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策謀(3)

今回は話は少し短いです。ですが……(略)……です♪


では皆さま第四十九部をお楽しみください。


因みに明日からサブタイトルが変わりますよ♪


では、また~。


 事態の深刻さに気付かされた兵庫介は、一人の年長けた近習を呼び、ひょろひょんの傍に寄らせたのだが、当の近習はといえば、これから我らが行うであろう、子供じみた悪戯(いたずら)に参加できないことを酷く惜しんでおりひどく不満気であった。


 だが、ひょろひょんが言い含めた内容を理解した途端、パンッ!と、両手で顔を(はた)いて気合を入れたかと思うと、力いっぱい手綱を引き締めて。


「御免‼」


 とだけ言い残し(きびす)を返すと、猛烈な勢いで馬を走らせ去っていった。


 とある場所に向かった近習を見送った我らは、幾度を早く来いと叫ぶ彦十郎に従い舟付場の桟橋の前で総員下馬した。





「アレだけ早く来いと叫んでおったのに、お前らは何してんだ!」


 怒声を上げて、待ちぼうけを喰らった彦十郎は怒り心頭である。


「お待たせして申し訳ござらん」


 これに対し、兵庫介は深々と頭を下げて()びを入れる。


一端(いっぱし)の武将にそこまでされては何も言えん。で、(なに)(ゆえ)に供侍を一人走らせたんだ?」


 流石に疑念に思ったか。だがそれも既に、ひょろひょんによって考慮済みだ。


「なに、ココの支払いを考えるとな、我らの様な山猿にはちと荷が重うてな、早めに銭の用意をせねばならん。それに…」


 クスッと、彦十郎の供が僅かに笑った。


貧乏暇なしのド田舎土豪で悪かったな。


「それになんだ?」


 制するように、彦十郎は手を供の胸にかざした。


「我ら飯井槻さまの軍勢は皆がみな、あの新町屋城に居るのだ。こうも混雑していては、弾正様からの御達しがあっても生半(なまなか)には届けられず。はたまた渡るには、それ相応の銭もいるときた」


 真剣な様子を作り、兵庫介は淡々と語尾を切りながら正確に彦十郎に説明する。


「ほうそれでか。では話はここまでだ。早く乗れい!」


 もう既に、後姿を確認するのにも遠すぎる距離まで駆けて行った近習を眺めた彦十郎は、サッサと大舟に馬共々乗り込むように我らに指図した。






「世話になった」

「ちょっと待て、忘れ物だ」


 舟の(へり)に立ち、彦十郎にまたも深々と辞儀をし桟橋に飛び移ろうとした兵庫介は、彦十郎に不意に呼び止められ一枚の紙きれを押し付けられた。


「なんだこれは?」

「貸し舟賃の証文さ」

「手回しがいいな」

「当り前だ。踏み倒されてはかなわんからな」


 兵庫介は妙な清々しさを感じながら、云われるままに二枚あった証文に、常に懐に携帯している小筆を竹筒から取り出して穂先につばを付け湿らせて名を書き、次いで脇差の小口を切り親指を軽く押し当て血を出すと、書いた名の下に血判した。


「受け取られい」

頂戴(ちょうだい)(つかまつ)る」


 兵庫介はから手渡される一枚の証文を、芝居じみた言い回しと身のこなしで(うやうや)しく彦十郎は受け取り、袖の下にしまう。


「貸し、忘れるなよ」

「忘れぬ。ではな」


 そう云って二人は桟橋の上で別れた。






「ふう。流石に一日に二回も潜り抜けるのは、ちと骨が折れまくるな。違う道を歩むと致そう」


 國分川を渡った兵庫介一行は、未だ人で溢れ返っている新町屋の町の中を通り抜けるのを避け、今度は当初から町家を囲う大堀の土塁上の道を左に左に旋回して、だいぶん遠回りではあるが、それでも町家を潜り抜けるよりかは(いく)ばくかの時間を短縮させて、新町屋城の登城口に出れた。


「今朝方もこうすれば楽だったな、では皆行くぞ」


 こうして兵庫介一行は、(ただ)城に辿り着くだけでも難儀な道中の最難関に、再び足を踏み入れたのであった。



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