる気のない声音で飯井槻さまは申された。


さあ、これが脳味噌に届いた奴腹から慌て出した。届かない奴は呆然とするのみの中で……。


「深志の皆々様、許して下されぇー!!」


ここぞとばかりの底抜けアホウが現れた。


鱶池金三郎のことである。


「添谷が越前を討つなど知らにゃんだ!」だの、「わちゃは深志の皆々様と共にあり!」だの、仕舞いには、意気消沈しまくって自分の席に戻っていた深志一族の一人に取りすがり、肩を掴んで激しく揺さぶり「赦してくだされ、使うてくだされ!」などと、言動が意味不明になったので、仕方なく兵庫介は背後から孫四郎所用であった、長刀の峰を用いて頭を割る勢いで……。


ゴンッ!!


と、やってやった。


スッキリした。



加えて、金三郎に意味も解らず絡まれていた当の本人から。


「……(かたじけ)ない」


なんて御礼を謂われ。


「妖怪に絡まれたんだ。気にするな」


などと、応えてしまっていた。




取り敢えず、なんか腹立たしいので、死んだ蛙みたいにのびた汚爺の脇腹を二、三回蹴っといた。





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