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Specises8

TFOは私の処女作です。今暫くは誤字・脱字を含めて様々な要改稿箇所が散見されると思います。直近では三点リーダーの使い方の修正があるなど、日々一話ごとに学んでいます。そこで、改稿表記による読者様の再度閲覧のお手数を減らす為に、抜本的な改稿がある話には前書きに改稿、と表記することにします。それ以外は誤字・脱字等の修正となります。

また、更新時間を00:00に変更します。よって、更新曜日は水・金・日・(月)となります。

本日のみ、この前書きの為に一日早く投稿します。

尚、これらは2017.5.30以降に適用します。


今後も暖かい目で見て頂けると嬉しいです。

 リンドの全身の紅い紋様は脈打ち、足元には赤い魔法陣が展開する。【変身】中でもあるに関わらずボアの群れに突撃していく。

 魔法陣の四方から火柱が立ちあがり、螺旋状に渦巻きリンドを包み込む。そして、それは一気に爆ぜた。

 熱風が吹き荒れ、周囲の木々は燃えさかり世界が赤く染まっていく。


「フシュゥウウウウウ……」


 私はなびく髪を抑えながら、それを見る。

 熱風の中心には、四メートルはあろうかという巨人が佇んでいた。

 筋肉は盛り上がり、頭には炎の髪と後方に向かって捻れた二本の角。全身には這うように炎を纏い、透明感のある黒色の肌の中で紅い瞳が輝く。

 サラマンダーを凌ぐ火属性種族の上位種、イフリートの顕現だ。


(凄い……今の爆発でボア三体を消滅させた……)


 見ると、ヘッドボアのHPは一本目が三割ほど減り、アイコンの色も黄色に変わっている。


「今の内に離脱するぞ!」


 私は走りながら後ろをちらっと振り向く。

 イフリートが炎で錬成した両手剣をヘッドボアに叩きつける。すかさず、ヘッドボアは反撃の突進を繰り出す。

 腹で受けた両手剣は砕け散りイフリートの巨体に二本の牙が突き刺さる。


「ウォオオオオオオオオオオオ!」

 

 イフリートは炎を纏った拳で牙を何度も殴りつける。

 ボキッ! 一本の牙が折れるも、ヘッドボアは残る一本でイフリートの胴を抉り続ける。

 それならばと、イフリートはその牙を掴んで離さないようにする。牙を掴んだイフリートの足元に魔法陣が展開し、両者を包み込むように火柱が立ちあがる。

 ヘッドボアがたまらず牙を抜こうとするも、イフリートはあらん限りの力で牙を掴んで離さない。

 両者はダメージエフェクトの紅いエフェクトを撒き散らしながら、地面が抉れるほどの力比べを始める。


(援護なんてできない……)


 HPバーが一本消滅し、身を焼かれているヘッドボアが大きな唸り声を上げる。すると、周りの森から通常のボアが五体現れ、イフリートに突進していく。


「くっ! ボアだけでもこっちに引き付けるぞ!」


 私達は離脱を中止する。

 ロウ兄が弓を構えて、ボアを次々と射抜いていく。

 ハル姉はイフリートに【杖Lv.1:スモールヒール】を施す。


(私だって!)


 私は【短剣Lv.1 :スロウナイフ】を発動させ、短剣を投げつける。短剣が浅く刺さったボアは進路を変更し、私に向かって突進してくる。

 ボアの突進を【短剣Lv.1:クイックターン】で入れ違いになるように躱しつつ、短剣を掴み取り、撫でるように滑らせる。僅かな紅いエフェクトが舞い、HPを一割減らす。

 ボアの突進が止まり、距離が開けた所で私は【短剣Lv.1:ラピッドスタンプ】を繰り出し、ボアに向かって高く跳躍する。

 私は勢いそのままにボアの首元にダガーを突き刺す。確かな量の紅いエフェクトが舞う。


「通った! ……抜けない!?」


 ボアのHPが目に見えて大きく減るが、代わりに短剣が抜けなくなる。

 抜こうと必死になっていると、強い力で払われて、短剣を手放してしまう。


「下がれ! オトハ!」


尻もちをついている私にロウ兄がそう叫ぶも、間に合わない。


「あっ……!?」


 ドッという鈍い音と共にボアの二本の牙が、私の体を穿つ。

 体全体に内側から強い力が加わり、浮遊感と共に背中まで貫通した二本の牙が体から抜けていく不快感を感じる。


(あれ?…… 私……投げられたの?…… 地面が……近付いてくる……)


 落下していく私は、何もできないままボアの続くタックルをもろに受ける。意識がふれるほどの衝撃と共に真後ろに吹っ飛ぶ。HPが急激に減っていき、やがて勢いも殺せないまま、受け身も取れずに大木に激突する。

 NAMEの横には状態異常の流血とスタンを示す表記が加わる。流血による継続ダメージの紅いエフェクトが舞い散る。


「かっ……はっ……」


 胸と腹には不快感があり、視界が霞み、意識も朦朧とする。


「オトハ!? ハル! ヒールを!」

「だめ! 間に合わないわ!」


 残り僅かだったHPは完全に消滅した。

 視界の全システム表記が消滅し、私のアバターが空気に溶けるように光の粒子となり消えていく。


「さっきの……りょう……」

「かな……迎えに……」


 二人が口々に何かを叫んでいるが、よく聞こえない。

 燃えさかる紅蓮の世界で、私は目を閉じる。

 意識が薄れていき、やがて暗転する。

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